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アート思考:斬新な発想の補助線を見出す

アート思考は、アーティストが世界を独特な視点で捉える能力に基づいています。彼らは型にはまらず、リスクを恐れずに挑戦し、誰も思いつかないような作品を創造します。

大御所アーティストの横尾忠則さん(1936―)は、新たなことを生み出すにあたり、「考える」よりも「想う」ことが重要だと言います。「考え」は脳に限定され限られた範囲にとどまりますが、「想い」は自由に宇宙へ飛翔し、無限の可能性を秘めています。この「想う」力こそが、創造性の源泉なのです。

「想う」力を実感するワーク

横尾さんの言葉を実感できるワークを、2023年12月に開催された「アート思考サロン」のゲストアーティスト・冨井大裕さんが紹介してくれました。このワークは、絵葉書を使って立体物を作るシンプルなものながら、大きな示唆を与えてくれます。
簡単なワークですので、是非皆さんも試してみてください。

ワークの手順

  1.  絵葉書を2枚、ハサミ、ホチキスを用意します。

  2.  葉書の一部を切り離すことなく、ハサミとホチキスを使って、平面の絵葉書から立体を作ります。

  3.  1ラウンド目、完成形を頭で考えて作ります

  4.  2ラウンド目は完成形を考えずに作ります絵葉書に描かれている図柄や文字を利用して、線を思い描きハサミを入れます。数箇所切り込みを入れ、適当に繋ぎ合わせてホチキスで止めていきます。ねじったり裏返したりすると、複雑な構造になります。

  5.  1ラウンド目と2ラウンド目を比べてみましょう。


Tamotsu Kido "Red and Yellow" 2023
図柄から線を描き(青線)ハサミを入れる

補助線を見つけ斬新な構造を創る

私が作った例を紹介します。

1ラウンド目
2ラウンド目

完成形を考えて作ったものは、過去に見たことのある構造になっていると思います。一方、2ラウンド目は、思ってもみない構造ができたのではないでしょうか。これが、「考える」と「想う」の違いと言えます。今回、葉書に既に描かれているものを活用して切り込みを入れました。これって、数学の図形問題の補助線に近いと思いませんか。図形をそのまま見て考えても解けないのに、補助線を適切に引くとすっと解けてしまう、そんな感覚です。

アート思考は、斬新な発想の補助線を見出すこと

これは立体を作るだけでなく、事業創造などでも同じです。頭で考えると、既に他社がやっていること、インターネットで見かけたものなど、自分が知っていることの周辺しか考え出せないものです。しかし、自分の関心事について、五感を使ってリサーチしていると、思考が飛躍し、斬新な発想ができるようになります。アート思考は、斬新な発想のための補助線を見出すことと言えます。

私のアート思考の講義では、斬新な発想を促すためにアート作品を創ってもらいます。アート作品を創る際には、実現可能性とか収益性といった頭で考える要素を排除できるので、「想う」力で補助線を見出す最適なトレーニングになります。皆さんも是非、アート作品の制作に取り組んでみましょう。そうすれば、思考の幅が大きく広がり、新しいビジネスチャンスが見えてくるに違いありません。


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