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CPO・VPoPのキャリア〜プロダクトで事業成長をリードする〜ファストドクター株式会社 執行役員VPoP西岡悠平氏

こんにちは、Startup Tech Live事務局です。VPoPのキャリアシリーズでは様々な企業のVPoPにインタビューを行います。
どのようなバックグラウンドがあり現在VPoPとして活躍しているのかVPoPとして何に向き合っているのか、過去のキャリアから現在の仕事まで深くインタビューをします。
今回は日本最大級のプライマリ・ケア医療プラットフォーム「ファストドクター」を運営するファストドクター株式会社の執行役員/VP of Product(VPoP)の西岡悠平氏にStartup Tech Live(以下、STL)がインタビューを行いました。ぜひご覧ください。


現在に至るまでのキャリアについて

西岡)コンピューターには中学生のときから触っていて、大学も情報系に進みました。大学時代はアルバイトでプロダクト開発を請け負ったりとプログラミングはずっとやっていましたね。
新卒では「かっこいい仕事がしたい!」と思い外資系のシスコシステムズにシステムエンジニアとして入社しました。当時はスーツを着て仕事をしていました。
同時期に、未踏スーパークリエータの認定を受けました。それを事業化しないかと学生時代の先輩に声をかけていただいて別の会社に転職しました。

その後楽天技術研究所に声をかけてもらい、技術の裏側で仕事をするようになりました。自然言語処理や画像処理、機械学習などの先端技術の研究開発をリードしながら、楽天市場といった本番向けにサービス導入をしていました。本番環境を見ることで、実際のお客様の反応についても興味を持ったこと、またさらにスピード感の早い環境で挑戦したいと思い始めました。

ちょうどそのタイミングで元々知り合いであったSmartNewsの創業者である浜本氏とランチをする機会があり「SmartNews社へ来ないか。」と誘ってもらいました。
当時すでに会員数は100万人を超えていたにもかかわらず、10人弱の組織でこの規模の事業(サービス)を作っているなんて面白い!と思い、入社の意思決定はほぼ即決でした。

入社するまでに時間は少しかかりましたが入社してすぐのトライは、SmartNewsの裏側のシステムを刷新したことです。裏側のシステムをほぼ一人ですべて入れ替えをしました。その裏側のシステムの上にクーポン機能なども導入に至りサービスとしてうまく成長しました。

入社当時はプログラムを書いていましたが、組織や事業をスケールさせるための役割を担いたいと思いプロダクトマネージャーと名乗るようになりました。(この頃ちょうどプロダクトマネージャーと言う職種名がだんだんと増え始めたころです)プロダクトマネージャーではあるものの、エンジニアメンバーを束ねる役割もしていました。

その後、SmartNewsのUSへ行き、引き続きプロダクトマネージャーとしてUSの機能はほぼすべて監修・リードしていました。ポリティクスの機能やローカルの機能が代表的です。
Growth Hack も担当していて丁度コロナが流行り始めたあたりにすごい勢いで成長しました。他社サービスと比較しても大きなリードを取れたのかなと思っています。

次のステップを考えていたところファストドクターの代表である水野に声をかけてもらい2023年3月にVPoPとしてジョインしました。実は、水野とは楽天時代からの知り合いでお互い辞めた後も1年に1-2回くらいは会っていましたね。ファストドクターに決めた理由は圧倒的な水野の優秀さ事業の成長角度ですね。
他も見ていましたが、ここしかないな。と思い決めました。

今の価値観を生み出している原体験とは?

西岡)まず技術的なところでいうと楽天での経験です。楽天で初めてto CのITサービスに関わりました。その他マシンラーニングやデータ周辺の研究に集中した経験が今のプロダクトに対する関わりに繋がっていると思っています。
SmartNewsに転職してからは、技術とクオリティへのこだわりに本当に驚きました。例えば経営者自身がフォントの1mm単位にも、ものすごくこだわるんですよね。そして顧客(ユーザー)のユーザビリティへも深く追求しており、共感することが多かったです。今の会社へ入社した動機にも繋がりますが、技術がわかる経営者と一緒に働きたいという思いはこういった経験からきた考え方だと思います。

STL)SmartNewsでは組織をまとめることについて、どんなことに苦労し、どんなことを乗り越えていきましたか?

西岡)当時、ステークホルダーマネジメントが上手くなかったと思います。プロダクトマネージャーだったため、エンジニアチーム、ビジネスチーム、経営チームとも話をする立場でした。
一方で、プロダクトへの理想が強すぎて、一人で突き進んでいたことが多かったと思います。その後SmartNewsUSにいき、1人のSVP Productに出会いステークホルダーマネジメントを学びました
今でも師匠だと思っていますね。
関係者の発言をドキュメントにまとめファクトと意見を整理し、マイクロファシリテートでディスカッションをリードする徹底ぶり。

ある時、「エンジニアが自分の言うことを聞いてくれない」と相談すると、「何回伝えたの?5回言わないとダメよ」とアドバイスを受けました。
全員の意見を整理し、全員をつなぎ合わせて正しい組織・事業をリードすること。
当たり前かもしれませんが、組織を円滑に回していくステークホルダーマネジメントのやり方を学ぶことができました。

日本、アメリカのステークホルダーマネジメントの違いについて

西岡)そもそも、今でこそ日本でもプロダクトマネジメントという職種が拡がっていますが、5年前を思い返すと日本ではまだそこまでプロダクトマネジメントという職種が拡がっていなかったと思います。
エンジニアとビジネスをなんとなく繋ぐプロデューサー的存在であって本来のプロダクトマネージャーの役割ではなかったと思います。

一方でUSでは2000年代からGoogleを筆頭にエンジニアとビジネスを繋ぐ専門職を置くべきだという考えの元に、プロダクトマネージャーのポジショニングが確立されてきたと記憶しています。
それが日本に2016-2017年頃入ってきてだんだんと日本でもプロダクトマネージャーという職種が拡がってきたように思います。

USでは先程話をしたSVP Productをはじめとした、シリコンバレーで活躍してきたプロダクトマネージャーと一緒に仕事をすることができたので本場のプロダクトマネージャーの経験を積めたと思っています。

STL)ノウハウやプレイブックがアメリカで確立されてきており、今の日本は徐々に浸透してきた印象ですか?

西岡)先日理事に就任した日本CPO協会のメンバーと話すと、メルカリさん、ラクスルさんなどはプロダクトマネージャーが確立しうまく組織が動いていると感じました。
一方で、日本全体でいうとどうでしょう。正直わからないところではありますが、少なくとも我々ファストドクターの組織内では、当初はまだ理解されておらず、ワークしきれていなかったですね。
今後は今以上に本来の意味で言うプロダクトマネージャーという職種が増えてくると想定しています。

STL)USが先を進んでいるとしたときに、CPOやVPoPはどんな人が適していると思いますか?

西岡)USで出会ったCxOやVPのポジションに進む方は圧倒的にコミュニケーション能力が高いです。テクノロジーが分かって、コミュニケーションもできる。エンジニア、マーケティング、経営者といった様々なポジションの人が使う言葉を使い分けながら、組織や階層を横断でコミュニケーションできるような人材です。
エンジニアであってもビジネスの言葉でビジネスのTopとコミュニケーションが普通に取れるのでコミュニケーション能力の差を非常に感じますね。

横だけではなく上下のコミュニケーションも上手です。部下に対するコミュニケーションも大切にしています。聞き上手で、話したあとが楽しいんですよね。

STL)自分の専門性の領域を持ちつつ、他の領域のことを理解できること、加えてリーダーとしてのマネジメント力、チームビルディング力、リーダーシップがないとCxO、VPは努まら務まらないということですね。

西岡)そうですね。あとものすごく努力していると思います。
例えばSmartNewsのSVP Productの話でいうと、初めて彼女のプレゼンを聞いたときものすごく上手で、緊張なんてしないタイプなんだろうと思っていました。
実際話を聞くと、コーチングの講座を受けていたり、プレゼンの前には時間をかけて深呼吸をしたり、一人の時間を確保して集中度合いを高めて臨んでいると聞きました。1回のプレゼンに対しても本当にたくさんの努力をしていると知りました。

経営層とのコミュニケーションについて

西岡)執行役員の会議は密にやっています。特に水野(ファストドクター代表取締役)、中川(ファストドクターCFO)とは執行役員会議以外でも定期的に1on1を行っていますし、宮田(ファストドクターCTO)とは一心同体のように動いていますね。
ファストドクターテクノロジーズにおいては、宮田と私がダブル役員になるので日々密なコミュニケーションを図っています。

STL)プロダクト側のリーダーとしてビジネス側と関わっていく難しさを感じますか?

西岡)まずSmartNewsとファストドクターでは大きな違いがあると思っています。SmartNewsの事業は、プロダクトが価値(事業)の全てでした。もちろんビジネスパートナーは存在しますがプロダクトの成長が事業成長に直結するビジネスモデルです。
一方でファストドクターのメイン事業は夜間休日の救急往診事業であり、実際の価値は提携医療機関のお医者様と患者様のやり取りの中で感じてもらうことが多いです。我々のプロダクトはタッチポイントであり、プロダクトやオペレーションでカバーできない要素も多いです。プロダクトをどこまでやりきり、棲み分けしてメトリックをかけていくべきかはまだ試行錯誤しながら考えています。

STL)オペレーションがメインでプロダクトがタッチポイントになるビジネスモデルはあると思いますが、心掛けている経営やビジネスサイドとのコミュニケーションはありますか?

西岡)きちんとアラインするのは意識しています。彼らがやりたい戦略をうまく実行できるように心がけています。一方でテックドリブンで物事を変えたい、ゲームチェンジをしたいとも思っています。オペレーションがメインであってもプロダクト側から顧客価値を上げていき、会社の方針にもインパクトをだせるような動きはしていきたいと思っています。

入社してすぐにプロダクトドリブンで新たな挑戦をしようと水野に投げかけたこともありますね。水野からは「それ本当にできるの?」と言われましたが「目指さないとできないよ!」と強く提言しました。
それにより現在は新しい挑戦に向かっている最中です。

プロダクトのチェンジマネジメントについて

STL)現場をリードしてくださるオペレーション方々とプロダクトの方々の橋渡しはどのようにしていますか。

西岡)これまではオペレーション側からの開発要望が単発のリクエストであがってきており、優先順位を付けて上から順番に機能開発をしていました。ただこのやり方だと成長の角度が緩やかになってしまいます。
自分が入ってからは、大きくやり方を変えました。

アプリの目指すゴールを決め、大きなくくりで機能開発を進めていくロードマップに書き換えました。
そうすると、オペレーション側からのちょっとしたリクエストが入らない状況が発生し、社内から指摘が入ることもありましたが、オペレーションチームの方に私から直接ロードマップを丁寧に説明しました。
新しい機能やリクエストをもらっている機能がどのタイミングでリリースするか、今後どんな機能がリリースする予定かを説明することでオペレーション側の賛同をもらうことができました。

STL)これまではオペレーションを起点としたボトムアップの開発マネジメントだったが、プロダクトを起点としたトップダウンの開発マネジメントに変えたということですね。
プロダクトのあり方を変えると、その変える過程においては、プロダクトマネジメントやステークホルダーマネジメント(コミュニケーション)がきっと変わっていきますよね。まさに過去の西岡さんのご経験がファストドクターでも活きていらっしゃいますね。

西岡)そうですね。前職で学んだステークホルダーマネジメントが生きていると思います。今は相手のことを聞き、きちんと説明することを大事にしてます。

STL)プロダクトのトップとしてプロダクト戦略を描き、会社の方向性を定めていくことに挑戦されているということですね。プロダクトを作っていくリーダーシップと、会社を変化させていく変化のリーダーシップを発揮されていると感じました。

今後やり遂げたいことについて


西岡)ファストドクターの代表である菊池と水野が描いた企業ビジョン「1億人のかかりつけ機能を担う」をテクノロジーサイドから実現する人間になっていきたいと思っています。
オペレーションだけではそのビジョンは達成できず、プロダクト・テックの力が重要なので今は、凄く大事な役割、ミッションを担っていると思っています。
SmartNews時代にローカル機能を開発し、便利な機能だなと思っていましたがコロナの影響でなくてはならない機能となりました。自分の住んでいるエリアの状況が分からない状況でこの機能を使うことでユーザーさんに安心を届けられる。実際に利用者も非常に伸びていてUSきてローカル機能開発して、これだけの人に喜んで貰えたという事実にものすごくやりがいを感じましたし、泣けてきましたね。

プロダクトは、生活に大きなインパクトや新しい価値を届けることができるのでファストドクターでも実現していきたいです。


ー編集後記ー
インタビューする中で、西岡さんのプロダクト愛を凄く感じました。
また今が会社が成長に向けて重要なフェーズであり、プロダクトの価値が事業成長に大きな影響を与えるタイミングです。現場に寄り添いながらも、プロダクトドリブンでゲームチェンジしていく、新しいファストドクターの今後がさらに楽しみです。
苦労や失敗も経験し、長くプロダクトマネジメントに向き合ってきた西岡さんのチームであれば絶対に実現出来るビジョンだと強く感じました。

ファストドクター社にご興味のある方はこちらをご覧ください。

本記事で使用している写真はファストドクター株式会社の提供により使用しており、著作権はファストドクター株式会社に帰属します。
撮影場所:WeWork 東京ポートシティ竹芝


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