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アシスト期待値(xA) 「アシスト数」では測れない、可能性を数値化

サッカー選手は、ゴールを決めたり、勝ち点の獲得に貢献したりすることで大きく評価されます。クリエイティブなミッドフィルダーであれば、チャンスクリエイト(*1)やアシストという指標が貢献度を示します。しかし、これらの指標はチームメートのプレーに依存しており、必ずしも自分のパスの質を反映しているわけではありません。チームメートがシュートを打たなければ、チャンスクリエイトにはなりません。チームメートが得点しなければ、アシストも記録されません。

また、すべてのキーパス(*2)が同じ質の得点チャンスを生み出すわけではないことも明らかです。ペナルティエリアの外でパスを受けた選手がシュートを打つよりも、ゴールエリア内にいるストライカーにパスを出した方が得点につながる可能性は高い。では、このような得点チャンスを作り出す能力を持つ選手をより高く評価するには、どうすれば良いのでしょうか?

Stats Performのアシスト期待値(xA)モデルを使えば、チャンスクリエイト数では表せない、それぞれのパスの価値を反映した深い洞察を得ることができます。

*1:チャンスクリエイト:キーパス+アシスト
*2:キーパス=得点にならなかったシュートの前のパス

プレー用語の定義:https://www.statsperform.com/opta-event-definitions/

アシスト期待値とは?

アシスト期待値(xA)モデルは、あるパスがアシストになる可能性を測定します。 このモデルは、パスの受け手がシュートを打つかどうかに関係なく、危険なエリアにパスを出した選手を評価します。xAは0から1の間で測定され、0はアシストにならないパス、1は受け手が必ず得点することが期待されるパスを表します。

キーパス後のシュートのゴール期待値(xG)から選手のチャンスメイク能力を評価する類似の方法がありますが、これではチャンスメイカーの貢献度を単独で評価することができません。この評価方法では、シュートで終わらなかった場合は評価の対象にならず、受け手のプレーやシュートの質に大きく左右されてしまうため、そのパス自体が持つ本来の価値を表すこともできません。一方、xAはすべてのパスの本来の価値を表すことができます。

(リオネル・メッシへのパスが良い例ですが、)どのパスもアシストになる可能性があるため、Stats Performが持つ詳細イベントデータの、すべてのパスにxAが割り当てられます。選手やチームのxAを合計することで、その選手やチームがどれだけのアシストを生み出す可能性があったかを知ることができます。

xAの算出方法

Stats Performのアシスト期待値モデルは、Optaの過去のデータから得た数十万本のパスを基にしたロジスティック回帰モデルを使用して構築されており、パスがアシストになる可能性に影響を与える多くの変数を組み込んでいます(その中で最も重要なものを以下に示します)。

・パスの種類(例:クロス、クロス以外、ヘディング、スルーパスなど)。
・プレーのパターン(例:オープンプレー、コーナーキック、フリーキック、スローインなど)
・パスを受けた場所
・パスを出した場所
・パスの距離

パスがアシストになる可能性には、プレーのパターンとパスの種類が特に重要であるため、これらの変数間のさまざまな相互作用についてサブモデルが用意されています。

xAの活用方法

プレミアリーグ2019-20シーズンで、最もクリエイティヴだった選手は、優勝したリヴァプールの両サイドバックでした。アシストでは、マンチェスター・シティのケヴィン・デブライネ(20アシスト)のみが、トレント・アレクサンダーアーノルド(13アシスト)とアンドリュー・ロバートソン(12アシスト)を上回りました。では、アシスト期待値を活用して、彼らの記録を評価すると、どのようなことが判明するでしょうか。

オープンプレーにおけるリヴァプールの両サイドバックのプレーを比較すると、両選手ともに41回のチャンスクリエイトを記録したことが分かります。アシストの総数ではアレクサンダーアーノルドが上回っていましたが、オープンプレーでは、ロバートソンが10回で、アレクサンダーアーノルドの6回を上回っています。

プレミアリーグ2019-20シーズン
オープンプレーでの記録

上記のような従来の指標は、選手たちの創造性についての考え方を提示してくれますが、xAを活用すれば、すべてのパスの質を評価することができます。両選手が同じ数のチャンスクリエイトを記録しましたが、アレクサンダーアーノルドの方が、アシストになる可能性の高いパスを多く成功させています。彼が通したパスは、5本以上(7.1 xA)、ロバートソンが通したパスは約5本(4.9 xA)のアシストが期待できるものでした。

パスの質を評価できると同時に、期待値に対する選手のパフォーマンスを読み取ることも可能です。オープンプレーでのxAの数値が高いにも関わらず、アレクサンダーアーノルドが記録したアシストは、ロバートソンの10本よりも少ない6本でした。パフォーマンスにおいて、アレクサンダーアーノルドは期待値を下回り、ロバートソンは期待値を上回ったということが読み取れます。競い合いながら成長している両選手も、この数字に関心があるはずです。

プレミアリーグ2019-20シーズン
ロバートソンのオープンプレーでのパス
(点がパスの始点、赤の線はxAが0.1以上のパスとアシスト)
プレミアリーグ2019-20シーズン
アレクサンダーアーノルドのオープンプレーでのパス
(点がパスの始点、赤の線はxAが0.1以上のパスとアシスト)

上記のxAのグラフィックでは、ロバートソンが記録したアシストは、受け手に要求されることが多いエリアへのパスだったことが分かります。逆に、アレクサンダーアーノルドのファーポストへのパスはxAが高かったにも関わらず、どれも得点にならなかったため、運が悪かったと言えるかもしれません。

クリエイティヴな選手を正しく評価

近年のサッカー界において、先進的なメトリクスは監督や選手たちや主要メディアの解説者によって、広く使われるようになりました。xAも例外に漏れず、直感的で応用の効く指標です。

ノリッジ・シティのスポーツディレクターである、スチュアート・ウェバー氏は、ここ数年でクラブ最高とも言える選手、エミリアーノ・ブエンディアの獲得において、どのようにxAを活用したのかについて話しました。ブエンディアがスペイン2部でプレーしていたとき、彼のアシスト数は突出したものではありませんでしたが、ノリッジのアナリストたちは他の指標と共にxAを活用し、このアルゼンチン人選手が持つクリエイティビティに光を当てました。

この記事の執筆時点(2021年3月24日)で、ヨーロッパ5大リーグ最多のチャンスクリエイト数を記録しているジャック・グリーリッシュ(当時、アストン・ヴィラ)も、この数値について語っています。この動画でグリーリッシュは、xAの合計値を使って同じポジションの選手(ここでは、デブライネ)と自身を比較していると明かしました。

最近では当たり前となったゴール期待値(xG)と同じように、アシスト期待値は、従来の指標では効果的に表せなかった、クリエイティヴな選手たちの隠れた貢献度を評価します。この指標により、シュートや得点に繋がったパスだけではなく、すべてのパスの創造性を評価するという、次のステップに移行したということです。グリーリッシュが認めているということは、我々のメトリクスは正しいと言って問題ないでしょう。


この記事は、Opta Analystの記事の翻訳です。
元記事はこちら:What Are Expected Assists (xA)?

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