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【860生活困窮原因への対応 ITで金銭管理技能の向上を】

 同じ給料、同じ家族構成なのに彼は家を建てることができ、わが家はいつまでも借家。どうしてかと家族に責められる。実感する人は少なくないだろう。その理由の一つが家計のやりくりの上手下手。年末になると書店に家計簿が並び、来年からはきっちり支出管理をするぞと、張り切っては見るもののひと月も続かない。日記と同じで、毎年の恒例行事。
「要るものは要るのよ」と達観している方が、月末に赤字になったときの精神状態がよいとする向きもあるかもしれない。ただし「使い過ぎたら補正予算を組めばいいのだ」とはいかないのが、政府などの公会計と庶民の家計との違い。朝三暮四で次月以降は猛烈緊縮で飲み会を欠席して会社でも冷たい視線を浴びることになる。

 なんとか上手な家計管理ができないものか。
 それが満たせそうな技術開発が進んでいるというニュース。ネットで見た「顔認証買い物システム」がそれ。ヤフーなどが実証実験をしているという。顔写真をスマホに登録しておけば、スーパーマーケットなどで品物を手に取り、カメラに顔とスマホを見せれば、機械ステムが登録された顔写真と照合する。一致していれば「購入決定」となり、後は電子決済されて銀行預金口座から引き落とされるのだろう。
 これが実用されれば、次のことはお茶の子だろう。
 すなわち月初めに食材、文具、書籍…などと予算を決めておく。顔認証システムで買い物をすると記録がスマホに蓄積されるから、予算との乖離が大きくなると「その買い物ちょっと待った」の警報がスマホに表示される。購入を考え直す機会を与えられるわけだ。それでも「買う」と決断すれば、システムは不承不承でも承認する。自分のカネなのだから、最終決定権は当然当人にある。
 月末に振り返るにもシステムは有用だ。ジャンルごとに買い物履歴と総計が示されるから、来月以降への反省材料になる。こうして国民は賢い消費者に進化していくことになる。
 でも機械からごちゃごちゃ言われたくない人は、システムには参加しないだろう。予算を立てての消費生活はイヤという人は特にそうだ。

 ただしせっかく開発されるのであれば、絶対に活用すべき人がいる。
 厚生労働省の発表によると生活保護申請申請者が急増している。2月は前年同月と比べ20.5%増だったという。
 生活保護基準は最低生計に必要な額ということで厚労大臣が定めることになっている。しかしそれより収入が少ない家庭がすべて申請しているわけではない。なんとかやりくりしていると思われる者が、実際の申請者の何倍もいる。 
 逆に言えば、家計管理の技量が高まれば、申請しなくてもやっていける人が増えることになる。もう一つは、生活保護の長期受給者が多いこと。生活保護を卒業するには、収入増が達成される場合のほかに、収入は前と変わらないが家計管理が上手になってやっていけるようになることが考えられる。
 収入増がなかなか実現しない場合でも、家計管理の向上によって生計費を圧縮することで自立生活を維持できる道があるわけだ。顔認証買い物システムはそのための有力な手段になる。

 生活保護は同朋に日本国民としてのふさわしい暮らしを保障するための制度であり、年金と違って生涯支給などを想定していない。
 顔認証買い物システムで家計管理技量を高めることが求められるわけだ。受給者には市町村の職員が面接などで生活再建のアドバイスをすることになっている。就業など収入増対策と並行して支出監理の手法指導が必要であるが、顔認証買い物システムはそのための道具になるはずだ。

 一般国民からの次のような声がある。
≪生活保護という仕組みを見直した方がいいと思う。
実際、国からお金をもらっても、適切に使えていない人は沢山いますよね。
受給したその日のうちに全額引き出して、パチンコや競馬行ったりして、健康状態がボロボロだという人もかなりいます。お金の使い方、という部分を個人任せにするからこうなるのです。
だから、現物支給にすればいいんですよ。
お米、お惣菜の支給。
建物も、市営住宅みたいなところに一か所でまとまってもらう。共同生活してもらう。等。≫
 こうした指摘に応えるためにも厚労省にはシステムの活用を考えてほしい。

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