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◯◯業専門社労士で成り立つのか?

 社労士業務は多岐に渡ります。講師専門・障害年金専門等で活躍されている方はたくさんいらっしゃるのですが、時々見かける◯◯業専門社労士。
これが成り立つのかどうかを考えてみます。

なぜ業種を絞るのか?

 企業顧問を中心に業務を行う社労士の場合であっても、その分野は幅広く、全てを網羅して理解するのは困難です。しかし契約する事業主は、
「何でも知ってるはず」
という期待をしている面が強いため、多方面に渡った学習をしなければならない宿命があります。

 転職で社労士開業する方の多くは、従前の職業で培った知識も利用したい面があるでしょうし、特定分野への興味があることから、その分野を強化したい方もいるでしょう。

何より他の社労士よりも差別化できる分野があることは優位性を持つので、価格競争にも巻き込まれにくく、得意分野への知識をさらに強化することで、追随を引き離しやすい効果もあります。

 こうした事情から、特定分野特化型社労士になる方はいらっしゃるのですが、特化していい分野と特化しない方がいい分野があります。


特化してうまくいきやすい業種

介護・福祉業
 介護福祉は特化型で非常に効果が高い分野のひとつです。ほとんどが国や自治体の予算から受ける交付金収入で成り立っていて、交付金の金額を増やすには、人事労務的なアプローチが重要だからです。

 特に近年は処遇加算と呼ばれる賃金補助を受けるためには、就業規則の賃金規定や組織体系の構築(キャリアパス)等が必要になっており、通常の業種と異なる知識が必要になっています。

 しかも頻繁に制度が変わるので、新しい知識に対するアップデートが必要で、経営する方もそこで事務をされている方も疲弊している企業が多数あります。

建設業

 本来は、多くの建設業は経営審査や決算変更届が毎年あるため、行政書士を持っている社労士や行政書士と提携している社労士の方でないと特化は難しい面があります。

 働き方改革の法施工を遅らせる程度に、労働環境が整っていない企業も多いので、1年単位変形や3カ月単位変形を採用している場合もあります。
建退協・建設業キャリアアップシステム(これは行政書士)・建設国保・特別加入・一括有期事業関係申請・有期事業の一括・職長教育等の他の業界に無い事務業務が多数。

 それらを難なくこなしているスーパー事務員さんがいらっしゃることもありますが、社労士として関与することで補助できることはたくさんあります。企業数も多いし信頼を受ければ長くお付き合いできます。


特化しない方がいい業種

 ここで挙げると、業界の方から嫌われそうですが、悪く言おうとするような他意はありません。社労士としてその業界だけに特化しない方がいいという意味です。
「これだけ店(や施設)があるのだから、大きな市場性があるに違いない」
と勘違いしやすい業界を挙げてみます。

医療・薬局
 多くの医療業・薬局は7割近くが保険料収入という特殊な業種で、医療病床がある場合には、24時間勤務がある上に有資格者でないと配置できない特殊な業種であるのに、しっかりと市場で競争がある業界です。
 第一に決定権者である院長と、お話できる機会を設けるのが難しい。また、収益性が高いので、しっかりとした事務体制を組んでいる場合もあり、事業者数の割に社労士に頼むという認識が乏しい業界だったりします。
 またトップの医師の能力が高いために、事務作業をわざわざ有償で依頼するものでも無いと思われている場合もあります。

 社労士として活躍できる場面は多数ありますが、特化するほどの需要が無いのが難しいところです。

デンタルクリニック(歯医者)
 コンビニより多いと言われる歯医者です。件数が多いため競争が激しく、しかも設立時の設備投資は莫大という環境の中で、業界離反率の非常に高い歯科衛生士の取り合いになる業界です。
 多店舗展開するなら、それぞれに歯科医師が必要なので、拡大がしにくい面や、それぞれのクリニックで必要な人員数が多くないことから、管理が煩雑とまで言えない部分が、社労士需要の少なさにつながっています。

コンビニ
 それならコンビニなら多いのでいいのか?となるとそれも違います。大手フランチャイズの場合は、モデル就業規則や労働条件通知書が提供されており、労働者の時間管理や給与計算も本部でやってくれる親切設計。
セブンイレブンとかは、セブン銀行への給与振込処理まで、本部がやってくれます。
 さすがに雇用保険や健康保険の適用・助成金申請等はオーナーがやることになりますので、その部分において社労士需要がありますが、特化することで多くの需要が見込まれるようなものでもありません。

飲食店
 多数の事業者数がある飲食店です。家族経営も多く、業界ならではの業務はさほどありません。
 複数店舗になれば、手続き処理が煩雑になったり、給与計算が大変になったり、監督署の目が厳しくなったりと社労士の出番が出てきたりしますが、小規模の場合は、雇用保険未満の労働時間の労働者が多く、顧問契約する程の業務がありません。

 つまり特化しても多くの顧問契約の需要が見込めない業種でもあります。
ただしコロナ時の雇調金や、中小企業再生助成金のように、限定した助成金に限って需要が多かった時代はありました。

美容室
 こちらも数が多い業界ですが、多くは個人事業主で、従業員を雇用していないケースも多いです。業務委託で抱えている場合はありますが、業務委託なら社労士の出番はありません。
 多店舗展開していたり、エクステや美容サロンのような水平展開で拡大する場合は、社労士の需要が増えたりしますが、そうした展開にならない方が圧倒的に多いです。


 もちろん私の事務所の関与先には、これらの業種もすべて様々な出会いや、その時のマッチングでお付き合いさせて頂いています。小規模で顧問契約頂いている方もいます。

 これはあくまでも社労士的に業種特化でうまくいくのかという面から見たものです。それでも特化したいなら、特化型と特化型でない二種類のホームページと名刺を作りましょうね。

 逆に特化型でうまくいくには、その分野への知識が必要になるので、知らない業界なのに特化するようなことは、やめた方がいいです。

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