同音異義語

 好きな作品がある、というとき、それが漫画のほうが好きかアニメのほうが好きかをなんとなく意識していることがある。あの作品は漫画の絵柄のほうが好みだな、とか、こっちは主題歌の歌詞が良いんだよな、とか。

 私が好きなとあるアニメのアニソンの歌詞で、気づいたことがある。「先公」と「閃光」が同音異義語であるということ。
 それは一風変わった学園もので、ブラックユーモアも多分に含まれ、それでいてただのギャグで終わらないとある素敵な漫画のアニメ化時の挿入歌だ。伏線の回収がとても印象的なので恐らくそのへんのまとめサイトにあるだろう。
 教師を意味するくだけた言葉(と言いつつ、先公で検索したときにサジェストに死語と出てきてしまった)「先公」と、暗闇を切り裂く頼もしい印象のある「閃光」。私はこの「閃」という文字が好きだ。成り立ちを調べてみると門の下を人が通る様子といういかにもな由来であった。
 昔から教職を夢見てはその労働環境の過酷さに幾度となく心を折られ、でもやっぱり人に教えることの楽しさを、人と学ぶことの楽しさを捨てられずに、また幾度となく教師になりたいと思ってきた。高校時代担任にその話をしたら、「この高校(私立)出身者は他の公立校ではやっていけないかもしれない」という恐ろしい見解を聞かされた。でもよく考えたらそうかもしれない、と思うぐらいには私の高校は風変わりだったのだけど。

 それとは関係なく、もうひとつ同音異義語を見つけた。こちらはちょっとだけ嫌な感じがするほうである。「先導」と「扇動」だ。
 そうはいっても「扇動」という言葉の意味は、調べてみると主に「相手に対し何かしら働きかけある行動を起こすよう仕向けること」とされている。一応この文だけ見れば特によろしくないイメージは沸いてこない、気がする。先ほどから感じがするだの気がするだの書いているのは私が臆病なだけなのでご容赦願いたい。これは私の一意見どころか意見ですらない代物だ。
 さて、ここまで書いて前述の意味を見直してみると実は「先導」にも「扇動」にも同じような意味があるんじゃないか、なんてことに気が付くが、なんだか変な話になってきた。このへんでやめておこう。


 では平和な話題にしよう。
 先日、好きなVtuberの配信を見た。彼女の書く文章がとっても素敵で、私は好きだ。私がnoteを始めたのも彼女のnoteがきっかけだった。気になる方はぜひ私のフォロー欄から見てほしい。彼女が話していたのは「懐石料理」と「会席料理」の違いについてだった。前者はお茶がメインで、昔のお茶はとても濃かったから胃がどうにかならないようにとご飯を早めに出したらしい。後者はお酒を楽しむためのもの。
 このメモを下書きに書いたのはちょうど配信を聞いている最中(これもさいちゅうのくせにもなか、とも読む。いや、もなかのくせにさいちゅうと読むんだろうか)で、お茶とかお酒とか、普段なら漢字一文字で完結するのに、彼女の言葉からそのまま書き写した。せっかくなのでその後の自分の所見をメモの原文のまま書いておくと、「言葉遣いが丁寧な人の文章をそのまま引用すると自分も言葉が丁寧になったようで嬉しい」とのことだった。

 文体って匂いなんだと思う。人によって感じ方が違ったり、何かに影響を受けてすぐ変わったりするところなんか、人間のちっぽけな五感のうち一個でしか感じられないあいつとそっくりだ。
 私と彼女は同学年だ。歳は違うけど互いに大学一年生。これだって同音異義語だ。彼女を指す大学一年生と私を指す大学一年生はこんなにも遠い。こんなにも違う匂いがする。
 それでも、彼女とは画面越しでしか会うことはできないけれど、確かに私たちの音は同じだ。

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