アイドル彼女は素っ気なくて甘くて 第16話
朝食後、
俺と岩本さんは、ソファに座って
コーヒーを飲んでいた。
密着せず、
そこまで間隔を空けず。
俺と岩本さんの距離感は、
心理的にも物理的にもそんな感じ。
◯◯:今日、何か用事ある?
蓮加:うーん、用事はないんだけど…
岩本さんは、
俺の顔をずっと見つめる。
蓮加:家にいる時は、私に"顔"見せて?
◯◯:え?
蓮加:だって…見たいもん…
◯◯:…
確かにお互い親密になるためには、
顔を見せるというのは必須だろう。
◯◯:分かった、ちょっと待っててね。
…
…
俺はワックスで前髪を上げ、
リビングに戻ってくる。
◯◯:はい、これでどうかな。
蓮加:あと、その"メガネ"ってさ、
◯◯:あー、これ?隠すためだけにしてるんじゃなくて、普通に目は悪くてさ。
蓮加:じゃあ、コンタクトにする?
◯◯:家にいる時は、それでも良いかもね。その方が岩本さんも、俺に取っつきやすいでしょ?
蓮加:よし、じゃあ、今日は松尾くん"改造企画"やろ!
◯◯:お、おう…
唐突に、
俺の改造計画が始まった。
ーーーーーー
岩本さんが白石先生に
外出の許可を取り、
俺たちは2人で
大型複合施設に来ていた。
◯◯:あのさ、異性と一緒に外出て大丈夫なの?
蓮加:麻衣先生も許可してくれたし、誰も私のことなんか知らないよ。
岩本さんはそう言うけど、
マスクと防止で
顔の大半が隠れている。
◯◯:いやいや、そんなことは…
蓮加:あと"保護者"の人達もいるし。
◯◯:"保護者"?まあいいけど、本当に大丈夫?
蓮加:私と外出るの嫌だった…?
岩本さんは
少し悲しそうな目をする。
◯◯:違っ、そういうことじゃなくて!
蓮加:最近、外出してなかったから、たまには良いかなって。
知り合いには結構グイグイ行く
タイプなんだろうか。
蓮加:松尾くんのこと…もっとカッコよくするんだもん。
◯◯:ん?何か言った?
この状況が心配すぎる俺は、
岩本さんの言ったことが
聞こえてなかった。
蓮加:何でも…ないよ。
…
…
この後、
俺は検査結果をもとに
コンタクトを処方してもらい、
そのまま付けて
ショッピングモールに来た。
◯◯:何か久しぶりだな、顔を全部出すの。
蓮加:その方が、松尾くんらしいよ。
◯◯:ありがと。で、どこ行くの?
蓮加:松尾くんってさ、ファッションに興味ある?
◯◯:ない。
岩本さんの質問に
即答した俺。
蓮加:清々しいね、そこまで速いと。でね、いつも同じような服着てるし、ちょっとヨレちゃってるから新しい服買お?
◯◯:俺、全然センスないんだよ。
蓮加:私もあんまり詳しくはないけど、私が選んであげる!
本格的なデートだぜ、
あぁ…初めての感覚。
◯◯:マジ?じゃあ買おうかな。
ーーーーーー
岩本さんに
コーディネートしてもらい、
久々に服というものを購入した。
そして食品を買って
そのまま帰宅し、
晩御飯の時間。
蓮加:今日は楽しかった!ありがと。
無邪気な笑顔、
…可愛い。
◯◯:俺もだよ。あとさ、"保護者"って誰?
蓮加:んーと、ボディーガード的な、屈強な人。近くにいたはずだけど。
◯◯:本当に!?
蓮加:ごめんね。麻衣先生が派遣するんだ、いつも。
◯◯:そういうことなら全然いいんだけどさ。
…
…
少し沈黙があり、
蓮加:あのさ…
◯◯:ん?
蓮加:"蓮加"って呼んで?
◯◯:え…
蓮加:私も"◯◯くん"って呼びたい。
なんかすげぇ
カップル感出てきたぁっ!!
◯◯:えっと…呼び捨てはアレだから、"蓮加さん"で良いかな?
蓮加:う、うん…あっつ…
蓮加さんは手を
顔の周りでパタパタさせる。
蓮加:照れるね…
◯◯:だね…
今日、俺は
何種類の蓮加さんの表情を、
見れば良いのだろうか。
しかもどの表情も、
可愛さが限界突破してる件。
俺は恥ずかしさと
ニヤけ顔を隠すために、
蓮加さんと作った
餃子を頬張る。
また一段と
親密になった1日だった。
ーーーーーー
続く。
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