これから古着屋は衰退すると言った本当の理由(ほぼ持論)
こんにちは、ストレージの中畑です。
さて、今日のお話も物議を醸しそうです。
今日は最近の動画へのDMが非常に多かった、「何の根拠があってあんな話をしているんだ?」などといった、この記事は僕の各動画に対して怒っている方々にこそ読んで頂きたい記事です。笑
YouTubeでは流石に長くて話せそうになく、その上コメントやDMも前回の動画同様に荒れそう且つ対応も面倒くさそうなので、こちらに書かせて頂きます。
この記事は無料にしますが、自分で言うのも何ですが、これから書く内容は人によっては有料級の記事ではないかと思っています。
第二次古着ブームの終焉はまだまだ来ないが、古着屋の衰退はすぐそこにまで来ている
第一次古着ブームが終わったのは、90年代終盤〜00年代初頭にかけて、ファストファッションなど、今では当たり前になった当時は新たなジャンルといったファッションが確立されてからです。
この動画でも話しているように、あの頃と今の現状はやはり似ています。
が、実は似て非なるもので、決定的に違うことといえば、それこそこの現代においてファッションに「無いジャンル」と「無い商売」というものがすでにほぼ存在しないことに根底があります。
この第二次古着ブームの理由は単純にファッションのサイクルでもありますが、大義名分はSDGsだったり日本の物価高騰だったりなど、当てはめさえすれば様々な理由が伺えます。
しかし、僕はここまで流行った理由の最大要因として、古着屋が単純にそこらかしこに出現したのが一番大きいと思っています。
意外と「簡単に儲かるから」以外にないと思っているクチです。
しかしながらこの動画でも言っている様に、近年の古着屋は最早そこまで儲からないものになっています。
詳しくは動画を見て頂きたいのですが、いわゆる競合に大手…というより資金力のある企業が参入していることから始まり、それに伴う仕入競争の激化など。
今の時点では "まだなんとか保っている" と言った状況の古着屋も少なくないと思われますが、特にこの仕入問題は日を追うごとに解決が難しい問題となっています。
何度も言っているように、古着は限りある資源だからです。
出店がどんどんと拡がる裏の理由
企業が少しずつ困窮へと向かっていく中で、わかりやすく特徴的な例があります。
それは "出店" です。
一見「え?」と思いがちだとは思いますが、この出店、特にチェーン展開や店舗展開などが実は最もわかりやすい危険信号だったりします。
特に、このご時世で "古着屋を店舗展開する" なんてことは、僕からするとよほど儲かりまくっていて仕入もとんでもなく自信がある、なんてくらいじゃないと、少なくとも僕なら絶対に今から出店はしません。(いや、お前、無人2号店…と思った方、後述しますので待っていてください。笑)
もう一つの可能性としては、店舗展開をしないとまずい状況になっている時です。
(因みに僕はもう違いますよ?笑)
また、これは僕の持論なので、一概にそうだと決めつけているわけでは決してなく、最初に言っておきますが「こういったお店もあるよ」程度に留めておいてください。
在庫の落とし穴
我々古着屋、強いてはアパレル企業の最も難しい経営テクニックとは何だと思いますか?
それは "在庫" です。
我々のジャンルでは在庫の物量が多い…、言い方を変えると在庫金額(在高)が多い企業がたちまち潰れていくのですが、それはなぜかわかるでしょうか?
「黒字倒産」とも呼ばれる、時には大手企業にさえ多い、この在庫問題。
ちょっと難しい話をするのですが、ある数式を用いたお話をします。
例えば…
ある月の売上を500万だと仮定します。
その中身が…
となりました。
これだといくらの損益が出ると思いますか?
実際に動かす金の勘定だけでいくと、売上500万-仕入800万で、利益は-300万、つまり大ピンチという計算です。
しかし、帳簿上では…
売上500万-原価500万。
利益は0でトントンとなります。
これの計算の意味がわかりますか?
在庫商売の失敗に多い、この原価の計算とは。
アパレルや雑貨などは食品と違い "腐るもの" では無いので、在庫は常に持ち越すことが可能です。
ここで原価計算の方法を。
つまりこの計算からいくと、ある月の
期首在庫 300万
+
仕入 800万
-
期末在庫 600万
となります。
3,000,000 + 8,000,000 - 6,000,000 = 5,000,000
つまり、500万が原価になるわけです。
経営をされていない方はまだ理解が追いつかないと思われますので、もう少し言い方を変えます。
ここでの帳簿…つまり決算書や月の試算表での考え方では、この在庫は「いずれ売れるだろう」とされる "財産" と捉えられるということです。
つまり、在庫は言い換えれば「後の利益」となることから、利益として計算されるというわけなんですね。
これがあることから、我々の様な業種は決算書上などでは、実は "非常に利益を作りやすい業種" という一面があります。
"棚卸" を皆さんもバイトか何かで経験されたことがある方もいるのではないかと思います。
この一年に一度の棚卸、或いは月に一度の棚卸。
これを決算や月末に行う理由は、帳簿上の "期末の在庫" を算出する必要があるからです。
例えば、この在庫高を決算期に膨らませて "利益(在庫高)があるように" 申告することを「粉飾(ふんしょく)決算」と言います。
聞いた事はありませんか?
なぜそんなことをする必要があるのかというと、それは非常に簡単で、決算書を良くすれば、銀行から融資を調達しやすくなるからです。
これは逆も然りで、利益を出しすぎて、極力利益に関わる税金を持っていかれないようにする為、在庫を少なくして "損金" を出そうとすることだってあるくらいです。
では、意味がわかった方、冷静に考えてみて下さい。
この在庫が全て "売れ残りで売れないもの" だとしたら…。
そう、"後の利益" になんてなるわけがないのです。
この業種は困った時にこそ店舗展開に走る
ここで察しの良い方はもうお分かりかと思いますが、なぜ困窮し始めてから店舗展開に走ると思いますか?
それは大きく分けて2つありますので、説明します。
① 在庫と人件費を分散させる
これが実は最も多く簡単な考え方になるのですが、最も危険な判断です。
例えば、既存の店舗の売上や利益が下がってきたとします。
では…とばかりに、その中で優秀なスタッフを店長に昇格させ、店舗展開をしようなどと言った場合です。
一見、理に適っている様に思います。
しかしながら、既存の店舗はそもそも少しずつ着々と「売れなくなってきている」ので、当然ながら在高も膨らみ、これまでと同額の人件費などであった場合に、当然ながら利益も減収していきます。
そこを実は "補うため" なのですが、ここにも "格好良い古着屋" は「店舗展開」といった非常に聞こえのいい大義名分を掲げます。(こんなこと言ってまた叩かれるだろうなー…)
そこで「あわよくば」今のうちに人件費を分散させて店舗を増やし、マイナスよりプラスを作ろう、という考え方です。
これらは総じて「かつて売れていた店」がこの手法を取りがちです。
ここで本来やるべきことは、人件費を削減したり、出費を抑えたりするということなんですが…、これは後述します。
なぜ危険かというと、単純に結局抜けたところに人件費を充てなければならない可能性があるということ。
そして最も危険なのは、そもそも「その新しく作ろうとしているお店は果たして売れるのか」ということです。
② 資金調達のため
もう一つ、「利益が出ているうちにお金を銀行から借りて店舗展開をする」といったことです。
前述したように、仮に在高のおかげで利益が出ているとしても、銀行からの資金調達は "赤字よりはうまくいく" 可能性があります。
前述したようにこの状況にある店舗は、帳簿上は利益がある様に見えたとしても、キャッシュ(現金)が目減りしている可能性があり、となると大抵は「借入」に走る…、一見当たり前の事です。
しかし、銀行員も百戦錬磨なので、この手の手法はあっけなく数字を見るだけで気づくので、危険と判断される可能性ももちろん十分にあります。
例えば前年比より売上が減っていて、在高が上がって利益が出ている…とか。
このように、資金ショートの前に無理矢理店舗を展開し、融資で命を繋ぐという企業も少なくありません。
特にアパレル企業には多い戦法でもあります。
そもそもなぜ僕は、「うまくいっているから店舗展開をする」と思わないのか
はい、問題はここです。
素直に「うまくいってるからだろ」と思ったほうが実に平和です。笑
でも、僕はどうしたって腑に落ちないんですね。
それは、ウチそのものも売上が全盛期から比べると下がっているのは勿論、仕入も比例して全盛期より質そのものが下がって苦しいからです。
また、もっと大成功する事業なのであれば、世の中の古着屋の展開がもっと早いはずです。
どう考えても一時期から見て "鈍化" しているし、それは同業からの僕への質問や意見などからも見て取れます。
仕入に至ってはもっと顕著にそれが出ていて、本当に良いものが日に日になくなっていますし、信じられないほど仕入が高くなっているものもあります。
そして、なんとも個人の経営者が苦しそうなのも理由の一つです。
実は意外にもこの手の商売は個人から儲かり、個人から衰退していきます。
答えは簡単で、少額で投資・回収ができるからです。
そしてもう一つ。
こんなに人気なのに、なぜ最大大手と言われる企業などが手を出さない事業であるのか。
例えばこのユニクロのように、自社の商品をリユース・リサイクルし、このブームに "乗っかる" と言った形を取る大手もありますが、結果として自社イメージやSDGsを高めるための "ブランディング" であったり、あわよくばここで利益を考えていないと僕は捉えています。
これが仮に思いの外当たっているのなら、ユニクロさんクラスなら一気に全国展開するはずです。
では一方、この業界の第一線を走っている企業とは。
いやー、なんと驚異的な数字。笑
リユース界の王様「セカンドストリート」です。
このセカストさんと僕らの圧倒的な違い、そしてセカストさんは勝てるけど、僕らは勝ちづらいと言った根本の仕組みは何かお分かりですか?
僕らの様な "古着屋" と、セカストさんの様な "リユース店" とでは、全くその根本の意味が違ってくるのですが、それこそがまさに "仕入" だということです。
毎日毎日商品の方から「売りに来る」のですから、まず仕入には(内容はともかく)供給の部分において困る、ということはありません。
しかも、あの二束三文の価格で買い取られるんですからね。(悪口ではないです。)
セカストの本当にすごいところ(持論)
この強みが単純にどこにあるのかというと、前述した店舗展開に、例えマイナスになった場合でも意味がある店舗を作ることができることだと僕は思っています。
セカストさんクラスの規模ともなると、時には "買取をするため" だけにでも店舗運営をする必要があると思います。
リユース業界も古着屋同様、ここ数年で大小問わず、ものすごい数の企業が出現していることから、当然ながら競合も激化し、そうなってくるといよいよ我々の現在のフェーズである、差別化や仕入の問題が浮き彫りとなります。
また、我々古着屋と全く違うことといえば、例えば大規模なデータベースを保有する大企業同士の競合において、"相場" が崩れることというのはこのリユース市場にはほぼないので、大体どこへ行っても買取相場は変わりません。
古着屋さん、これを読んでいたらよく聞いてほしい。
今やリユース店の方が相場は正しいですよ。
さて、話を戻し、買取相場は大して変わらないのだから、そこで必要となってくるのがリユース業界としての立ち位置、謂わば "ブランド力" だったり。
また余談ですが、この手の業種のブランディングが特殊で難しいと僕は感じており、逆に僕はここだけが古着屋が勝てるところだと思っています。
これはまさに有料級なのでここには敢えて書きませんが、なぜ「難しいか」だけ。
それは、セカストさんをはじめとした買取を行なっている店舗のGoogleレビューを見てみるとわかるのですが、リサイクル・リユースショップはめちゃくちゃカスタマー評価が低いんです。
要は、売りに行く方々は最早、「どこに売りに行けば高く買ってくれるだろう」という理由しか特に売りに行く事に対してのメリットがないんですね。
それで評価するのも僕はどうかと思っていますが、この手のショップがブランド訴求力を上げるためには、とにかく店舗を出しまくるのが最短で最善のブランディングだと僕は思っています。
となると、最大手であるセカストさんは店舗が多く有利に働く可能性があるということです。
例えば田舎になると、近所に買取店を探すところから始まりますからね。
前述した「例えばマイナスになった場合でも」とはまさに、仕入で良いものが入ってくる可能性があるからです。
また、もう少し戦略的且つ理論的な話をするならば、例えばその日の買取金額が100万買い取ったとして、仮に売上が30万であった場合でも、二束三文(悪口かも知れません。)で買い取ったであろう "極端に低い原価" により、後の最大利益を生む可能性が十分にあるというわけですから、末恐ろしいですよね。
しかも店舗がたくさんあるわけですから。
買取と販売による現金の回転するスピードがどっちが早いのか、これがリユース業のミソでもあるのですが、セカストさんの様な全国規模で店舗がある企業の場合、例えば商品の店間移動も出来るので、極端な話は「売れるところで売れさえすればいい」のです。
さらに資金力だって上記の表を見る限り、心配無さそうですよね。
こんな事、僕らの業界で再現するのは難しいんです。
ところで、セカストをはじめリユース業にとって、最も必要である人材とはどんな人だと思いますか?
僕は二つ予想しているのですが、一つはおそらく「鑑定・査定スキルのある人」です。(知らんけど。)
これは知識はもちろんのことですが、これに個人差が出たとした場合、個々のスピードや効率が上がれば上がるほど、1日の費用対効果が変わるはずなので、この辺が評価の対象にもなっているのではないかと。(知らんけど。)
もう一つは「陳列・ディスプレーからの販促力」です。
おそらくある程度のマニュアルは勿論あると思いますが、どこに何を陳列するのかなどはその店舗ごとに違うのではないかと思っています。(知らんけど。)
というのも、セカストさんも様々な店舗で毛色が違うので、おそらくは店長さんやVMDの仕業では…などと思っています。(知らん!)
そして何を結論言いたいのかというと、これが何とも「非常に効率がいい」と僕は思うんです。
これは決してDisではないのですが、セカストさんにスタッフ個人の販売力などは最早必要ないので、ならばよほどでない限りは、さほど "個人差" が出にくいのではないのかと思いました。(なんかごめんなさい。)
もちろん、暗記力や知識欲がある方は前述のスピードや効率において差が出るし、人をまとめられる能力のある方は出世もしやすい環境ですよね。
異動、多そうですけどね。(益々知らんけど。)
結論、基本的に皆が共有できるマニュアルがあるというのが強いということです。
また、言い方が大変失礼かも知れませんが、そのマニュアルのおかげで誰でも出来るのではないかと思います。
これは全くの褒め言葉なのですが、"大企業においての誰でも出来る" というのは、本当に凄い事なんです。
だって「替えはいくらでもいる」と、その資金力とブランド力で豪語出来るんですから。
おわりに
さて、色々と書きましたが、皆様もここまで読んでくれた方なら既にお察しかと思いますが、結局のところ、古着屋が衰退する理由を僕は結論付けてはいないんです。笑
僕は動画でも「衰退に向かっているが、やり様はある」と言っています。
これは古着だけではなく、どんな業種であってもそうであるように、良いところもあれば悪いところもあります。
たまたま僕のYouTubeがこの手の情報を知りたがっている方が多いので、僕は正直な「まさに持論」を話したまでです。
冷静に考えてみて下さい。
僕も古着屋ですよ?
だからこそ、仮に「もうダメだ」と結論付けてしまっては僕なんかはとっくに撤退します。
結論、まだ戦える。
結論付けていない理由は、僕の事業でそれらを試してみようと思うので、厳密にいうと "不明" だからです。
そして最後に。
2号店を出す理由ですが、それは僕にとっては「無人の店舗展開が」チャンスと捉えているからです。
これは次回の記事でいよいよ「無人のすすめ」というタイトルで記事を書いてみようと思っています。
以上、最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。
頂いたサポートはnoteはもちろん、YouTubeなど今後の活動費に使用させて頂きます。