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サビアンシンボルと二十四節気ー大寒

年間で一番寒い時期を迎えました。この頃に味噌を仕込むと、よく出来上がると言われます。自分で自分を褒めることを手前味噌、といいますが語源は自分の家で作った味噌がどこより美味しいと自慢することが語源だとされています。昔はあちこちに麹屋があり、そこで麹を手に入れることができました。今でも地方都市には麹屋が残っているのではないでしょうか。

禅語に「冬嶺秀孤松(とうれいこしゅうをひいず)」という言葉があります。冬の嶺に独り立つ松の木が際立つという意味で、厳しさの中の凛とした美しさを実感させます。原典は陶淵明の「四時歌」から。四季の味わいを詠ったものですが、5文字に冬景色ならではの厳しい美しさがこめられています。

 四時歌    四時(しいじ)の歌   陶淵明

春水満四澤  春水(しゅんすい)四澤(したく)に満ち 
夏雲多奇峰  夏雲(かうん)奇峰多し
秋月揚明輝  秋月明輝(めいき)を揚(かか)げ
冬嶺秀孤松  冬嶺(とうれい)孤松(こしょう)秀ず。

春の水は雪解けや春雨などで、どこの沢も
水かさを増し躍動の気がみなぎり
夏雲の様相は峰の偉風を思わせる入道雲が険しくそそり立っているようだ
秋の月は中天高く輝き渡って人心を清澄にし
冬の山頂には見事な一本の松の姿が素晴らしい

余分なものを削り取ったかのようなシンプルな描写です。しかし最後の結句の部分は人生を達観した人間の、世界観を感じます。冬だけではなく四季の山紫水明を詠ったものですが、潔さに惹かれてあえて選びました。

西洋占星術では太陽が大寒、1月20日から山羊座から水瓶座へと入ります。
山羊座のキーワードが組織なら、水瓶座はそこから視点が上へ。組織にとらわれない精神的な絆で結ばれた、いわばトランスパーソナルなスタンスへと広がっていきます。サビアンシンボルの研究者ディーン・ルディアは水瓶座前半を、貢献、寄付あるいは助力のシーンとしました。

スタートの1度「カリフォルニアのレンガ造りの古い伝道所」でサインの特徴を強く打ち出します。スペイン人神父たちはアメリカ伝道の中心をここ置き、熱心にカトリックを布教した歴史があります。しかしそれは決して平坦な道ではありません。2度の「突然の雷雨」。国を超えた活動は当然ながら反動、抵抗もあるでしょう。感情の共感により、コミュニティーをさらに広い世界へ求めていく。その姿勢を3度の「海軍からの脱走兵」が象徴しています。広い共同体を求めた結果、以前のそれを拒否するのです。4度「ヒンドゥー教のヒーラー」は以前に発揮していた能力を、広い場所で使おうと拡張していきます。3度の脱走兵が目指すものは癒し力をさらに発揮することになります。そこには信仰の力も含まれます。5度組最終の5度「先祖の委員会」で、個人は先祖のネットワークの上に成立すると気づくのです。これは2度や3度を踏まえた上のもので、布教の伝統を象徴している1度の伝道所の流れを汲みとっています。
サビアンシンボル全般に、6度のシンボルは環境との関りを象徴していますが、水瓶座6度の「仮面の人物が神秘劇の儀式を演じる」は環境の中の個人は一つの役割を演じている、と看破します。環境との関りの中で、実は自分の本質はそこにはない、という気づきの現れです。7度「卵から生まれた子供」は奇妙なシンボルに感じるかもしれません。自分の本質が環境の中にないと見破った次の段階では、一般常識から解放された人間の誕生です。環境と自分の本質との落差を超えるのが8度「美しく着飾った蝋人形」。常識から解放されたからこそ、環境の中で演技に徹する事ができるのです。そして9度「鷹に変貌した旗」は水瓶座なりの哲学のシンボル。風の力ではためいていた旗のエネルギーが活性化して鷹というダイナミックな生き物に変化するのです。イメージがパワーになる、と云えるかもしれません。しかし10度「一時的な人気」は周囲が見出していたある種の理想と、現実の個人とのギャップを意味します。つまり外界に向けて本質が露呈してしまった厳しさがあります。
それを突破して、さらに進む姿勢を示すのが第3グループの始まりである11度の「自分のインスピレーションと向き合う男」。真実の智恵を開発しようとする、実験的な展開が始まります。もはや書物から得たものや一般常識にはとらわれません。12度「上へと順に並ぶ階段の上の人々」は意識の上昇過程を示していますが、そこには自分がどこの位置にいるのかを他者と比べることで、客観的に認識する事も含まれています。そして自分だけのモノサシを得るのが13度「バロメーター」です。外界の状況を分析し全体の動きを把握する力となるのです。14度「トンネルに入る列車」はその力を日常へと浸透させます。個人の智恵やスキルを社会、文化に反映すべく動いていく。水瓶座は社会にトランスパーソナルなスタンスで働きかけるのです。15度「フェンスの上で幸せそうに歌うラブバード」はそのピーク。未来の幸せなビジョンを持ち込んではいますが、社会へ貢献した祝福と同時に一つの囲い(フェンス)の上というシンボルに、ある種の優越性を感じるのは皮肉な見方でしょうか。

厳しい寒さの冬、峰々の中で屹立する松の木1本。その姿は、水瓶座が輝かしい未来のビジョンを目指して自分の精神を磨きあげ、理想を具現化することで社会貢献しようとする姿と重なります。そして大豆と麹の発酵力を使って作り上げる、大寒の味噌仕込みにも繋がるのかもしれません。


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