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映画『ライフ・イズ・クライミング!』

2023年/製作国:日本/上映時間:89分 ドキュメンタリー作品
監督 中原想吉



予告編


予告編(ロングバージョン)


STORY

 出会いは2001年。「右手、1時半、遠め。右、右、右!」、遠くから聞こえる相棒・ナオヤの声を自分の目のように頼り、8の字結びのロープでつながり、命をゆだねて岩を登るクライマー・コバ。世界選手権4連覇を成し遂げたふたりが、次に目指したのは、ユタ州の大地に聳え立つ真っ赤な砂岩フィッシャー・タワーズの尖塔に立つこと。この、とんでもない冒険の結末は? そして、その時コバの目はどんな景色を見るのだろうか?

公式サイトより


レビュー

 画面の前の絶対安全地帯に座り、ほぼ筋肉を使用せずにロッククライミングの映画、ないし動画を、手の平のみに汗を滴らせながら鑑賞するのが好きなため、内容に関する情報を一切得ずに鑑賞。

 勝手に「クライミング好きな人々の楽しそうな姿を撮影してまとめた作品なのかなぁ」と思っていたら、全然違ってビックリしました。
 しかも主役の一人であるコバ(小林幸一郎)さんは、全盲であるにもかかわらずクライミングをなさっているということを知り、「えっ、クライミングって視覚がとても重要なのに全盲でも可能なの?」と、ダブルビックリ。
 ※コバさんは自身がクライミングをするだけでなく、全盲の方のためのクライミング教室のNPOまで立ち上げてらっしゃいます

 兎に角全編を通し、コバさんとサポートのナオヤ(鈴木直也)さんのコンビ(関係)が素敵でしたし、影響を与えてくれたり、支えてくれたりするふたりの周囲の人々も皆、センスオブユーモアがあり、笑顔が多く、良い顔をなさっているのが印象的でした。
 全盲のコバさんと、(長距離運転を一人でこなした上で)コバさんを全力サポートするナオヤさんという存在が居なければ「見ることも知ることも出来なかった」風景&世界(人間関係含む)を「見せて」いただき、感謝しております。
 ※撮影&制作スタッフの方々にも感謝
 
 あと、コバさんとナオヤさんのコンビによる「魅せる(見ている人々を魅了する)」クライミングも本当に素晴らしかったです。
 ※本作最大の山場「フィッシャータワーズ(《ストールン・チムニー》ルート)」での、まさかの落とし物も、本作にとって最高のスパイスとなっており、観ていてめちゃくちゃドキドキしましたし、ラストの盛り上がりの波をワンランク押し上げた最高のサプライズであったと思います(コバさんはとても大変だったと思いますけれども)

 最後に
 DVDの(本編と同等の価値を持つ映像の)「特典映像」には、例のいただきにナオヤさんが登った時のシーンも収録されているのですけれども、面白かったのはコバさんは「自由の女神」のようにスッと背筋を伸ばして美しく立っていたのに対し、ナオヤさんは目が見えるためか若干腰の引けた立ち姿で、画的にはぶっちぎりでコバさんの方がカッコ良く映ってらして、色々思うことがありました。
 本編にてコバさんが「風が吹いてたおかげで(中略)空気が動いてたから高いところにいる感じが凄いしたんだよ」と楽しそうにおっしゃっているのを思い出し、「もしかすると見えないコバさんだけに感じる(見る)ことの出来た、見える人には見えない(人間関係を含めた)絶景があったのかなぁ」と思い、なんだか嬉しい気持ちになりました。
 
 そしてふと、本作冒頭の

 世界で最も素晴らしく、最も美しいものは、目で見たり手で触れたりすることはできません。
 それは心で感じなければならないのです。

というヘレン・ケラーの言葉を思い出し、「そういうことなのね・・・」と一人で納得しました。

 コバさんとナオヤさんのおふたりが今後も健康に、そして末永く、楽しい思い出を創り続けますように。



公式サイト


主題歌『Amazing 』 MONKEY MAJIK



個人的なメモ

 ・エリック・ヴァイエンマイヤー
 孤独を好むクライマーもいる、でも僕には全盲だからこその恵みもあるんだ。お互いを信頼しあっているから命を仲間に託せる。
 仲間とつながる感覚が僕は大好きだ。(中略) 仲間がいるから冒険が出来る。君たちもおなじだろ?

 

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