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短編小説集

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短編小説をまとめてます
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夢を見たから[ショート小説]

夢を見たから[ショート小説]

monogataryで小説を更新しました!!

良かった読んでいただけると幸いです。

[短編小説]少年時代

風が吹き、木々が揺れている。私は、家の近くの公園を散歩していた。上を見上げると、夏の日差しを浴びた緑の葉は黄金色に光り、青い空が垣間見える。蝉の鳴き声が聞こえる。一歩一歩踏み出す度に額から汗が流れる。ときどきハンカチを取り出して拭う。
 大きな広場の前を通ると、多くの小さな子供がアスレチック広場で遊んでいた。高い声が響き渡っている。近くに親が見守っていた。無邪気にはしゃいでいる姿を見ると、自分も童

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[短編小説]幽霊

 ある日の夜、わたしは自分の部屋の机に向かって小説を書いていた。一段落ついて、一息ついたあと、椅子から立ち上がって後ろを振り向くと少年がいた。わたしのことをじっと見ている。

「こんばんわ」

 わたしは、彼に声を掛けた。十歳くらいの少年である。何も反応しない。ちょうど、リビングに向かう出入り口のドアの前に立っているので、わたしは部屋を出ることが出来ない。

「そんなところに、なぜいるの? ここは

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[短編小説] 虫

 この日の達也の寝起きは爽快だった。昨晩はいつもより早く寝ていた。いつもなら夜中に起きることがあるが、この日は熟睡をしていた。ちょうど、窓から太陽の光が差し込んで部屋中が広がっていた。いつもよりよく寝たなと思って気分が良かった。だが、目を開いた瞬間に違和感を覚えた。背中がベッドについてる感覚がない。身体を動かそうとしても起き上がることが出来なかった。彼はおかしいなと思った。

 首を動かして下を見

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[短編小説]未来の自分

 事件は2022年に起こった。

 わたしは、公園のベンチに座っていた。夏が終わりに近づき、蝉の鳴きも聞こえなくなり昼間の気温も涼しくなって過ごしやすい日々が続いていた。長袖のTシャツにジーパンという格好で本を読んでいた。

 突然、わたしはこの瞬間を体験したことあるという感覚に陥った。本に書いてある文章が既視感を与えたわけではない。周りにある自然が風で揺れて、メッセージを与えているように感じた。

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[短編小説] 僕が僕になる

 僕が六歳のとき、両親からあることを聞かされた。それは、僕の頭の中には、もう一人の僕がいて、その僕が、僕という人間をつくっているのだと。

 もう一人の僕には、さまざまな僕がいる。怒っている僕、優しい僕、困っている僕、悲しんでいる僕。さまざまな僕が、僕の中にいて感情を表現する。その感情を感じている僕がいろいろなことを学んでいくことが人生なんだよと説明した。

 そのことを聞いたとき、僕は何を言って

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[短編小説] 妄想

[短編小説] 妄想

 私の日常は、妄想で溢れている。一つ事を思うと徹底的に考える。会社で事務作業をしているときも、他のことを考える。日曜日には何をしようかなとか、次はどんな本を読もうかなとか、そんなことばかり妄想している。

 妄想は現実化する。

 ある偉人の残した言葉である。私は、頭の中で自由に妄想すると、そのことが現実化するかもしれないと期待する。

 今年の六月の終わり、私は職場で外出を頼まれて年金事務所に行

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