ドラマ『トゥルー・ディテクティブ セカンド・シーズン』
2015年/製作国:アメリカ/上映時間:約8時間(全8話)
原題 TRUE DETECTIVE
監督 ジャスティン・リン
脚本 ニック・ピゾラット
予告編(日本版)
予告編(海外版?)
オープニング
STORY(第一話)
アメリカ、カリフォルニア州、ヴィンチ市。
市政代行官キャスパーが、鉄道建設計画発表直前に大金と共に姿を消す。
キャスパーと結託し市政上層へと打って出ようと目論む「フランク・セミヨン (ヴィンス・ヴォーン)」は、その件と市政の汚職を暴こうとする新聞の連載特集記事により窮地に立たされる。
過去にフランク・セミヨンに貸しのあるヴィンチ市警察の汚職刑事「レイ・ヴェルコロ (コリン・ファレル)」は離婚した元妻と、長男(妻をレイプしたレイプ犯の子か、実子であるか不明。妻とはレイプ事件が原因となり離婚)の面会時間延長に関し、法廷にて闘争中。そんな折、上司より市政代行官キャスパーの行方を捜査するよう命令が下る。
保安官事務所の刑事「アンティゴネー(通称 アニー)・ベゼリデス(レイチェル・マクアダムス)」は、妹がそこで働いているという情報を聞きつけ、ネット配信用のポルノスタジオを違法配信容疑で捜索。そこで働く妹を見つける。
元傭兵のハイウェイ・パトロールの警官「ポール・ウッドルー(テイラー・キッチュ)」は、速度違反を逃れようとした前科持ちの女性(女優)を無謀運転、無免許運転、仮釈放規則違反等の正当な容疑にて逮捕しようと試みるも、逆に性的関係を迫ったとする事実無根の訴えを起こされた挙句、兵士時代に所属していた隊の起こした暗い過去をマスコミに嗅ぎ付けられ騒ぎを大きくしたくない州警察上層部の判断により、ハイウェイ・パトロールの仕事から外された上に、ほとぼりが冷めるまでの間の休職を余儀なくされる。
レイ・ヴェルコロ (コリン・ファレル)が同僚と捜査を進め、市政代行官キャスパーの自宅を捜索すると、家の中は派手に荒らされていたものの、そこにキャスパーの姿はなかった。
明確な手掛かりはつかめなかったものの、キャスパーが何者かに連れ去られたこと、そして何らかのセックス産業と深い関わりがあり、事件の背後に深い闇が潜んでいることにレイ・ヴェルコロは気づく。
警察の仕事として土地の「差し押さえ通知」を(本来は「銀行」の仕事であるはずだが・・・)、とある農家へと届けることとなったアンティゴネー(通称 アニー)・ベゼリデスは、その家に住む家族の母親から行方不明となった24歳の妹の捜索を偶然依頼されることとなる。
そしてその行方不明の妹が最後に働いていた場所が、疎遠となっている自分の父親が経営する宗教施設であったことを知り、話を聞くために、そこへと向かう。
しかし有益な情報を得ることは出来ず、父との確執は増すばかりであった。
一方その頃、フランク・セミヨンより依頼を受けたレイ・ヴェルコロは、市政の汚職を暴こうとする新聞の連載特集記事を担当する記者を、その自宅にて襲い、記事連載の中止を約束させることに成功する。
休職となったポール・ウッドルーは恋人の家へ向かい時間を共にするが、その雰囲気はどこかおかしい。
ウッドルーはその後、一緒に居て欲しいと願う恋人を振り切るようにその家を後にし、深夜のハイウェイを自暴自棄にバイクで駆け抜ける。
ヘッドライトを消しての事故死寸前の暴走の後、なんとか正気を取り戻したウッドルーがバイクを停車させるとそこには・・・
今、社会の背後に蠢く巨大な闇との死闘が幕を開ける
レビュー
本作(シーズン2)は、シーズン1、シーズン3よりも一般的な評価は低いのですけれども、個人的には一番繰り返し見たくなる大好きなシーズン。
一般的な評価が低い主な理由としては、上記ストーリー解説を読んでいただくとわかる通り、主要人物が多め(4人+α)で脇役も含めた人間関係が(過去の出来事も含め)若干複雑に絡み合う内容となっているため「人によっては初見時に理解が及ばず混乱してしまう」、複数個所「ご都合主義的な場面がある(時間の制約上やむを得ない)」、ラストの展開が「好き嫌いの大きく分かれる展開となっている」というような点が上げられるように思われます。
※ちなみに一番人気のシーズン1はシリーズ3作の中で最もシンプル且つ後味(が、表面的には)最高です
しかしながら個人的に本作は、もっと評価されて然るべきと考えておりますゆえ、以下に、シーズン2の良い点をネタバレ無しにてピックアップしてみたいと思います。
①主人公達のキャラクターがリアル且つ魅力的
4人の主人公はそれぞれに、自分の過失に起因しない過去の悲劇(トラウマ)に囚われて(苛まれて)おり、それに押しつぶされそうになりながらもギリギリのところでなんとか人間性を保って踏みとどまり、日々葛藤しつつも確固たる信念を持ち続けて生きている。
②脇役までを含めた配役が絶妙
どの配役もハマっていて文句なし。
③サントラの素晴らしさ
拠点となるバーにて流れる多数のオリジナル曲の数々を含め、どれも素晴らしく、本作の雰囲気をググっと盛り上げます。
特にオープニングの『Nevermind』の素晴らしさにはウットリ。
④硬派なロケ地選び、美術、衣装(小物含む)
的確で説得力があり、且つ趣味も良い。
⑤素晴らしい撮影
アクションシーンは少ないものの、最大のアクションシーンはドラマ史上指折りのリアルさと迫力があり、これまでのアクション映画を含めても、トップクラスの出来ではないかと思います
また数々の空撮シーンは、知的で美しい。
⑥アメリカを蝕む複数の犯罪(の種類)と組織的な繋がりによる搾取の構造が学びになる
組織的な犯罪と権力者達による搾取の構造を、シンプル且つリアルに描いた脚本の出来が素晴らしく、たった8話にて良くこれだけシンプルにまとめ上げたなぁと驚きました。
「金の流れ」を辿る面白さも抜群でした。
⑦人間の描写がリアル
主人公達は皆、勧善懲悪(白vs黒)ではなく、善(白)と悪(黒)とその中間(グレー)を常に行き来するため、人間としてとてもリアルです。
更には彼らのちょっとした発言や仕草、他人との距離感、身の回りの物等による丁寧な肉付け効果により、鑑賞する程に主人公達への愛着は増します。
⑧フランクという存在の価値
「タイトルが『トゥルー・ディテクティブ』なのに主役の一人ギャングじゃん。全然『トゥルー・ディテクティブ』じゃないじゃん」というような見解を目や耳にしたことがあるのですけれども、個人的にはフランクは「トゥルー・ディテクティブ」な気質を備えていると思います。
端的に記すなら「本シリーズの『トゥルー・ディテクティブ』というタイトルは実際に刑事職に就いている人のみしか該当しないというわけではない」と、私は思うわけです。
要するに重要なのは公的な刑事職に就いているかどうかではなく、最終的に、そしてトータルで観たときに「人としてどういった振る舞いをしたかにより『トゥルー・ディテクティブ』であるかないかは決まる」のではないかということです。
フランクは出自(過去)が仇となり正道から外れた人生を歩んでしまっており、黒ゾーンにもズッポリと片足を突っ込んでしまっているグレーゾーンの人ですけれども(しかし、白ゾーンにもしっかりと足を踏み入れており根っからの悪人ではないという役どころがとても魅力的なキャラクターで)、その歩みの過程における行いの中には『トゥルー・ディテクティブ』に相応しい行為が複数あったように思います。
※例えば医師免許を所持していても医者とは言えないような方々も沢山いらっしゃいますし、逆もまた然りですよね、ということ
⑨脚本の熱量が凄い
ニック・ピゾラットの「世の不正に対する熱い怒り」をヒリヒリと感じる情熱的な脚本が素晴らしく、グイグイと物語の中に引き込まれてゆきます。
あと鑑賞者に媚びていないんですよね。本当に書きたいものを書いているんだなぁというのが観ていてジンジンと伝わってくるのが、清々しくて良い。
※まぁ若干の「白人至上主義」は感じますけれども・・・(ただそこは「シーズン3」にてかなり改善しております)
⑩散りばめられたメタファーのカッコ良さ
本記事にはオープニング動画を張り付けておりますけれども、そのようにした理由のひとつは「オープニングからしてメタファー全開でカッコ良い」からです。
例えばオープニング「1:20」の「交差した高速道路」。
個人的には本編鑑賞後に5つ以上のメタファーを内包していることに気付き、ポッポしました(胸が熱くなりました)。
当然その前後の「太陽のような惑星とそれに向かうかのような(飲み込まれてゆくようでもあり、向かってゆくようでもある)小さな惑星」にもメタファーが隠されていますし、そういった映像達の連なりと音楽『Nevermind』とのアンサンブルにより、しっかりと本作の内容とシルエットを浮かび上がらせており最高に素敵です。
というわけで長くなってしまったためこの辺にて切り上げますけれども、上記したようにシーズン2は腐敗した都市にて奮闘する『トゥルー・ディテクティブ』達の熱い戦いを広い視野でもって描いた、とても奥深いエンターテイメントとなっているため、大人の知性を備えた方にはもれなくおすすめさせていただきます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?