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はじまりのはじまり。


2023年9月14日

ついにその日は来た。
18年ぶりのリーグ優勝。
圧倒的な差をつけての優勝。
岡田彰布監督は6度宙を舞った。
長く、苦しい、抜け出せそうで抜け出せない。
そんな18年間だったと思う。


2008年の歴史的V逸。
2010年の超強力打線でも届かなかった場所。
2014年のCS突破日シリ。
2017年の赤く巨大な壁に阻まれた年。
2021年の最も勝ちを積み重ねながらゲーム差なしの2位。

阪神タイガースという球団にいつからか纏わりついていた負のオーラ。

勝ちきれないんじゃないか。どうせ負けるだろう。誰しもがもっていたそんなイメージを真っ向から破壊するシーズンだった。

阪神タイガースは秋に失速する。
プロ野球ファンの誰もが知っている印象は、
9月負けナシ 11連勝での優勝という結果で塗り替えられた。
勢いではない。普通にやって勝つ。
地に足を付けた戦い方は間違いなく岡田監督の指揮によるものだった。

矢野燿大前監督の就任以来、秋に悪いイメージはなかった。
就任4年間で最も記憶に残っているのは2019年だろう。
わずか1%の確率を手繰り寄せてCSを掴んだあの年。
奇しくも今年の14日優勝確率も1%だった。
積極性を全面に出す野球は勢いで奇跡を起こす一方で脆さもある。
そこに岡田監督の"普通にやる"という姿勢が合わさった結果がこれである。
劇的な勝利が続いたわけではない。喝采が起きるような勝利ばかりではない。
普通に強いチームになった。

今年から急に強くなったわけではない。
2016年の超変革、いやそれ以前から基礎の工事が始まった。

阪神タイガースのドラフトは学閥のしがらみ、競合を避ける指名、歪ながらも個性のある選手ではなく平均点を求め、強かった時期の幻影だけを求める。

そんなつまらないものだった。

しかし、和田豊の監督就任と故・中村勝広GMのもと静かに始まった戦略が基礎にある。

明らかに潮目が変わったのは藤浪晋太郎の獲得からだろう。
推測ではあるが、彼を獲得した時から優勝のための戦力を94年組にしようとしたのではないだろうか。

阪神タイガースは坂本勇人や秋山翔吾、柳田悠岐、宮崎敏郎、前田健太や田中将大ら88年組が不在である。
豊作世代がいれば勝てるわけではないが、軸を作ることはできる。
阪神はこの年、藤浪晋太郎と北條史也の二人を獲得した。未来の軸を見越して。
育成のできない。外部補強に頼りきりになる阪神タイガースからの脱却を目指した。

2014年、生え抜きの鳥谷敬とメジャー帰りの西岡剛と福留孝介、
助っ人のマット・マートン、マウロ・ゴメス、オスンファン、ランディ・メッセンジャーを擁して日本シリーズには辿り着いたが優勝はできなかった。

まだまだ再建は序の口である。

2016年、金本知憲の就任から阪神タイガースは加速する。
そう、超変革である。
誰もがワクワクしただろう。
高山俊と横田慎太郎の1,2番。レジェンド鳥谷敬に変わって出てきた北條史也。
94年組の軸を作る作業はさらに加速する。
大山悠輔、小野泰己、長坂拳弥、福永春吾
将来の主軸に、力のあるストレートをもつ投手を獲得した。
それだけではない。青柳晃洋や才木浩人、糸原健斗、坂本誠志郎なども獲得し、強さを補うための糸井嘉男の獲得。
金本知憲がチームに残したものの大きさを改めて実感する。

勝負をかけた3年目、ウィリン・ロサリオの不発や育成途上もありチームは最下位に沈む。親会社の介入による志半ばでの解任。
「そろそろ補強で勝たれたらよろしいかと」
我慢のできない阪神タイガースを渦巻く環境を痛烈に表したひとことだった。

しかし、またあの頃に戻るんじゃないかと思われながら就任した矢野燿大は見事に路線を継続し、チームを再建する。

近本光司、木浪聖也、齋藤友貴哉で94年組の補強。西純矢、井上広大、及川雅貴ら高卒選手の指名。
そして後世に語り継がれるであろう佐藤輝明、伊藤将司、村上頌樹、中野拓夢らの指名。
森木大智、桐敷拓馬、前川右京の指名。

もうドラフトが弱点だとは言わせない会心の指名の数々。

FAで西勇輝の獲得。勝負をかける時が来た。
メル・ロハスJr、ラウル・アルカンタラ、チェン・ウェインらの補強。
加治屋蓮、ロベルト・スアレスらの再生。
しかし、未曽有のパンデミックも重なり目標には届かなかった。
赤の他人から見ても見るに堪えない否定ばかり、戦っている選手はどうだったのだろう。
方針は間違っていないのに、勝ちきれない悔しさ。
追い打ちをかけるかのような再びの親会社介入による監督人事。

解説での奔放な発言、これまで再建に尽力してきた編成部や二人の監督の努力が踏みにじられてしまうんじゃないかと思ったこともあった。

岡田監督を持ち上げるために過剰に前政権を下げる人たちは今でも好きではない。
シーズン中、疑問をもつこともあった。
しかし、振り返ってみれば凡事徹底の戦い方は明らかにこれまでのタイガースになかったものを与えた。
再建に苦労する原因であり、危惧していたドラフトでは森下翔太、門別啓人、井坪陽生、富田蓮、野口恭佑など次世代の阪神タイガースを担うに相応しい面々が入団した。

阪神タイガースのドラフト1位は魔境である。
大山悠輔や近本光司は指名時歓迎されていたようには見えなかった。
佐藤輝明はメディアやファンらしきものから不当に叩かれてる。
打撃の良いドラ1投手は2年やそこらで野手転向しろと言われる。
はっきり言って異常だ。

しかし、そんな選手達は大きな幹になった。
森下翔太は先輩から学び、先輩への感謝を綴っている。
太く偉大な幹になり、今いる若手や今後入ってくる新たな芽が育つための土壌がある。
まだまだ強くなれる。
優勝した後、他球団のファンからドラフト戦略を褒められているのが答えだろう。
フロントの描いてきた生え抜きによる路線は確実に成功している。
弱みではない。ハッキリとした強みとして。

ドラフト上位、下位、助っ人、FA、戦力外
どんな入団経緯でも立派な一軍戦力を排出する投手育成力。
これが無ければ野手上位指名による優勝はなかっただろう。

中村・和田から始めた土壌整備に金本が身体の強さを与え、矢野が100%を越えたパフォーマンスを覚えさせ、岡田が80%スケールで勝ち切る術を教えた。すべてが繋がった優勝である。

まだ、ゴールではない。
もちろんCS 日シリの突破は目標だが、連覇を見据え、黄金期をここから作っていってほしい。

それができる土壌は作られている。
2023年の優勝で超変革が終わるわけではない。

ドラゴンボールはドラゴンボールZへ。
NARUTOは疾風伝へ。
ONE PIECEは新世界へ。 

物語はスケールをアップさせながらまだまだ続いていく。

次のチームも楽しみにしています。

優勝おめでとう。阪神タイガース。
優勝ありがとう。阪神タイガース。
優勝よろしく。阪神タイガース。


眩いの数々は
積年のを叶えるため
空を
久に
き続ける栄光を目指した。
がしい声をものともせず
実に戦った戦士たちは
地甲子園で
セ・リーグ勝を手にした。


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