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試合中のチームの勢いを見える化する指標「マッチモメンタム」

あらゆるスポーツの中でも、比較的試合の得点数が少ないサッカー。特にサッカー初心者の方にとっては、試合を観ていても、「サッカーって得点があまり入らないし、どっちのチームが今優勢なの?」と疑問に思ったりするのではないでしょうか。

そこでご紹介するのが、「マッチモメンタム」という指標です。
この記事タイトル画像にある株価チャートのような見た目のデータは、簡単に言えば、試合中どちらのチームが今優勢で、どちらが劣勢なのかを指標化したものを、一目でわかるようなビジュアルにしたものになります。

「マッチモメンタム」というネーミングが、いまいち何のことなのかピンと来ないのがネックで、この指標の意味することがすぐに理解できるような、しっくり来るネーミングが欲しいところですが、ネーミングのことは一旦置いておき、この記事では「マッチモメンタム」とは何かについて、詳しい内容をご紹介させていただきます。

※以下の記事内容は、Stats Performオウンドメディア「The Analyst」から一部編集の上、転載したものです


サッカーの試合のスコアで統計的に最も多いのは1-0。サッカーはロースコアのスポーツです。試合に勝つのはゴールを上げることであるのは間違いありませんが、ゴールが必ずしも試合の全容を語っているわけではありません。私たちは、すべての1-0の試合が同じでないことを直感的に知っています。しかし、どうすればこのストーリーを伝えることができるのでしょうか。

長年にわたり、メディアは試合の結果にボックススコアという付加的な文脈を加えてきました。ボックススコアには、ポゼッションやシュート数といった従来の指標のリストが含まれ、通常、ゲームサマリーやマッチレポートで見ることができます。この例は、以下のBBCのマッチレポートで見ることができます

ゴール期待値(xG)のような高度な測定基準の導入により、ボックススコア自体もさらに充実しています。しかし、これらの指標のほとんどは、ピッチ上の事象を単独で見ているに過ぎません。私たちは、ゲームをより全体的に見る必要があります。 マッチモメンタムは、すべてのオンボールアクションデータから、試合の展開に応じて各チームがどれだけ危険だったかを見ることができ、試合を観る人に対して、より時系列的なストーリーを伝えることができるようになります。


マッチモメンタムとは何か

マッチモメンタムは、試合の状況の変化を測定し、ある時点でどちらのチームがより脅威的な状況を作り出しているかを測定します。

マッチモメンタムは、ポゼッションバリューと呼ばれるStats Perform社の別のモデルから派生したものです。ポゼッションバリューは、ピッチ上の個々のイベント(プレー)が、次の10秒以内にチームの得点につながる確率を測定します。

例えば、相手のペナルティボックス周辺の危険なエリアにボールを運んだりパスしたりすることは、ハーフウェイライン周辺でのポゼッションよりもはるかに高く評価されます。そして、これらの個々のイベントをチームレベルに集約することで、どのチームがより危険なポゼッションをしていたかを見ることにつながります。

マッチモメンタムは、毎分、各チームが生み出した最も脅威的な2つの状況を比較し、その時点でどちらのチームが得点しやすいかを確認します。


マッチモメンタムが伝える試合のストーリー

マッチ・モメンタムの目的は、ある瞬間にどちらのチームがより得点しやすいかを数値化することです。ゴール期待値(xG)などの他のメトリクスが伝える試合状況のストーリーは、チームがシュートをしたときの状況のみなのに対して、マッチモメンタムは試合全体の状況を伝えます。

マッチモメンタムは、試合中の両チームのすべてのアクションを考慮に入れますので、危険なエリアに入りながらもシュートに結びつかないチームの脅威も測定することができます。

2021/2022シーズンのチャンピオンズリーグで、バルセロナがベンフィカに3-0で敗れたとき、バルセロナは攻撃の脅威を十分に作り出していたにもかかわらず、後半に1度しかシュートを打っていません。このように、最終的な結果はともかく、バルセロナがいかに優勢であったかを視覚化することができるのがマッチモメンタムが伝えることのできるストーリーです。

マッチモメンタムのもう一つの利点は、ゴールを決められた時の状況がよくわかることです。例えば、2021/2022シーズンのプレミアリーグでアーセナルとクリスタル・パレスが2-2で引き分けた試合を見てみましょう。

この試合のストーリーや両チームの優位性の入れ替わりは明らかですが、最も興味深い洞察は、73分にクリスタル・パレスのオドソンヌ・エドゥアールがアーセナルの反撃を仕留めたパレスの2点目です。

この時、アーセナルがゴールを決める可能性がパレスよりはるかに高かったこと、そしてパレスがこの時間帯の試合の流れに反してこのゴールを奪ったことが、モメンタムを見ることでより理解できる例です。

放送局におけるマッチモメンタムの活用例

フランスの放送局 Canal+は、試合のストーリーをよりクリアに伝えるための取り組みとして、チャンピオンズリーグ中継の一部にこのマッチモメンタムを活用しました。

アタランタ(下のピンクの方)が序盤の2度の支配的な時間帯を利用して、2つのゴールを決めたことがよくわかります。試合の残りの時間は、マンチェスター・ユナイテッドが挽回し、それがいかに危険であったかが反映されています。

別の例として、プレミアリーグプロダクションは、この指標を少し違った方法でストーリーを組み立てています。プレミアリーグの中継で、時間帯におけるゴールの脅威の両チームの割合を表示し、最後の10分間でレスター・シティがバーンリーよりもはるかに多くのゴールを決めているということを示しました。

画面左上にレスターvsバーンリーにおける、試合終盤ラスト10分での両チームの勢いの割合をグラフィックで表示

このマッチモメンタムの表示はタイミングとしても完璧でした。なぜなら、その12秒後にレスター・シティのジェイミー・ヴァーディーがこの勢いに乗じてゴールネットを揺らしたからです。

マッチモメンタムでサッカーの試合におけるチームの優位な時間帯、不利な時間帯をより楽しむことができるストーリーを試合を観るファンに提供します。

ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございました。


オリジナル記事へのリンク:
https://theanalyst.com/eu/2021/11/what-is-match-momentum/ 
NOV 18, 2021,  JONNY WHITMORE / AUTHOR


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