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誰もが安心して楽しめる場所に!お客さま目線で作った、本当に必要な情報を集めたバリアフリーサイト開発の道のり

サンシャインシティには、お身体が不自由な方に向けた専用情報サイト「サンシャインシティ バリアフリー情報サイト」があります。2020年11月より公開し、たくさんの方にご利用いただいているほか、2023年12月には第72 回東京都社会福祉⼤会知事感謝状を贈呈されるなど、社会的な評価も得ている取り組みです。
どのような経緯でバリアフリーに特化したサイトを作ることになったのか、株式会社サンシャインシティ コミュニケーション部の植⽥さんにサイト完成までの道のりや反響、そして今後の展望までお話を伺いました。

バリアフリー情報のみを分かりやすく発信!

――サンシャインシティバリアフリー情報サイトはどのようなサイトですか?

植田
車いすユーザーをはじめとした、お身体が不自由な方や、ベビーカーを利用されている方に向けた情報サイトです。「遊ぶ」「食べる」「優先トイレ」「その他バリアフリー情報」「アクセス」のトピックに分けて、バリアフリー情報をまとめています。

バリアフリーサイトのトップページ。必要情報がトピックごとにご覧いただけます。

――シンプルで見やすく、使いやすさに特化していますね。

植田
実際にご利用いただく方にとって、サンシャインシティを楽しむ上でどんな情報が必要なのかをヒアリングしながら作ったので、必要な情報をスムーズに入手できることにこだわりました。

――情報を見ていると、サンシャインシティがバリアフリー対応に積極的に取り組んでいることがよく分かります。

植田
サンシャインシティは開業から45年近く経った施設ではありますが、以前よりお客さまの声を取り入れながら、必要箇所にスロープをつけたりトイレを改装したりするなど、ハード面でのバリアフリー化は定期的に行ってきました。
今回、サイトというソフト面を手掛けるにあたって、事前調査として車いすユーザーの方に水族館や展望台など主要な施設にお越しいただいたのですが、その際「古い施設なのにバリアが少ない」というお褒めの声をいただけて、大変嬉しかったですね。年々アップデートしてきた施設の取り組みを、このサイトを通して知っていただけたらという思いもあります。

お客さまの声をもとに設置されたサンシャインシティ地下道のスロープ


専門家と当事者とともにつくる、本当に必要な情報が得られるサイト

――2020年にサイトを公開したとのことですが、どのような経緯でプロジェクトはスタートしたのでしょうか?

植田
私は現在、「CX(顧客体験価値)向上活動」の推進を担当しています。コロナ禍、オンラインでの買い物やリモートワークが増えたことで、わざわざサンシャインシティに足を運んでいただくためには単にCS(顧客満足度)を高めるだけではなく、何度も来たくなる体験を提供することでサンシャインシティの価値を高めていく必要があると考えています。
バリアフリーに関しては、「障害をお持ちのお客さまが安心してお越しいただくために何をしたらよいか」という点で、これまでCS担当者が集まる会議でも取り上げられてきたテーマでした。先ほども申し上げたように、ハード面は定期的に必要な設備を整えたり、段差が分かりやすいように目印を付けるなどの対応を行ってきたのですが、ソフト面では一体何ができるか?が課題でした。ただ、取り組むにあたり、ソフト面におけるお客さまのニーズが分からなかったんです。それなら、実際に当事者の話を聞いてみようと専門家に相談をしたのがスタートでした。

――どなたに相談をしたのですか?

植田
サンシャイン水族館リニューアルの際にご協力いただいた中村元さんという方が、水族館プロデューサーという肩書きのほかに、「日本バリアフリー観光推進機構」の理事長を務めていらっしゃるんです。その中村さんにご相談し、「サンシャインシティとして何をすれば、お身体の不自由な方も気軽にお越しいただくことができるかを」ヒアリングさせていただきました。その結果、ご自身で行動するために必要な情報を開示することが施設として大切であることだと知ることができました。

――なるほど、知っていれば行くか行かないか自分で決められるということですね。情報がないと決めることもできないと。

植田
そうなんです。障がいをお持ちの方は、ご自身が出掛けるための事前準備や調査をしっかりしたいそうなんです。たとえば、サンシャインシティの行きたいお店が決まっていたとすると、その道のりにどんなトイレがあるか、エレベーターはどこにあるかなどをチェックしたいそう。ですから、必要な情報を開示するだけで、サンシャインシティを訪問するハードルが下がると教えていただき、バリアフリーサイトの制作を決めました。
バリアフリーサイトを制作する上で、はじめにメインターゲットとして設定したのが、車いすユーザーなどの足が不自由なお客さまと、ベビーカーユーザーです。どのような情報が必要かは実際に車いすで調査を行った方が確実であるため、WheeLogという車いすユーザー団体様にご協力いただきながら、皆さまのリアルな声を元に構成しました。

――そうして完成したのが、”ここにエレベーターがあります”、”ここにスロープが設置されています”という情報だけではない、本当に必要な情報が掲載されたサイトなんですね!

植田
そうですね。シンプルにしつつ、写真を必ず掲載したのもこだわりです。サンシャインシティの飲食店の店舗入り口や通路の幅、机の高さから、サンシャインシティ内トイレの個室内設備まで、写真を交えながら分かりやすく掲載しています。この形状の車いすなら通れるなど、ご自身で判断できるのがポイントです。

――写真撮影に協力いただいた飲食店舗の皆さんの反応はいかがでしたか?

植田
皆さん大変協力的でしたね。障がいをお持ちの方からも、「サンシャインシティの店舗はどこのスタッフも皆さん親切に応対してくれるので訪れやすい」という声もいただきます。ですから、これまでも当然のように応対してくれていた店舗ごとの取り組みを、改めて紹介することができたのもサイトを作ってよかったことのひとつですね。

これからも安心して来店いただけるサポートを

――サイトを通した取り組みは、ボランティア活動や福祉のまちづくりの推進に功績のあった方に贈られる第72回東京都社会福祉大会において、都知事感謝状を贈呈されたとか。

植田
サンシャインシティは「福祉のまちづくり功労者に対する知事感謝状」を贈呈いただきました。これはサイト制作の取り組みだけでなく、継続的に活動を行なっていることも評価軸のひとつですので、今後も引き続き取り組みを広げ、ますます発展させていきたいと思います。

――今後の展望をお聞かせください。

植田
今年の4月から障害者差別解消法が施行され、商業施設等では「合理的配慮」が義務化されます。合理的配慮とは何かを学ぶ勉強会の開催や、実際に目や耳が不自由な方をお招きし、サンシャインシティとして必要な合理的配慮とは何かなどを、実際に視覚・聴覚障害の体験をしながら具体的に学ぶワークショップを行い、社員やスタッフワーカーとともに知見を深めているところです。

アイマスクで視界を塞ぎ、移動の大変さを体験

個人的には、この仕事を始める前からですが、障がいをお持ちの方や街で困っている方には声をかけるタイプ。少しでも安心してもらいたいというのは、仕事でもプライベートでも大事にしていることなので、自分ができることはこれからも積極的にやっていきたいと思います。

今後ますます海外からのお客さまも多くなるので、今以上に誰もが訪れやすい場所づくりの整備も取り組んでいきたいことのひとつ。そしてもちろん、バリアフリーサイトのアップデートも引き続き行なっていきます。
昨年度、視覚・聴覚が不自由な方に必要な情報の調査を終えたので、その情報をバリアフリーサイトに追加し、バージョンアップを図りたいと考えています。新しい視点でのサイトづくりになるので、まだまだ分からないこともありますが、今後も専門家や当事者のみなさんのお声を聞きながら、サイトの内容を充実させていきたいと思います。