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組織的選挙妨害には”内乱罪”を適用すべきだ

 江東区での先月末の衆院補選での選挙妨害はひどかった。
特定の複数陣営の選挙カーを追い回し、マイクが使えないように音をかぶせる。被害に遭った候補者陣営でしゃべっている自分の声すら聞こえない状態だったという。
 聴衆は候補者の政策を聴きとることができない。個別訪問が禁止される日本の選挙で演説ができなくなれば、選挙運動をできないに等しい。民主主義の破壊である。
 にもかかわらず統治機構側の行動はおざなり。妨害者(根本りょうすけ陣営)も候補者であるからという理由で放任した。その結果、だれが当選したか。公示直後に行われた候補者全員(9人)による政策討議会に唯一欠席した者(立憲民主党)であった(この陣営はいわゆる組織票が基盤で、候補者個人の政策にはほとんど関心がないとされている)。
 この討論会の模様は主催者によってネット公開されている。執拗な妨害で主な候補者の演説ができなくなった以降、NHKなどがこの討論会の録画を流し、また有権者にネット視聴法を伝えることで有権者が政策を聴く機会を補うことができた。にもかかわらず大手マスコミはそうしなかった。投票率はたったの40%に落ち込んだが、その理由には「候補者の政策を聴くことができなかった」というのがかなりあるはずだ。

 選挙妨害者を放任でよいのか。政治アナリストが公職選挙法の各条項に照らしての可罰性などを論じている。
 なるほどねと思うところはあるけれど、今回のように選挙そのものを成り立たせない組織的・計画的妨害には、もっと基本的な視点からの対応が必要ではないか。
 日本国の国是は民主主義。現行憲法の根幹思想として「日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」とある(前文の冒頭)。選挙が正当に行われるとは、有権者各自が候補者の政策を比較検討した上で投票するということだ。これがほとんどできなかったのが今回の東京15区(江東区)の衆院補選。
 本来ならば選挙やり直しすべきだろうが、費用もかかるし、それは言うまい。それに今回は補選だから、すぐに本選挙(いっせい総選挙)になる。よって今必要なのは、今後に組織的・計画的な妨害が起きないようにすることである。
 かといってロシア式に、「怪しい者は立候補させない」というのも民主主義の否定になる。すると事後の対策になるが、現行の公職選挙法などではなまくら対応にしかならないのは識者が論じるとおりである。

 ではどうするか。適用すべき格好の条項が刑法にある。驚くかもしれないが刑法77条の内乱罪は「…その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱(かいらん)することを目的として暴動した者」とある。今回のつばさの党(根本りょうすけ候補の所属政治団体)の妨害はまさにこれに該当する。彼らの妨害手法でまともに選挙活動ができなかったと主要陣営が口をそろえており、これが繰り返されれば「正当に国会議員を選出する」ことができなくなり、結果として民主主義、すなわちわが日本国の統治システムが崩壊する。
 今後に向けて新たな罰則を討議することにも一理あるが、適用できる現行規定があるならば、まずそれを行使すべきであろう。内乱とは、日本国を滅亡させようとする組織的計画的行動であり、内側から国家の基本(特に民主主義)を機能させなくする行為が含まれる。異論はあるまい。
 内乱罪は行為の重大性に鑑みての罰則も均衡がとれている。①首謀者は死刑または無期禁固、②謀議に参与した者等は無期または3年以上の禁固、③不和随行した者等は3年以下の禁固であり、今回の選挙妨害状況を体験した聴衆等の処罰感情にも適合しているはずだ。

 法律は適用されてこそ意味がある。内乱罪はこれまで検挙例がないそうだ。それが民主主義の破壊者がいなかったためであればよろしい。今回発の適用事例にすればよい。
 

 



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