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D2C時代に心を掴むためのパッケージデザイン特集

群蟻附羶(ぐんぎふせん)
→ 蟻が生臭い肉に集まる意から、人が利益のあるところに群がること。

企業が利益を追求することを悪だという人がいるが、その考え方はとんでもない。

これだけはハッキリいっておくが、利益を出すことができなければ、誰も幸せになどならないしできない。

しっかり利益を出すことで、新しい挑戦もできるし、自信が積み重なっていく。

そのために企業はいろいろな努力をしているわけだ。

そんな企業努力の1つとして注目されているのが、パッケージデザインだ。

注目のパッケージデザイン

D2Cという言葉が市民権を得た。

D2Cとは、Direct to Consumeの略称で、事業者や企業が企画を考えて生産した商品を消費者に直接販売する方式のことだ。

事業者や企業が企画した商品をOEMで委託して製造してもらった後に、小売店や広告代理店を通して販売するというのが一昔前の主流だった。

それが、インターネットの普及により小規模な事業者や企業であっても、直接消費者に商品を販売できるようになり、D2Cが普及したという背景だ。

そんなD2C時代に消費者の心を掴むために、様々な企業がパッケージデザインに力を入れている。

届いたときのワクワク感や環境にハイ処したデザインが注目されている。

THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)

アウトドアやスポーツシーンはもちろん、タウンユースなどマルチに展開している、THE NORTH FACE。

大自然から都会にも溶け込むそのファッションは、幅広い世代に愛されている。

そんな、THE NORTH FACEは、段ボール製のシューズボックスに、旅のアイテムとしてアップサイクルできるデザインを採用した。

その表面は、パスポートケースなどの図面を印刷し、切り取り用のミシン目を施したパッケージデザインなっている。

シューズボックスも環境に配慮して、アップサイクルできるデザインを採用したというわけだ。

捨てられることが多いシューズボックスを、不要なものから必要なものに変えるためにアイデアはないかと、数年前から模索していたという。

THE NORTH FACEは、2008年からGREEN IS GOOD(グリーンイズグッド)のコンセプトを掲げている。

そして、環境に配慮した製品の開発、楽しみながら環境への負荷を減らせるアイデアの創出など、スポーツ用品メーカーとして環境のためにできることを実践している。

2016年から不要になった段ボールからカードケースやノートカバーなどにアップサイクルするワークショップや参加型インスタレーションを、直営店で開催してきた。

その後、2019年後半ごろからシューズボックスにアイテムの図面を印刷できないかということで、アイテムの図面が段ボールに印刷されることになったという。

パスポートケース、ポーチ、ラゲッジタグ、ピルケースなどが、捨てるはずだった段ボールから作ることができる。

ZOZO

アパレルECの大手であるZOZOが仕掛けたのは、体験価値の向上だ。

ZOZOの限定配送箱、通称、花火箱がJPM POPクリエイティブ・アワード金賞を受賞した。

箱を開けた瞬間の驚きが、買い物体験の価値を最大限に高めることを目的としており、顧客コミュニケーションの一環として注目された。

その仕掛けとは、ZOZOの限定配送箱、花火箱を開けたら、内蔵の光センサーが反応して、鈴虫の声や風鈴の音色が流れる。

続いて、ド、ドンと花火の音が響く。

内側には全面に打ち上げ花火が広がる夜景と、顧客に向けたメッセージが印刷されているというものだ。

箱の外観はZOZOが通常の配送に使っているものと同じで、黒地の段ボール箱にZOZOTOWNの白いロゴが入っているだけなので、なおさらサプライズ感が強い。

この花火箱の送り先は2020年の8月末に、ZOZOTOWNで商品を購入した顧客の中からランダムに選ばれたという。

これがプロモーション業界におけるPOPツールのコンテスト、JPM POPクリエイティブ・アワードで高く評価され、2021年の金賞を受賞したというわけだ。

なぜ花火にしたのかというと、夏といえば花火だからという理由だ。

自粛により、季節感のない生活を送っている人々に向けて夏を感じられることを意識したサプライズだ。

ZOZOは、2022年1月にも年始に一定の条件で買い物をした人に抽選で赤いZOZO箱や白いZOZO箱が届くキャンペーンを実施している。

この箱で届いたユーザは無料になるといった積極的なパッケージデザインへのこだわりを見せている。

トイサブ!

トイサブは子供の成長に合わせた知育玩具などを定期的に届ける、知育玩具のサブスクリプションサービスだ。

プランナーがアンケートをベースにその人の好みや成長に合わせて選んだ玩具を毎月専用の段ボール箱に入れて届けている。

2015年からスタートしたトイサブは、2022年3月末現在で利用者が累計1万2,000人を突破している。

そんなトイサブは、利用者に届く商品のパッケージをサービスへの扉と位置づけている。

最も重視しているのは、知育玩具を使う子供がトイサブであると視認できるデザインであることだ。

店舗を持たないビジネスなので、顧客は届くものでしかその世界観を体感できない。

届いた箱を見たときに子どもが、トイサブが来たと、ワクワクしてもらえるパッケージにこだわっている。

段ボール箱自体を玩具にできるように迷路のようなイラストをプリントしていた時期もあるが、現在は子供が好む動物をモチーフにしたイラストを採用。

一見、子ども向けにしては地味な配色に思えるが、その方が開けたときに玩具のカラフルさが引き立つからだという。

段ボール箱の構造にもさまざまな仕掛けがある。

その1つが上蓋で、配送伝票などが貼られた上部の1枚目をはがすと、イラスト付きのきれいな面がもう1枚現れ、届いた後も玩具箱として活用できる。

手が当たりやすいフチの部分は、開封時や作業時に怪我をしないようにと波形にカットしている配慮もみせる。

配達用段ボール箱を玩具箱に転用するアイデアは、サービス開始当初に各家庭に配達していたときの経験がきっかけだという。

遊び終わったら届いたときの箱に片付け、蓋をすることもできれば散らからないし、返送するときも便利だと考えたからである。

カッターなしで開封できるようになっているのもポイントで、届いたらすぐに手で開けられるというストレスフリーな設計にもこだわっている。

TOKYO TEA JOURNAL

ワインのように、シングルオリジンの煎茶を楽しむ、そんな時間を提供するのが、TOKYO TEA JOURNALだ。

一般的に小売店の店頭に並ぶ商品のパッケージを考えるとき、同業他社の商品よりも少しでも目を引くことが重要なポイントの1つになる。

一方、D2Cブランドは、直営店や自社のECから顧客に直接商品を届けるため、パッケージデザインとの差異化を意識する必要はない。

差異化の要素は、既にECサイトや直営店の店頭で訴求しているからである。

問われるのは、商品そのものの価値はもちろん、顧客にどんな体験を提供するかというわけだ。

煎茶専門店、煎茶堂東京のお茶の定期便、TOKYO TEA JOURNAL(トーキョーティージャーナル)は、その名のとおりお茶のサブスクサービスだ。

毎月、日本全国から仕入れたシングルオリジンのお茶(4g)2種類と、16ページの情報誌を800円(300円の送料税込)で届けている。

そのパッケージは、ポストインできる薄型の紙製ボックスタイプだ。

茶葉が入った小袋は既製品で、シングルオリジンの特徴である産地や農園、生産者の名前を記載している。

機能的でシンプルなデザインは、パッケージに限らず、煎茶堂東京で販売する商品すべてに共通している。

30gのお茶を入れた缶は、既製品を加工したオリジナルだ。

収納しやすいように、ゴムパッキンを入れてスタッキングできるようにした。

7万個以上売り上げている大ヒット商品の急須、透明急須も、究極にシンプルにお茶を淹れられることをコンセプトにデザインしたという。

茶の世界のルーツをたどると、精神性とともに発展してきた引き算の美学がある。

簡素だけど豊かな情景を感じさせる美意識は、日本固有のものでもある。

煎茶堂東京は日本各地の職人によって作られる商品をミニマリズムの世界観で統一して集めるプラットフォームのようなもので、小さな日本に見立てているというわけだ。

まとめ

勘の良い人はピンときただろうが、パッケージデザインにこだわることで、とあることが行われる。

UGCの効果だ。

UGCとは、一般ユーザによって作られたコンテンツのことをいう。

簡単にいうと、企業側が準備したコンテンツではなく、一般ユーザが自発的にSNSに投稿してくれるコンテンツのことである。

ユーザが勝手にSNSなどに投稿してくれることで、新規顧客獲得に繋がりファンも増えるという企業にとっては欠かせない入口をつくれるというわけだ。

こういった細かい部分のこだわりがなければ、体験価値を重視する時代に利益を出すことはできないということである。


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植田 振一郎 Twitter

株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。