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データが示す、イニエスタ来日後のインパクト

こんにちは、Stats Performの早坂です。
先日、弊社のプロクラブ向けの分析ツール『Provision(プロヴィジョン)』を触っていたら、アンドレス・イニエスタ選手(ヴィッセル神戸)が別格のミッドフィールダーだということが再確認できるデータを見つけたので、今回はそれについて書きたいと思います。

※この記事に記載しているデータは、すべて2022年7月29日時点のものです。

2018年シーズン途中の7月にJ1デビューしたイニエスタ選手は、それから約4年間で21得点22アシストを記録し、Jリーグベストイレブンに2度(2019年、2021年)選出されています。チームは2019年の天皇杯と翌年のゼロックス杯で優勝すると、昨季はリーグ戦をチーム史上最高の3位で終え、AFCチャンピオンズリーグ出場を決めるなど、イニエスタ選手加入のインパクトは非常に大きいと言えます。

アシストや得点も素晴らしい記録ですが、それ以上に突出していたのがスルーパス成功数です。J1リーグ2018年シーズンから現在までの合計スルーパス成功数で、イニエスタ選手はダントツの1位なのです。

スルーパス成功数
(J1リーグ2018~2022シーズンの合計)

上記のランキングがProvisionで出力したもので、「ThrghBlCmp」が、スルーパス成功数(Through Ball Completed)です。ご覧のように、2位のチャナティップ選手(川崎フロンターレ)以下は僅差なのに対して、イニエスタ選手はチャナティップ選手の2倍となる、38本のスルーパスを通しています。

イニエスタ選手のJ1での全スルーパスを、Provisionでグラフィック化したもの
(赤が失敗、緑が成功)

少しデータに詳しい方なら、「総数では本質的な能力の比較はできないだろう」と思われるかもしれません。引退や移籍、負傷による離脱などで、この期間の一部でしかJ1でプレーしていない選手もいるからです。例えば、元川崎フロンターレの三笘薫選手(現ブライトン)は、この5シーズンの間で1シーズン半しかプレーしていないため、どれだけスルーパスの技術が高くても、上記のランキングでは下位になってしまいます。

そこで今度は、90分あたりのスルーパス成功数を出力してみます。ここでは、少ないプレー時間で数本のスルーパスを成功させた選手が上位にくることを避けるため、プレー時間の下限を1800分(20試合分相当)に設定します。

90分あたりのスルーパス成功数
(J1リーグ2018~2022シーズン、出場時間が1800分以上の選手に限定)

上記の「ThrghBlCmp P90」が、90分あたりのスルーパス成功数(Through Ball Completed per 90 minutes)です。先述の総数ランキングと同様、2位以下は僅差ですが、イニエスタ選手は他の選手の1.5倍以上の数字で、ダントツ首位に立っています。

特定のデータの合計と平均値の両方で突出する数字を記録するには、コンスタントに試合に出場し続けて、それぞれの試合で高いパフォーマンスを発揮することが求められます。今年の5月で38歳になったイニエスタ選手ですが、絶妙なタイミングでディフェンスラインの間を抜く美しいパスは、今も健在だということをデータが証明しています。

すでにリーグ戦21試合に出場しており、来日後最長の出場時間を記録することになりそうな今季、イニエスタ選手は相変わらずスルーパス成功数でJ1単独トップを走っています(4本)。チームは下位に低迷する苦しいシーズンを送っていますが、後半戦からは得点も入るようになり、直近4試合では負けなしです。

残り12試合で、イニエスタ選手はあと何本の神がかったスルーパスを成功させるのか。また、神戸はそれを活かして得点を重ね、降格争いを脱出できるのか。注目です。


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