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倹約家の夫が収集するサボテン。なぜか数か月後にいなくなる

Sprocketのコンサルタント・伊藤麻耶さんの旦那さんは「サボテン収集」の沼にハマっています。単にサボテンを集めて愛でるというだけではない、別の楽しみ方に魅了されているそうです。

沼った人の体験と思想から、底なしの購買欲の源流に迫る「沼る末路」。今回は、サボテン沼の知られざる世界に迫ります。


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思い通りにならないことで深みにハマる

伊藤さんのプロフィール
・夫と4歳になる子どもと3人暮らし
・神奈川県逗子市在住
・本人の趣味は旅行や料理

私はメキシコに留学経験があり、その時に買ったサボテンのアイテムが今でも家にあります。結婚してからも夫とメキシコを訪れ、夫もモチーフとしてのサボテンに興味を持つようになりました。

逗子に家を建てるときに、我が家っぽいものとしてリビングに150cmほどある柱サボテンを置くことにしました。それが夫をサボテン沼に誘い込むことになるとは考えもしませんでした…。

飾ったのは近所のカインズホームで買ってきた4本の寄せ植えでした。店員さんからは「水やりの必要はありません」と言われていたのに、夫はなぜか水をあげてしまって、1本を腐らせてしまったのです。本人は「喉が渇いてそうだったから」と言っていましたが、サボテンって乾いていて良いものなんだって!

私から「なんで水あげちゃったの!?」と散々いじられた悔しさもあったかもしれませんし、他の植物を育てるのに当たり前のことが通用しないままならないことに夫のサボテンへの興味は一気に高まったようでした。

それから家にサボテンが増えていくようになったのです。

店頭で見つけた柱サボテン
店頭で見つけた柱サボテン

売れると思うと安心して買える

気がつくと、廊下や玄関の周りにサボテンが増えるようになっていました。サボテンはそれぞれ形が違って個性があり、育て方で姿も変わっていきます。

室内に置いてあるとトゲに服が引っかかるので本当にやめて欲しいのですが、倒して折れちゃっても、そこから新たなサボテンが生えてきてピース型に勝手に育っていったり…。そういったところも、盆栽的な楽しさがあるようです。

折れたところからピースに育ったウェイウェイな感じのサボテン
折れたところからピースに育ったウェイウェイな感じのサボテン

私も夫も仕事や子育てで忙しく、わざわざサボテンを探して買いに行くわけではありません。他の用事がてら外出した際に園芸店があるとサボテンをチェックしています。私がスーパーで買い物を済ませて車に戻ると、そこにはサボテンを手にした夫がいるって感じです。

1度に2・3個、月に1・2回は買っていると思います。ですが、家にあるサボテンが増え続けるということはなく今あるのは6鉢くらいです。「あれ?ここにサボテンなかったっけ?」と聞くと、「売れた。1,000円で買ってきたのが、ジモティーに出したら2,500円で売れたよ」とのこと。

別々に買ってきたサボテンを寄せ植えにしたり、おしゃれな鉢に植え替えることで付加価値がついて、フリマアプリで売れるそうです。そういえば、スーパーから帰ってガレージで何をしているかと思えば、すぐに植え替えをしていました。そんなことより、荷物運びでもして欲しいところなのですが…。

夫は元々倹約家です。趣味の旅行も宿代が少しでも安くなるようにキャンセル期間中に何度も同じ部屋を取り直したり、ガソリン代が1円でも安くなるなら新規の会員登録の手間を惜しまなかったりします。

実家じまいをした際に、捨てようかと思っていた家具をジモティーに出したら買ってくれる人がいて、それで味をしめたようでした。サボテンは梱包や配送が大変なので、直接手渡しできるジモティーのようなフリマアプリでないと難しいでしょうね。

サボテンが売れるということがわかってからは、「売れると思うと安心して買える」ということで、出かける度に買うようになったようです。もはや仕入れに近い感覚もあるのかもしれません。

実際のフリマアプリの画面

金銭的にもプラスになる趣味

育てる楽しみがある上、自分がアレンジしたものを誰かが元値よりも高く買ってくれることに興奮を覚えているようです。家で数か月眺めて楽しみ、手放す。観葉植物のレンタルとかサブスクに近い楽しみ方かもしれません。

サボテンは寄せ植えするだけでガラッとイメージが変わります。自分の経験と勘を頼りに、良いと思う組み合わせを考え、それに値段がつく。そのサイクルが旦那を魅了しているようです。自分の介在価値が金銭的にも証明されるのは楽しいでしょうね。

売りやすいのは車で持ち運びしやすいサイズのもので、原価も1,000円程度と手頃なものです。それを2・3,000円で売るので手間を考えたら利益と呼べるようなものではないでしょう。それでも普通の趣味ならお金的にはマイナスになるところ、少なくともプラスになっているのも倹約家の夫に合っているのだと思います。

藤沢方面から取りに来ていただくことも多く、話を聞いてみるとカリフォルニアスタイルのインテリアとサボテンが相性良いということがわかりました。土地柄も良かったということですね。

フリマアプリを攻略する感覚も刺激になっているのでしょう。別にサボテンで儲けるつもりはないので、そんなにこだわらなくてもいいのに思ってしまいますが、本人は熱心に写真や金額設定のチューニングを行っています。それでも売れないとさらに植え替えをしたりもしています。

伊藤家のサボテン
伊藤家のサボテン

サボテン沼から抜け出す日は来るのか?

今、フリマアプリの管理画面を見てみたら、出品している商品のサイズ・金額感が以前よりも大きくなっていることに気が付き、ちょっと心配になりました…。

たまにサボテンが邪魔だなと思うことはあるものの、インテリアが定期的に入れ替わると考えると悪くないですし、夫もサボテンばかりに時間使っているわけではないので無理に止めようとは思っていません。

夫がサボテンの育成やフリマアプリでの売買を「マスターできた!」と感じたら、サボテンの趣味が終わる日が来るかもしれません。

とはいえ、今は酔っ払うと「脱サラしてサボテン畑やろうか!?」とか言っているくらいなので、当分はこの沼にドップリ浸かっているのだと思いますが…。


売買を通じて喜びを分け合う趣味

伊藤さんの旦那さんがサボテン沼にハマったのは、サボテン自体の魅力に加えて、「趣味であっても経済的に浪費しないという安心感」と「自分がコーディネートしたものを良いと感じて買ってくれる人、共感を得られる喜び」が大きかったようです。

最後に、旦那さんの購買行動に影響する心の動き「インサイト」を読み解き、ポイントを整理しましょう。

沼るインサイトのポイント
・失敗経験がむしろ次に活かそうというマインドにつながる
・みんな同じではない、自分だけのオリジナリティが生まれる世界
・「攻略したい」という気持ちが刺激される
・自分が手を加えたことが他者に評価される喜び
・コスト的にも手間的にも日常に入り込み継続できる

100年生活者研究所オンラインラボの調査では、「幸せに感じるお金の使い道」として半数以上の人が「自分+他者のための消費」と回答しています。

自分が手がけたものを誰かが買ってくれるということは、その人も価値を認めて、お金を出しても必要としてくれたということになります。それが幸せなモノとお金の循環につながっているのでしょう。

自分が好きでそれが売れそうなもの、何か思い浮かびますか?

それでは、また別の沼でお会いしましょう。

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