書籍『直立二足歩行の人類史 人間を生き残らせた出来の悪い足』
ジェレミー・デシルヴァ (著)
赤根 洋子 (翻訳)
出版社 文藝春秋(2022/08発売)
単行本 440 ページ
内容説明
目次
レビュー
本書368~422頁は「注」の解説となっており、実質本文は350頁程となります。
これは著者が、人間を人間たらしめている「源(起源)」は「直立二足歩行」にあり「直立二足歩行」こそ「人類の証明」であるとし、そのことを理解するために必要となるのは「自然界への問題駆動型にしてエビデンスベースのアプローチ法、つまり、(中略) 【科学】である」という立場を選択したことに起因します。
既存の科学的データ(主に「骨」に関するデータ)を出来る限り網羅、利用しつつ考察を進めてゆく手順を踏むわけですけれども、それにより読者は著者と共に「人類の起源」を探ることとなるため、なかなかにスリリングな読書体験をすることとなります(未解決事件の調査・捜査は楽しい)。
各章冒頭の引用文も知的、且つ読者の想像力を掻き立て、記し出すとキリのないくらい面白い情報満載です。
また個人的には「序論」にて語られる、「二足歩行する他の動物を自分たちの仲間と見なす人間の反応に関する情報」が楔となり、読了するまで、人間の持つ単純な反応(動物的な反応)に対する興味が広がり続けました。
微生物の類から、菌類、植物、昆虫、爬虫類、魚類、鳥類、哺乳類、変な哺乳類(人間)について網羅的に調べていると、変な哺乳類の(どうやら二足歩行に起因するらしい)「脆弱性」と「無駄」を嫌というほど思い知らされるに至りますけれども(自分の「notoの記事」はまさにそれでしかない)、しかしその生物としての「脆弱性」と「無駄」こそが、変な哺乳類に大きな脳と繁栄(というか「必要以上の増殖」と「破滅への暴走」)をもたらした最大の特徴でもあることを考えると、なんとも「感慨深いなぁ」と思ってしまうのでした。
人類のこれまでの歩みをちょっと乱暴に要約するなら、
「直立二足歩行を何らかの要因により意図せずに選択 → 身体的な構造及び能力が劣化し協力しなければ生き残れなくなる → 必然的に助け合うこととなり脳が発達。身体的な脆弱性を補うための道具の制作と使用、農耕と定住、自分たちに脅威をもたらす自然の破壊と自分たちに都合の良い(安全を確保可能な)巣作り、および拡大(簡易の住居~都市建設へ) → しかし三層構造となった脳の深部(脳幹と基底核)、所謂「本能を掌る」部分を自らの意思(大脳新皮質)により掌握することは叶わず、それぞれの個体の欲望を満たすために仲良く協力しながら破滅へと向かって元気に暴走中」
といったところでしょうか。
※極めて稀に、大脳新皮質を最大限に活用し自然の一部として慎ましく生きることの出来る人々も(奇跡のように)存在します
「直立二足歩行」を行動の旨とする哺乳類は人間のみであり、これほどまでに自然(地球=母体)を破壊しバランスを崩す動物は、人間のみ。
であることを踏まえて考えるなら、この未解決事件「直立二足歩行の変な哺乳類暴走事件」の「闇」は、深い。
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