小匙の書室175 ─イデアの再臨─
世界から⬛︎⬛︎が消えた──?!
前代未聞。超絶メタ学園ドラマ、ここに爆誕。
〜はじまりに〜
五条紀夫 著
イデアの再臨
『クローズドサスペンスヘブン』でデビューした五条先生による最新作。
『クローズド〜』は『全員もう死んでるクローズドサークル』として面白い特殊設定ミステリを提供してくれましたが、今度の作品は『犯人は⬛︎⬛︎を消す!?』の惹句の他「電子書籍、映像化不可能」となっています。
昨今「紙の書籍でしかできない!」みたいな作品を見かけますから、本作がどのような立ち位置に来るのか発売前から楽しみにしていました。
これ系の小説は基本的にネタバレされると普段以上に面白さが減ってしまうので、私は早速読み進めていきました。
はたして、私の予想はどう覆るのかしら。
〜感想のまとめ〜
◯ページを捲って数ページですぐわかる。この小説は、とんでもないことをやろうとしているのではないかと。世界から⬛︎⬛︎が消えていくわけですが、『小説』という媒体に対してギリギリなラインまで攻めていっているなあと思いました。前作(デビュー作)『クローズドサスペンスヘブン』よりも派手派手しい設定です。
私的に⬛︎⬛︎が消えたときの『物語』の変化に、「そうくるか!」と膝を叩きました。
◯作中世界の人物が持っている、メタ能力。これがまた面白い。小説内でメタい発言をする人物がいるのはいくつかありますけど、ここまでメタにメタを塗り重ねているものは読んだことがない。「自分は小説の登場人物なんだ」が可愛く思えてくる。小説としてのそれはもちろんのこと、ミステリとしてのメタにもきちんと言及されていて、何度も笑ってしまいました。
◯ページ数は220弱と短く、その間ずっとメタ要素に立脚した犯人と主人公たちの“世界を救うための奮闘”が描かれています。エンタメに振り切っているのでテンポがよく、「いやそんなことしてもいいのか!?」と瞠目するシーンも込み込み。「五条先生は楽しんで書いていたんだろうなあ」と想像していました。
笑いあり、胸熱あり、異能バトルあり。
最後まで目が離せませんでした。
◯でも、ただ単にはっちゃけているわけではありません。メタはメタなりにメタらしいドラマが生まれるわけで、(特に犯人のホワイダニットは)意外にも私の身近に感じられるものでした。
そうそう、そうだよな。大人になった今でも感じることだけど、そこに⬛︎⬛︎があるなら⬛︎⬛︎でありたいよなあ。
しみじみと感じ入ってました。
◯さて。メタをして、彼らは何を掴み取ったのか。犯人の共感から芽生えたのは、あれにあれを与えて──と思うこと(ネタバレ防止のボカシ)。
いやはや、メタ的に小説を読んでみるのも悪いことじゃない。イデアの降臨による“気付き”を今後、主人公たちには大切にしていってほしい。もちろん、私も然り。
◯正直、これだけの感想まとめでは本作の面白さは十二分に伝わらないと思っているので、「とにかく読んでみて!」と私は口にするしかありません。
ネタバレないしは面白さを半減させないために感想を書くのがいかに難しいか、ご理解頂けるかと思います。
〜おわりに〜
一日で読了してしまうほどひたすら面白かった。そして物凄く実験的な小説でもあったのだと、五条先生の試みには感心していました。
確かにこれは……映像化不可能だな、うん。
今後も奇想天外な作品を読ませてほしいです。
ここまでお読みくださりありがとうございました📚
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