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上場企業でライフサイエンス領域の新規事業開発職をやっています。Ph.Dと国内MBAホル…

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上場企業でライフサイエンス領域の新規事業開発職をやっています。Ph.Dと国内MBAホルダー。学びと実務を両立させながら日々感じたことを発信していきたいと思います。(ご相談ごとがあればお気軽にご連絡ください。)

最近の記事

生成AIを事業環境分析に活用してみる

よく、新規事業開発では「上司への報告資料を作成する時間があるなら、顧客の声を聴け!」と言われます。まったくその通りではあるものの、ほとんどの企業において上司報告を省略することは非常に難しいでしょう。 通常、新規事業担当者の上司は、新規事業がどのような進捗になっているか把握するという職務を背負っています。そして、それを経営者に伝えます。経営者は株主に対して説明責任を負いますので、新規事業の内情を把握しておく必要が出てきます。 報告内容については、会社によってさまざまではある

    • 新規事業では、「できない理由」を並べる思考回路をまず変えてみる。

      「あなたは、できない理由を並べる社内評論家でしょうか?」と聞かれて「はい。」と答える人は、まずいないでしょう。誰しもが自分自身のことを、少なくとも積極的かつ協力的で優秀だと思っているはずです(笑)。 自分自身をポジティブに評価すること自体は何も悪いことではありません。通常、自己評価が他者評価よりも高い傾向にあるのですが(面白いことに、あまり優秀ではない人のほうが自己評価が、かなり高い傾向にあるようです。(参考))、自己評価が低すぎると鬱になる可能性が高まります。自己評価が高

      • 新規事業では「やりたいこと」が重要?

        しばしば新規事業担当者に必要なのは「やりたいこと」をやること。と言われる場合があります。それはそれで正しいのですが、「やりたいこと」を軸に新規事業を考えると非常に危険です。 その理由は3つあります。 ①顧客視点ではなく自分視点になっている お客さんの立場からすれば、その商品やサービスを選ぶのはなぜでしょうか? おそらく自分の願いをかなえてくれるとか、自分が抱えている問題を解決してくれる。といった理由からでしょう。(日用品や食品であれば、あまりに当たり前になっているため、

        • 社内評論家が出世する企業で新規事業を行うのは非常に難しい。

          新規事業を進める上で、避けられない壁があります。それは「社内からの批判」です。そもそも、その会社にとっての新規事業は既存事業よりも圧倒的に情報が足りませんし経験値も低いため突っ込みどころは多い。 その中で、非常に問題となってくるのが社内評論家です。社内評論家は、有名大学を積極的に採用している大企業に多いように思います。業種でいうと重厚長大系。ある意味、有名大学卒業者と安定操業を第一とする重厚長大系の企業は相性が良いのです。 なぜなら、有名大学卒業者は答えがある問題に対して

        生成AIを事業環境分析に活用してみる

          新規事業における「共通バイブル」の必要性

          新規事業担当の方は、おそらく何らかの新規事業開発に関する本をお持ちかと思います。これ自体重要なことですが、その本をバイブルとして部署内、かつ担当役員レベルで共有できているでしょうか? 会社によっては「経営学」や「組織学」に関する本が、役員レベル~幹部クラスで共有されているのです。ここでいう共有というのは、「本自体が読みこまれ、しっかり自分自身として理解していること」を指します。 仮に本という形でなかったとしても、会社独自の行動指針や経営・新規事業に関する判定軸が、しっかり

          新規事業における「共通バイブル」の必要性

          新規事業の成功確率を数字で考えてみる。

          東証一部上場の名門企業で純粋な成功企業を成功させた人材は非常に稀かと思います。ここでいう「純粋な新規事業」というのは、スタートアップ企業が取り組むような、0→1を起点とした新規事業のこと。つまり、自社の強みが個人(=創業者)のスキルやマインドセット、人脈に依存しており、組織としての資源がほぼない状態で、大きな成長を遂げる事業のことを指します。 実は、大企業での新規事業の定義はあいまいで、「新商品開発」との区別がつかなくなっているケースが多々あります。グロービスの記事によると

          新規事業の成功確率を数字で考えてみる。

          Chat-GPT時代の新規事業開発人材の価値

          Chat-GPTの出現によりホワイトカラーの仕事は、大きく奪われる(参考記事)。多方面から予想されていることであり、アメリカ企業では大量解雇のニュースも実際に出ています(参考記事)。 一方で日本はアメリカに比べ解雇は難しいですから例えAI活用によって企業の生産性が上がったとしても解雇されることはまずないと思って間違いないでしょう。以前から、経理・財務などの会計人材は不要になる。とか言われ続けていました。ところが非常に面白いことに会計事務員の求人数はほとんど横ばい、もしくは微

          Chat-GPT時代の新規事業開発人材の価値

          新規事業にMBAは役に立つのか?

          起業や社内での新規事業を立ち上げるにあたって、まず、MBAを取得しておきたい。そんな考えを持っている人もいるかと思います。 結論としては、「MBAはある程度、新規事業開発に役には立つが必須ではない。」ということです。国内MBAではなく、もしアイビーリーグ(ハーバード大学、プリンストン大学、エール大学、コロンビア大学などの超有名大学)などの世界一流校を出ていれば話は別かもしれませんが、基本的に学ぶ内容は変わらない。と考えると、同じ結論に至っていたといえるでしょう。 MBAは

          新規事業にMBAは役に立つのか?

          無限の成長を求める社会の歪み

          ふと思いながらも、公言することが憚れる言葉があります。 それは「これ以上、企業は成長する必要があるのでしょうか?」というものです。 そもそも「成長しない」という選択肢を考えたことがない方々も多いかもしれません。資本主義というゲームに参加している以上、成長はルールであり、そのルールに対して疑問を持つこと自体が違反とされる。ということです。担当者レベルではまだ「成長なんて不要だ!」と言えるかもしれませんが、経営陣が株主総会でいうことは実質不可能でしょう。 新規事業を考える時

          無限の成長を求める社会の歪み

          新規事業での目的がいつの間にか変わる

          新規事業を担当していると非常に困ることが連発します。その一つが、意思決定者(通常役員以上)の考え方がコロリと変わる。というものです。 例えば、当初は 1)社会課題解決を強く意識するので高い利益率は求めない。 2)既存事業開発とは異なるため、失敗は許容する 3)既存事業よりも事業化の時間がかかることは認識している。 4)新規事業と既存事業の人事評価制度は別にする。 など、約束したとします。 ところが、いつの間にか、「すぐに稼げる事業は無いのか?」とか、「利益率は既存事業より

          新規事業での目的がいつの間にか変わる

          フレームワークを使うことでビジネスアイデアを生み出す??

          企業で大流行のフレームワークにSWOT分析がある。一般に公開されている統合報告書で各事業セグメントごとにSWOT分析がなされているのを目にした方も多いだろう。それほど使い勝手がよく、一般的に認知されているフレームワークといえる。 過去、私は社内で外部講師による新規事業を創出するためのレクチャーを受けたことがある。その時にクロスSWOT分析によるアイデアの創出を学んだ。 一般的には、戦略立案のフレームワークとして使われるものだが、この研修では 強み×機会:強みを活かしてビジ

          フレームワークを使うことでビジネスアイデアを生み出す??

          マッキンゼーの報告資料10選

          今回もまた、アクセンチュアに続き外資系コンサルティングファームの報告資料を紹介したい。以前にも外資コンサルの資料は公開したが、会社ごとに最近報告された資料を一挙公開していきたいと思う。 これらは日本政府向けの資料であり、プレゼン資料とは異なる。ととらえたほうがよいだろう。というのも、一般的にコンサル本で語られているようなプレゼン資料とはかけ離れているからだ。あくまで、「資料」としてとらえてもらえればよいと思う。(普通に、この資料をプレゼンで使ったら、時間がいくらあっても足り

          マッキンゼーの報告資料10選

          新規事業の成功因子はとにかく行動?

          昔の営業出身の上司など、過去の営業で成功体験のある人はよく、「とにかく行動しろ!」と部下に伝えることが多い。これは確かに正しい反面、危険な要素を含んでいる。 新規事業で、とにかく行動しろ!上司に当たった場合は、いったん冷静になって以下の動画を見てほしい。行動とは何か?ということがよくわかると思う。 行動しなければ物事が進まないのは厳然たる事実だ。ただ、考えずに動くのは愚かとしか言いようがないのもまた事実。もしも自分の会社がお金の使い道に困っていて、いくらでも新規事業を始め

          新規事業の成功因子はとにかく行動?

          アクセンチュアの報告資料を一挙公開

          今、ハイクラスな大学に大人気の外資コンサルティング会社アクセンチュア。私が学生の頃は、今ほどに人気はなかったように思っているが、知人がアクセンチュアに内定した。とかいう話をちらりと聞き、へぇーそんな会社があるんだ、と思った記憶はある。私が過去所属していた会社でも、転職先でアクセンチュアを選ぶ人もそれなりにいて、その人気度を改めて感じさせてもらったものだ。転職後もご活躍されているようで、先日、その方が執筆されたレポートを読ませていただき勉強させていただいたところだった。 さて

          アクセンチュアの報告資料を一挙公開

          他社研究:ファーマフーズ

          事業の成功には運も必要といわれる。プロ野球選手でも打率10割バッターがいないのと同様にビジネスの世界でも10割は存在しない。もちろん、成功の定義にもよるが、売上が1000億円以上の規模の企業の場合、少なくとも数十億円単位での事業に成長させたいところだ。 そういった視点で上場企業の業績を眺めていたところ、非常に興味深い企業が目に入った。それはファーマフーズだ。実は、この企業の株を保有していたことがあったのだが(株価が大きく上がる前に保有)、少し上がったところで売ってしまった。

          他社研究:ファーマフーズ

          自分で考える力がなければバズワードに振り回される。

          最近は(昔からでもあるが)、パーパスとかサーバントリーダーシップとかティール組織とか、DXとかシンギュラリティーとかよくわからない横文字が飛び交っている。もちろんこのような横文字のオンパレードは今に始まったわけではないが、横文字にされるとなんだか、最先端って気分にさせられるものだ。 これは経営幹部も全く同じであり、何かと新聞やらセミナーやらで、こういう横文字を並べられると「やばい、わが社も遅れてはならぬ。」と思うのは必然だろう。というのも、経営幹部の集まりなどで、会話につい

          自分で考える力がなければバズワードに振り回される。