見出し画像

積み立て投資がいつも正解なのか?


貯金は本当に意味がないのかという疑問

「とにかくS&P500や全世界株式インデックス投資に積み立てるのが正解」
このような声がよく聞かれます。わたしも、長期的な資産形成をするうえでは、この考えに賛成です。しかし、どんな場合もこのアドバイスに従っておけばよいのでしょうか
たとえば1年後の結婚資金を貯めるという時も、本当にS&P500インデックス投資への積み立てが正解なのでしょうか。株式相場は短期的に下落することは珍しくありません。1年間、毎月10万円のインデックス投資をしてきたあげく、いざ資金が必要な時に株式相場が下落し、必要なお金が用意できないということも、十分起こり得ます。
一方で、単に銀行預金として積み立てればよいかといえば、それもどうなのかなという疑問が湧いてきます。すずめの涙程の利息しかつかないし、物価高が進行する局面においては、とても非効率なお金の運用をしているように思えるためです。

2年以内に必要な資金を貯めるなら預貯金が正解

たしかに現金でお金を保有していると、インフレによって隠れたコストが発生します。しかし、それが2年以内であれば、その影響は小さいといえます。
例えば240万円を貯めるには、インフレがまったく無ければ24ヵ月で目標を達成することができます。しかし、年間インフレ率が2%の場合、24ヵ月で貯められる金額は、実質的に235万円となり(別の言い方をすると、結婚費用が2年後には245万円に上がっており)、あと0.5ヶ月の貯金が必要となります。これが、預貯金のデメリットです。しかし、後で見ていくように、これは大きなデメリットではありません

インフレの影響を避けてお金を貯めるには

インフレの影響を避けながらお金を貯める方法もあります。米国債券等に投資する方法(米国中期債券ETFファンド等に投資する方法)です。債券であれば、低リスクでありながら、ある程度のリターンも得ることができるからです。
しかし、債券価格は金利率の変動によって3%以上変動することも珍しくありません。仮に24か月目で3%の債券価格下落があれば、24か月目の残高は約232万円(240万円×(1-3%))となり、やはりあと1ヶ月積み立てが必要となる場合があるということです。もちろん、その逆(24ヵ月より早く目標を達成する場合)もありますが、1962年以降の全期間に当て嵌めて計算すると(米国における計算。以下、同様)、平均では25ヵ月を要している結果となっています。
ただし、現預金のみで貯金をするケースにおいても同様の前提(インフレ率が単純に毎年2%ではない前提)を置くと、目標達成までの期間は平均で26ヵ月となります。

『JUST KEEP BUYING』より

つまり、この場合により効率的な方法は債券へ投資することですが、資金が必要なときに債券価格が下落する心配があることを考慮すると、2年以内に資金を貯める場合はシンプルに預貯金でよいとの結論です。ただし、この場合、できるならば5%程度余裕をもった積み立てるのが良いでしょう(毎月10万円と考えているなら、毎月10万5千円の貯金とするのが確実だと思います)。

5年先の目標についてならば景色が変わる

しかし、期間が5年となると、まったく別の話となります。
インフレが無い世界で毎月10万円を貯金する場合、600万円を貯めるためには60ヶ月かかります。しかし、1962年以降のデータ(インフレを考慮したデータ)に当て嵌めると、貯金による場合目標達成には平均67ヶ月を要し、15%の割合で72ヶ月以上を要することになります。

『JUST KEEP BUYING』より

同じ期間で米国中期債券に投資した場合は以下の通りです。600万円を貯めるために必要な月数は平均で60ヶ月であり、投資期間が5年間である場合、明らかに債券への投資が有利であることがわかります。

『JUST KEEP BUYING』より

株式投資ならもっと有利か

しかし、それなら、株式に投資をした方がもっと有利なのではないでしょうか
その通りです。株式に投資した場合には平均54ヶ月と、最も効率がよい結果となっています。それどころか、37ヶ月で達成する場合もあります。しかし一方で、72ヶ月以上を要する場合もあるのが特徴です。つまり、リスクが(債権に比べて相対的に)高いのです。

『JUST KEEP BUYING』より

10年以上先を見越すなら株式投資に重心を置くのが正解

しかし、このようなブレも投資期間を10年、20年間に時間軸を引き延ばせば、大きなものではありません
もし、あなたがまだ若かったり、10年以上先を見越した資産形成に励むのであれば株式投資(インデックス投資)をお奨めするのはこのためです。決して、預貯金でどうにかしようとなど思わないことです。
もしかしたら、10年先、20年先というと、20代のあなたには気が遠くなるかもしれません。私がそうでした。しかし安心してください、(本当に)あっという間ですよ。


この記事が参加している募集

お金について考える

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?