アイドル彼女は素っ気なくて甘くて 第13話
その後、
俺と遥香がいじめ相手を
申告しなかったこと、
両親も処罰の実施に
合意しなかったこともあり、
いじめの事実はなかったことに。
俺と遥香は、
"不登校"になった。
教師達も今後、
不登校での卒業を認めてくれた。
…
…
それから俺達は、
お互いの家に行き来し
一緒に受験勉強しあうようになり、
今までよりも
"親密"な関係になった。
◯◯:遥香、受験する高校なんだけどさ、
遥香:うん、
◯◯:一緒に"乃木坂学園"を受験しないか?
遥香:"乃木坂学園"?あの「乃木坂46」がいる高校?
◯◯:なんか、そうみたいだね。先生に聞いたら"あの中学"の同学年の中では志望者がいないみたいだし、"特進科"なら、普通に偏差値高いし良いと思うんだ。
遥香:うん、分かった!じゃあ…頑張ろうね?◯◯。
◯◯:ありがと。
遥香:でも…約束が欲しいな〜。
◯◯:約束?
遥香:誓いの、"キス"?
◯◯:何だよ、結婚したわけじゃないのに。
遥香:いいから!欲しいの!
◯◯:分かったよ…
…
…
遥香:んっ…
◯◯:ぷは…はい、"約束"。
遥香:へへっ…じゃ、頑張ってあげる。
ーーーーーー
そして、見事俺たちは、
"乃木坂学園高等部特進科" に
合格。
遥香には反対されたけど、
兼ねてより伸ばしていた
前髪で"傷"を隠し、
更に度の強いメガネでキャラ変。
"この傷何?"などと
訊かれたくなくて、
人との関係を
"シャットアウト"したかった。
同級生のいない学校を選んだのも、
奴らとの関わりを
消したかったから。
人間関係を広げようとせず、
人にも取っ付く隙を与えない。
過剰な自衛と言われても
何も文句は言えない。
それほどにまで、
心は臆病になってしまった。
俺の人格は、あの一件から
まるっきり変わっていった。
…でも、遥香だけは、
ずっと俺の側に居てくれた。
〜〜〜〜〜〜
ーーーーーー
蓮加:そんなことが…
メガネをかけ岩本さんを見ると、
岩本さんの目には
うっすらと涙が浮かんでいた。
◯◯:ごめんね。そんな悲しませるつもりで、話したんじゃないんだけど…
蓮加:ううん、話してくれて…嬉しかった。
◯◯:だから、あの"表情"を見た時、ほっとけなかったんだ。岩本さんにあんな表情はもうさせたくない。俺で良ければ、岩本さんの力になりたい。
蓮加:…私、何で顔と傷を隠すんだろうって、ずっと思ってた。
◯◯:やっぱ見られちゃってたか…恥ずかしいな。
蓮加:あの時は…松尾くんのために、何かしてあげられる自信がなかった。
◯◯:え?
蓮加:でも、勇気を出して話してくれたんだもん。私もそれに答えなきゃね。
◯◯:岩本さん…
蓮加:松尾くんが"無理"してるって言ったのは、当たってるの。
岩本さんは、俺に続いて
過去を話し始めた。
ーーーーーー
〜〜〜〜〜〜
私が小学生の頃、
母親は他界した。
さらに父親は私との暮らしを放棄し、
どこかへ行ったっきりに
なってしまった。
中学生になった私は、
母方の祖母と祖父に引き取られ
東京に移住。
しかし、すぐに祖父も他界。
…
…
私は"捨てられた"と思った。
大切なものを"奪われた"と思った。
新しく通い始めた
東京の中学校の同級生が、
みんな楽しそうで羨ましかった。
何故こんなにも、
人の家庭は違うのだろう。
私は大事なものを
悉く奪われたのに。
…もう失いたくない。
大切なものなんか無い方が良い。
こんなに暗い自分を見せたら、
周りの子達は私のことを
嫌ってしまうだろう。
…
…
そう思ってしまった私は
人と接する時、
素直に感情を出せない
考えを押さえつけようとする
本当はネガティブな性格を
捻じ曲げようとする、
…そんな子供になってしまった。
今でも"無理"してしまうと、
偏頭痛や過呼吸を引き起こし、
お腹が痛くなって
しまうようになった。
ーーーーーー
中学2年生となったある日、
私はあるものと出会った。
…「アイドル」だ。
歌番組に出演する「乃木坂46」の
パフォーマンスを見たとき、
自然と笑顔になれた。
本当の"笑顔"を忘れかけていた私に、
たった3分くらいの歌唱で
それを思い出させてくれた。
…
…
こんなにキラキラした
人達が存在するんだ。
私は憧れを抱き始めた。
それからというもの
私は「乃木坂46」にハマり、
"握手会"や"ライブ"に
行くようになった。
ーーーーーー
続く。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?