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小匙の書室183 日本推理作家協会賞発表

 ミステリ好きなら見逃せない、本格ミステリ大賞と本記事で取り上げる『日本推理作家協会賞』。

 先日の本格ミステリ大賞では青崎有吾先生の『地雷グリコ』が【小説部門】を、『ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 戦後翻訳ミステリ叢書探訪』が【評論・研究部門】を受賞しています。

 地雷グリコが好きな私からすればこの結果は大満足。もちろんその他候補作も最高なので是非とも読んでほしいところ。

 さて。そんな本格ミステリ大賞の熱狂が冷めやらぬ今日、ついに日本推理作家協会賞も発表されました。
 ⇩候補作は以下の通りでしたね⇩

【長編および連作短編集部門】
 『地雷グリコ』 青崎有吾
 『アリアドネの声』 井上真偽
 『焔と雪 京都探偵物語』 伊吹亜門
 『楽園の犬』 岩井圭也
 『不夜島(ナイトランド)』 荻堂顕

【短編部門】
 『一七歳の目撃』 天祢涼
 『夏を刈る』 太田愛
 『消えた花婿』 織守きょうや
 『ベルを鳴らして』 坂崎かおる
 『ディオニソス計画』 宮内悠介

【評論部門】
 『舞台の上の殺人現場 「ミステリ×演劇」を見る』 麻田実
 『ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 戦後翻訳ミステリ叢書探訪』 川出正樹
 『江戸川乱歩年譜集成』 中相作・編
 『謎解きはどこにある 現代日本ミステリの思想』 渡邉大輔

【試行第二回翻訳部門候補作】
 『厳冬之棺』 孫沁文・著 阿井幸作・訳
 『トゥルー・クライム・ストーリー』 ジョセフ・ノックス・著 池田真紀子・訳
 『頰に哀しみを刻め』 S・A・コスビー・著 加賀山卓朗・訳
 『哀惜』 アン・クリーヴス・著 高山真由美・訳
 『死刑執行のノート』 ダニヤ・クカフカ・著 鈴木美朋・訳

 〜それでは受賞作の登場です〜
 ダラダラダラダラダラダラダラ……ダン🥁


【長編および連作短編集部門】

 『地雷グリコ』 青崎有吾
 『不夜島(ナイトランド)』 荻堂顕

【短編部門】

 『ベルを鳴らして』 坂崎かおる
 『ディオニソス計画』 宮内悠介

【研究部門】

 『ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 戦後翻訳ミステリ叢書探訪』 川出正樹
 『江戸川乱歩年譜集成』 中相作・編

【試行第二回翻訳部門候補作】

 『トゥルー・クライム・ストーリー』 ジョセフ・ノックス・著 池田真紀子・訳

 です!
 おめでとう御座います🎉🎉


 【長編および連作短編集部門】の感想。
 いや〜『地雷グリコ』つっっよ本格ミステリ大賞とW受賞なんて……!
 めちゃくちゃ面白いし、受賞するのも納得なんだけど、その強さに慄いています。※ちなみに、『SRの会による2023年SRの会ミステリーベスト10でも1位を獲得。トリプル達成しています。
 これで山本周五郎賞も獲ったら、四冠になるのか。青崎有吾先生の新たなる代表作となりましたね。
 一方の『不夜島』、私は普段ハードボイルドを読む機会がないのですが(そもそもどの作品がハードボイルドに属するのか詳しくない)、これを機に読んでみるのもいいなぁ。SFが好きな人にもたまらないらしいですね。あと表紙がかっこいい。

 【短編部門】の感想。
 『ベルを鳴らして』は、実は第14回創元SF短編賞の最終候補に残ったものの惜しくも受賞しなかった一篇。それが今回、推協賞受賞ということで、「作品の種は植える畑によって育ち方が変わる」のだと改めて知りました。SF短編応募当時における、作品の本質を射抜いた宮澤伊織先生の選評の一部を掲載。

 情感に満ちた、非常に巧みな小説である。時代背景を映したストーリーも、邦文タイプライターというガジェットの絡め方も見事だ。

Web東京創元社マガジンより

 『ディオニソス計画』は作品のあらすじ、

 一九六八年、アフガニスタンで起きた二重密室殺人。密室を構成するのは周囲の視線と、銃痕のない宇宙服

東京創元社サイトより

 が気になっていた一篇。第66回に『青葉の盤』で推協賞の候補になって以来の受賞ということで、著者のSNSでは感慨も一入といった雰囲気を感じました。いつか書籍の形で読める日が来るのを楽しみにしています。

 【研究部門】の感想。
 『ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 戦後翻訳ミステリ叢書探訪』は地雷グリコ同様、本格ミステリ大賞の【評論・研究部門】とのW受賞。この二つに支えられた評論書籍、俄然内容が気になっちゃうなぁ。
 まあ惜しむらくは……本作の旨味を十分に味わえるほど、私の舌が肥えていないことなのですが……。もっともっとミステリの沼にハマっていきたいですね。
 ※こちらの作品も、SRの会による2023年SRの会ミステリーベスト10で1位を獲得三冠です。
 『江戸川乱歩年譜集成』は候補作として発表されてから知った作品で、調べたところ、

 乱歩研究の第一人者が、リファレンスシリーズ前3巻の達成をもとに、膨大な時間を注いで取り組んだ完結編「江戸川乱歩年譜集成」の成果

藍峯舎サイトより

 とあり、「こりゃあ、乱歩マニア垂涎の一冊なんだろうな……」と思っていました。あいもかわらず私は江戸川乱歩の世界に全く足を踏み入れていない人間なので、この作品の良さは未だ味得できないポジションについています。

 【試行第二回翻訳部門候補作】の感想。
 『トゥルー・クライム・ストーリー』の他、『マンチェスター市警シリーズ』を阿津川辰海先生のおかげで知ることができた、作家ジョセフ・ノックス。
 本作は帯の惹句に『ミステリー界、震撼』とあり、また『本年度最大の問題作。』と銘打たれては──サスペンス・ノワールとのことで、どちらのジャンルも造詣が深くないものの──読んでみたくなる。
 ただ、もうちょっとお値段が安くなってくれれば嬉しいのだけれど……(文庫で1,265円(税込)ですからね)。


 というわけで今回の日本推理作家協会賞も無事に閉幕。

 改めて、受賞された作家の皆様、おめでとう御座います🎉🎉

 その興奮冷めやらぬうちに、筆を取った次第。
 ここまでお読みくださりありがとうございました📚

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