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CTO・VPoEのキャリア〜世の中に影響のあるサービスを作り出す〜株式会社ヘンリー VPoE 張 沈宇氏

こんにちは、Startup Tech Live事務局です。CTO・VPoEのキャリアシリーズでは様々な企業のVPoEにインタビューを行います。
どのようなバックグラウンドがあり現在VPoEとして活躍しているのか、VPoEとして何に向き合っているのか、過去のキャリアから現在の仕事まで深くインタビューをします。
今回は"医療業界の業務改善" を実現するためにクラウド型電子カルテ・レセコンシステム「Henry」を提供する株式会社ヘンリーのVP of Engineering(VPoE)の張沈宇さんにStartup Tech Live(以下、STL)がインタビューを行いました。ぜひご覧ください。

現在に至るまでのキャリアについて

張さん)九州大学を卒業して、新卒のときにアドバンスト・メディアで自然言語処理関係のR&Dエンジニアとして、主に音声認識の応用例や自然言語処理を担当しました。
実際にWebアプリケーションを作っていきたいという気持ちが強くなり、転職を考えました。

いくつかの選択肢の中から、ビズリーチ社に決めました。技術の力で事業成長にコミットメントできると感じ、決めましたね。
ビズリーチ社では、「キャリアトレック(キャリトレ)」や「yamory」など、いくつかの事業に携わってきました。
ビズリーチ在籍時には、技術職として、企画側とコミュニケーションをとる機会が増えましたが、自分自身が技術の話には強いがそれ以外の面で課題があると感じ、経営全般の知識を体系的に学びたいと思い、MBAプログラムを受講しました。

元々ヘンリーには副業で関わっていましたが、MBAで学んだことをさらに活かせる環境、そして経営陣の事業にかける思いに強く共感し正社員としてジョインすることを決めました。それが2021年11月です。

STL)MBA(経営学修士)の取得は、多くの専門家や社会人にとって、キャリアの大きなステップとされていますが、単なる好奇心や一時的な関心では続けられないほどの厳しさがあると思います。

張さん)そうですね。当時を振り返ると確かに大変でした。本業がある中で時間を捻出してレポートを書くことは当たり前ですし、深夜2時まで書き続けることも少なく有りませんでした。
ただ、自分の性格は諦めることが嫌いな人間で、辛く感じたり、嫌に感じたとしても諦めるのは嫌なんですよね。
そういった性格もあり無事に取得することができました。

挑戦と選択の軌跡

STL)ありがとうございます。張さんの諦めない精神を形成した原体験やエピソード等があれば教えてください。

張さん)大学時代の話ですが、本の翻訳本をやる機会がありました。「プログラムはこうして作られる」という、平山さんの本があるのですが、この本を中国語に翻訳したいという話がありました。
縁があって「翻訳してもらえないか。」と中国の出版社の方から声をかけてもらいました。大学のときに平山さんの講義を受けたこともありご縁を感じやらせていただきました。
一方でこの時期は、ちょうどインターンシップが決まり、オランダにいく時期でした。慣れないインターンシップ生活に加えて、卒業論文、そして翻訳。相当多忙な生活を送っていました。
翻訳をどうしようか考えた時期もありましたが、やっぱり諦めるのは嫌で、睡眠時間や遊ぶ時間を削って翻訳をやってました。今でも鮮明に覚えてます。

諦めない性格は元々だと思いますが、高校時代に父親からもらった言葉は今の自分に大きな影響があると思います。高校時代に文系・理系と分かれるのですが当時の自分は国語と英語が得意で、理系の科目には苦手意識がありました。
文系を選択しようとしたときに、父から「文系でやっていける自信があるのか?」「文系に進みたいのではなく、理系から逃げたいだけではないか」と。
その時に、文系でやっていく自信があるから選択するのではなく理系が嫌だから選択していることに気が付きました。このときに逃げることへの反感を感じました。それ以来、逃げの選択や諦めることは絶対にしないと強く心に刻んでいます
消去法の選択は基本的にはしないですし、仮に選択したとしても自分の選択したことに対して後悔をしないようにはしています。逃げることがすごく嫌な性格なんですよね。

STL)張さんが日々強い気持ちで意思決定し、ブレない気持ちで仕事に向き合う姿勢を拝見していたので、その根底にあるものを感じました。消去法での選択をしないって本当に強い気持ちがないとできないと思うので、尊敬します。日本に来たきっかけは何かあるんですか?

張さん)よく聞かれるんですが、サブカルチャーに興味があるとかではなくて、両親の近くで留学して成功体験をした方がいてその方の影響ですね。
その方は日本の大学に留学、その後日本の大手企業に就職されました。社会的に自立したことはもちろんですが、人間として成長したエピソードを聞き興味を持ちました。
元々私の両親が人間としての成長を重視する傾向で、学術だけでなくて、人間としても成長してほしいという期待をかけてくれていたこともあり日本への留学を決めました。

エンジニアになる道を決めていたわけではないですが、子どもの頃からパソコンに触っていたので、パソコンの技術と他の分野を連携して何かできないかということにすごく興味を持ち始めていました。そのときからインタラクションデザインを調べてみると九州大学の研究室の先生が、研究分野だったこともあり本格的に目指すことにしました。

STL)中国の大学を卒業して、中国で就職するのは、高校のときから想定していなかったですか。

張さん)そうですね。昔から両親からも視野を広げるためにも、中国の外で経験を積んでほしいと言われていましたし、私自身も色々な世界をみたいと考えていました。大学時代は周りからいつ中国に戻るのか聞かれたこともありましたし、中国の企業に就職することも選択肢としてはありましたが、まだまだ世界をみたいという気持ちが大きかったので、日本に残って仕事をする選択をしました。

ヘンリーVPoE 張さん

日本のスタートアップで見つけた成長の機会

STL)張さんから見たときの日本のスタートアップは、どんな可能性や今後の期待があると感じていますか。すでに海外でのインターンシップも経験していたり、語学の壁がない張さんであれば、グローバル企業で働く選択肢もあると思います。その環境下において日本のスタートアップに参画している張さんの思いをお伺いしたいです。

張さん)もちろん将来的に欧米や欧州のスタートアップに行く選択肢もあると思います。一方で、ヘンリーの経営陣の思いにすごく共感したところが、とても大きな点です。
もう1つ思っているのが、日本独自の特徴に可能性を感じている点です。日本は、シリコンバレーのことを参考にしながら、輸入してビジネス展開をしていく事例があると思います。スタートアップだけではなくて、大企業も。
もちろん良い経験や成果をだすために、それぞれの国の学びを取り入れるのは大切だと思います。一方で日本独自の特徴をもっとスケールさせることもできると思っています。

例えば、以前「給料はあなたの価値なのか」という本があり、その本には今のトレンドとは逆境する年功序列のメリットについて紹介されていました。近年日本社会では、年功序列を見直す話があったと思いますが、そのまま受け取るのではなく、従来の日本のやり方には合っていた手法だからこそシステムを変えるのはなくどうアレンジすればいいか考えることも新しい手法を見つける1つの視点になると思いました。

それぞれのシステムにはそれぞれのメリットがあるはずです。それをうまくインテグレーションできるかどうかが、一番重要だなと捉えています。

STL)その考え方は、まさにヘンリーが関わる業界やプロダクトにも通ずるものがありそうですね。

張さん)そうですね。我々の関わる業界やプロダクトは、各国においてそれぞれの医療システムが異なるため求められるものが異なります。だからこそ医療システムにおいてどんな課題に直面していて、どんな解決法を見出すべきなのかっていうところをゼロベースで考えることが重要です。
欧米があの方法でやってるから、我々も同じ方法でやろうがなかなか通用しない。ゼロベースで思考できるところは醍醐味に感じています。

社会貢献とチームワーク

STL)ヘンリーには、副業でジョインし、そこから正社員として参画されたと思いますが、当時を振り返って、ヘンリー以外にも他の会社を見ていましたか。

張さん)特に色々な会社を見たわけではなかったです。ビズリーチに在籍してる間、情報収集として色んな会社を見ましたが、特に転職期間という時期は設けませんでした。ヘンリーがFitすると感じた点は主に2つです。1つ目は事業自体が社会貢献に繋がるというところです。もちろん儲かるビジネスに取り組むというのは、面白いことです。一方で自分自身は社会貢献というワードを大切にしていました。
色々な会社を見ましたが、社会貢献への想いがこれほど強い会社は多くありませんでした。社会課題を解決することに対して、本気で取り組む姿勢に強く共感しましたね。

もう1つはメンバーです。メンバー全員の技術的にも人間的にもスキルがすごく高くて、人柄も良い方ばかりでした。この素晴らしいチームで組織を拡大し、事業を成功させることが面白いなと思い、ヘンリーに入社することを決めました。
おそらく副業に関わってなかったら選択肢になかったかもしれないので、縁を感じています。

STL)仰るとおりチームメンバー皆様の人柄の良さは第三者としても非常に感じます。とても良いチームワークだなと常々思いますね。
なぜ良い組織を組成できたのか。採用のときに人柄を重視しているからなのか、重要視している要因はありますか。

張さん)まずリファラルは重要な手法だと感じています。リファラル採用が中心なので、優秀なメンバーが集まったと思ってます。
もう1つは、ミッションとバリューを早い段階で決めていたことも大きいと思います。私が入る前にミッションは既に決まっていましたし、そのあとにバリューも決まりました。
目指すべき目標が言語化されていたことは、組織のアライメントに貢献していたポイントだと思います。

先日「組織開発室」を設けることを決めました。今の組織フェーズで設けるのは、時期尚早と感じるかもしれません。ですが、我々はやはり組織に関してきちんと力を入れて向き合いたいと考えています。
それが組織として「組織開発室」を創設した経緯です。ヘンリーにとっては大切にしている非常に重要なポイントです。

STL)良いチームワークが作れている理由は手法としての強み、そして会社として組織に投資をしているからこそ、このチームワークの良さが体現できているのだと感じました。

組織開発室の役割とビジョン


張さん)組織開発室には、私と松木さん小山さんが携わっています。今後は、この組織開発室のメンバーとして新しいメンバーも採用したいと考えています。

STL)組織開発室を立ち上げたきっかけを伺いたいです。

張さん)スタートアップでは急成長の中で組織崩壊のリスクがあると感じています。組織の課題に向き合う時間とリソースや、実際に課題が生まれる量と対策のバランスがうまくとれず組織崩壊を招いてしまったのではないかという仮説を持っています。
どんな組織課題があるのか先回りし、仮説を立てて、逆算してどんな対策を打っていくべきなのか吟味し、施策として動き始めることで、組織と事業の成長をシンクアップさせることができると思い組織開発を立ち上げました。

組織開発室のミッションは、ヘンリーのミッションとバリューが組織の各所で活かされ、事業とともに急成長できる組織の実現を目指しています。組織とともに事業が急成長できることが大事だと思います。

プログラミングは、定義した通りに動きますが、人には、はっきりした定義や、動かし方は存在しません。色んなコミュニケーションと、それに対応した施策の差分が出てくるので、きちんと整理して、段取りを踏んで進めていくことが難しいと感じています。完璧にできる人はいないと思っていますし、対策したら絶対に崩壊しないものでもないと思います。
正解のない世界だからこそ、最適解をどんどん探り続けることが大事だと思い、魅力的に感じているところです。

STL)張さんにとって組織というものが温度感の高いテーマになったのはいつ頃ですか。ある意味エンジニアとして強いメンバーがいれば組織として成り立つこともあると思ったのですが、いかがでしょうか。

張さん)世の中を俯瞰してみると、エンジニアリング観点だけで強いメンバーが揃っても組織としてのスケールに直結しないケースがほとんどだと思っています。
実際に過去の職場でも、強いエンジニアチームでしたが組織として崩壊気味になっていた時期もありました。

良いプロダクトのためには良い組織が重要です。
とはいえ組織構築は本当に難しい問題だと思っています。だからこそ様々なノウハウを学び自分達の組織に一番フィットするやり方を見つけ、ヘンリーというプロダクトを作る上で最適解な組織とはどういうあり方なのかを常に考えています。

ヘンリーVPoE (左)松木さん、(右)張さん

VPoEとしての挑戦

STL)良いプロダクトのための良い組織。まさにその通りですね。組織づくりにおいて様々な視点から俯瞰して考え、自社にとって一番良い最適解なのかアレンジした思考ができる。まさにVPoEとして重要な視点をお持ちだと思いました。
元々開発組織を成長させるミッションや、そういうロールを担いたいなと考え今のVPoEというポジションを目指していましたか?
それとも役職やロールは後からついてきたかたちでしょうか。

張さん)後者だと思います。私自身のミッションは、世の中に影響のあるサービスを作り出すことだと考えています。

優れたプロダクトを作る中で、状況に応じて最適解を探り出し、作り手の組織を構築できるかどうかは大事な要素だと感じています。
そしてヘンリーにおいて、自分がそこに最もコミットできるんじゃないかと考えました。ヘンリーのエンジニアはみんなスキルが高く、優秀なプロフェッショナルです。だからこそみんなには実際の開発においてさらなる成長を遂げてもらいたい。
プロダクトとともにチームメンバーがさらに成長できる環境をつくるためにも、自分が組織開発の部分をちゃんとやっていこうと思っていました。
そこに向き合っているうちにVPoEの肩書を付けたほうがやりやすいじゃないかという話になり、VPoEがついた経緯です。

肩書きはあくまでコミュニケーションツールの1つだと思っています。社外からみたときに、私がどういった立場として話をしているかが理解されやすくなります。特に候補者の方と話す際には、肩書があることで相手の方の思考を加速させることや、お互いの期待値を伝えやすくなると思っています。
逆いうと社内ではその必要がないのでVPoEだから何かあるということはありませんね。

STL)松木さんが参画されて、VPoE2名体制にしロールをわけていると思います。(くわしくはこちら)張さんの立場から見て松木さんが持っているVPoEの強さはどんなところでしょうか。

張さん)松木さんは、言語化する能力が高いです。きちんと情報を集めて、その情報を適切に言語化して、関係者に発信する、ファクトがあることで納得度も高いです。
ファクトの情報、ご自身の意見、相手に求めたいこと等のバランスが非常に適切でコミュニケーションスピードも早くなりますね。
ご自身が言語化した内容を適切に発信される点も彼の特徴の1つだと思います。
私自身は、どんな内容をどういったチャンネルでどういうふうに発信すべきか悩んでしまうことがあるので、私にとっても非常に勉強になることが多いです。

ヘンリーの役割分担と展望

STL)ありがとうございます。ヘンリーは、CTOが不在の組織だと思いますが、困ることはありますか。

張さん)CTOに求めるべきものは何かが重要ですよね。組織としては執行役員として植村さんがいて、VPoEとして松木さんと私、そしてPdMのメンバーがいます。
その中で、CTOの役割を持つことで組織を加速化させる効果が得られるのかが、重要だと思っています。それを設けることによって、メリットが得られるんであれば設ければいい。特に設けなくても、問題ないなら設けなくてもよいという選択肢もできると思います。
現状で言えばCTOという明確な役割を作らなくても組織はワークしていると思いますが、今後さらに拡大する上では重要な観点かもしれません。

STL)CTOは事業課題を技術に翻訳する役割を担っているケースが多いかなと思いますが、張さん自身が技術だけではなくプロダクト全体を見てきた経験や、代表の逆瀬川さんがプロダクトと技術への深い理解があるから、事業と開発の橋渡しのような、Biz側とTech側の翻訳が必要ないのかなと思っていたのですが実際はどうでしょうか?

張さん)そうですね。それで言うと橋渡し役は植村さんが担ってくれています。
執行役員開発責任者として事業側と開発側の連携をリードしてくれています。元々エンジニア・PdM・CTO・CIOといった様々なバックグラウンドを持っているからこそ広い視野で組織をリードしてくれています。

これから更に成長していく中で、足りないピースは更に増えていくと思います。今は今後のヘンリーの成長を見据えて、どんな制度作りをしていて、どのような戦略を立てていくかが大事な時期です。
しっかりと経験と実行力がある方にジョインしてもらうことにより、より早いスケールが実現できると思っています。

まずは日本のマーケットに対してしっかりインパクトを出し社会貢献をする、その上で「社会課題を解決し続け、より良いセカイを創る」というミッションは日本に限定する話ではないと思っているので、将来的にはグローバル展開する可能性もあり得るかなと思っています。

STL)最後に張さんの今後について教えてください。起業なども考えていますか。

張さん)私自身のミッションは世の中に影響のあるサービスを作り出すこと。そのため常にこんなサービスがあった方がいいんじゃないかとか、このサービスが直面しそうな課題は何なのかを自分で考えたり他の方と交流したりします。
もちろん起業をしたほうが早いと思えばその選択を選ぶかもしれませんし、社内のリソースを使って一定の権限でできるのであればそのほうがいいと思っています。なので起業は私にとって手段の一つだと考えています。
何よりも自分のミッションを実現するためにどうすればいいかを常に考えていますね。


ー編集後記ー
今回のインタビューを通してヘンリーという強い組織が生まれた理由がわかりました。
MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)が早い段階でできていたところは大きな要因だと思います。
ただそれ以上に張さん自身が個人としてのミッションをすごく大事にされていて、そのミッションに基づいて、ぶれない意思決定ができている。
組織をリードする人間がブレないから、組織としても強いチームワークが実現できているのだと感じました。
私自身、張さんを始めとしたヘンリー社の皆様とお会いさせて頂いていますが、心から社会貢献を一番に考え、ユーザーさん・社会課題に向き合っているメンバーがそろっている会社だと感じています。日本の未来に大きなインパクトを与えるであろうヘンリー社に引き続きご注目ください。
                                以上





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