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新規事業担当者の悩み「その説明、よくわからない。」の巻

新規事業担当者が直面するあるあるの悩み。それは経営幹部からの「よくわからない。」というコメントだ。

もちろん、新規事業担当者としては、わかりやすく説明する義務はある。新規事業担当者は「ある意味起業家」であり、経営幹部は「出資者」だ。出資者が安心して投資できるように新規事業担当者は説明することは当然だろう。

ただ注意点がある。スタートアップ型の起業家は、通常VC(ベンチャーキャピタル)を中心とした出資を募ることになるかと思うが、VCは非常に勉強している。その新規事業領域について知識は持っていなかったとしても、着眼点は必ず持っている。一方で、経営幹部は、その新規事業について、ほとんどノータッチである。事業が開始されれば話は別だろうが、初期の段階では、まず知識は持っていないと判断してよい。

その知識がない状態で、「説明がよくわからない。」といわれるのである。
「いやいや、そうはいっても、スライドはわかりやすく一発でわかるようにするのが筋でしょ。」と考える人も多いだろう。実際に、そのようなタイトルで出版されている書籍もたくさんある。

ただ、よく見ていただきたのだが、そのような本を出版されている著者の所属企業だ。それは外資系コンサルであったり、大起業家が起こした会社であったり、はたまた高速成長してきた海外ベンチャー企業だったりする。

こういう会社は新規事業の判断軸ができていることが多い。仮に内容がわからなかったとしても、押さえるべき点を意思決定者が理解しているため、コメントができるわけだ。

ところが一般的な企業においては、新規事業担当者の説明の後に幹部から「で、この説明を聞いて、何を俺は判断したらよいのだ?」と問われることになる。これは会議の目的自体が明確化されていないまずい会議だろう。(意思決定者自身が何の判断軸も持たずに話を聞いていることを露呈しているという意味において)

ただ、私が話を聞く限り、多くの企業ではこういう状況は日常茶飯事かと思う。この状況を否定しても何も進まないし、(残念ながら人間の性質上)経営幹部も新規事業よりも、今儲けを出している既存事業のほうが重要なのだ。

では、どうすればよいのか?
この問題は根深いのだが、意思決定者がその案に対して「気に入らない」と思っているか否かが重要になってくる。つまり感情の問題だ。(幹部は、気に入っているが、担当者の説明に論理的な不足があるため、否定してくる場合は勝ち目がある。)

この問題に関しては、「右脳思考(内田和成)」が非常に参考になる。まず、やりたいとか面白そうだとか、やらないとまずい とかそういった感情を引き起こす必要が出てくる。相手のタイプにもよるが、できるだけイメージでものすごく儲かりそうな印象を植え付けていく方法も考えられるし、説明の際に毎度毎度同じことを繰り返し伝えるという方法もある(この方法は私は知らなかったが、実践者の話によると、かなり効果があるということだ。マネジメントではよく使われていると思うが、試してみる価値はある。)。さらに高等テクニックとしては、相手に言わせるように誘導する。というものもある。

ロジカルシンキングが騒がれて久しいが、行動経済学で説明されているように人間は極めて感情的(非合理的)な生き物である。あたかもデジタルに動くことが優秀なビジネスパーソンというイメージがあるが、そうではないと認識したほうがよいだろう。

ちなみに、経営幹部層からのあるある質問は、「事業開発一気通貫(秦 充洋)」に掲載されている。この悩みは自分だけではない。と知るだけでも心が軽くなるので是非、一読していただきたい。

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