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どうして英語ってこんなに難しいの?: (4)慣用句の覚え方

久しぶりにアメリカ映画を観ました。

イギリス英語圏で暮らしているので、自分にはアメリカ文化は全くの外国文化で親しみのないものです。

グローバルな世界ですので、ディズニー映画などで世界中にアメリカ文化が溢れているようにも見えますが、明確なソフトパワー戦略を持つアメリカの世界的巨大企業は「アメリカ的」なるものを視聴者に押し付けようとはしません。

アメリカ英語(英語の方言)は確かに英語ネイティブスピーカーの数では世界一ですが、英語の起源は歴史的にやはりヨーロッパにあり(ギリシアローマの言葉が英語の高等語彙を支配しています)、わたしにはアメリカ英語はアメリカ方言で、アメリカ映画を通じて見つけるアメリカ特有の文化的な社会現象は異国文化です。

イギリス英語もアメリカ英語もどちらも立派な英語。大阪弁も名古屋弁も立派な日本語。そんな程度の違いでしかないです。標準英語の基準はどこかと問われると、返答に窮しますが、英語の場合はイギリス式でもシンガポール式でもカナダ式でも、ある地域の正しい語法とアクセントを守っているならば、どれもスタンダードですよ。わたしはニュージーランド英語を話します。

さて、視聴したのは「The Notebook」という2004年の映画。

田舎町のノアNoahという青年と、お金持ちで都会から田舎に家族で避暑にやって来たアリーAllie (Allison) のラブストーリー。

ネタバレしたくないのですべては書きませんが、確かに生涯一人の女性を愛するという純愛は素晴らしい。でもアリーは上流階級のお嬢様という設定であるのに、なにかあるとところかまわず、キャーキャーと嬌声をあげるのです。こういう女性はわたしの好みではないという理由もありますが、いくら甘やかされて育ったお金持ちにせよ、あまりにはしたないし、全然上流階級的ではないですね。

英語でいうならば、ill-mannered、bad-mannered, improper, un-ladylike。

お母さんが隣にいれば、Use your manners なんていうでしょうか。

大人の前では違った風にふるまえるのかもしれませんがアメリカ風の成金なお金持ちなのでしょうか。

文化教養を身に着けた(身に着けようとしている)淑女には思えませんでした。学校でラテン語やらフランス語やらピアノレッスンなどに追いまくられている、大学入学前に可哀想な高校生の女の子が羽目を外しているともいえますが。

いずれにせよ、貧乏な家庭出身の誠実な青年とお金持ちの世間知らずのお嬢様とのラブストーリーですが、題名の「The Notebook (きみに読む物語)」のノートブックとはなんであるのかは見ての楽しみ。

英国映画とはだいぶん違うなあという印象と違和感を非常に持った映画でした。英語会話には難しい表現などは特に出てこないので、英語を学習されている方にはお勧めです。

Spill the beans

映画を見ていて、久しぶりにこの慣用句イディオムに出会ったので、書いておくといいなと思い、こうして筆を執っているのですが(コンピューターに向かっているのですが)この言葉はよく使われるのですが、自分には面白い表現です。

一説によると、古代ギリシアの市民による選挙で、投票するのに、それぞれの候補者には色違いの豆が与えられていて、投票者は白い豆や黒い豆やミドリの豆を投票箱に当たる瓶に入れることになっていたのだそうです。

ですので、色違いの豆がたくさん入った瓶をぶちまけるとは、本来は秘密であるはずのことを思いがけなくばらしてしまう、という意味で「秘密をばらす」というのが Spill the beansなのです。

お父さんがノアのことを(婚約者に)ばらしてしまったのよ

というのが映画で使われていた表現でした。このように、実際に慣用句が映画の中などで使われているシーンにでくわすと、間違いなく覚えることができますね。

単語帳などで覚えるのではなく、Netflixなどで英語の映画を観ると、英語学習に非常に役立つのはこのためです。

そしてさらに暗記を役立たせる方法があります。それはグーグル画像検索。

わたしは面白い慣用句に出会うと必ず、グーグル画像検索に見つけてきた慣用句を書けることにしています。

こういうのが、本来のSpill the beans
また投票結果が出たぞ!という風にも。

でも現在での本来の使い方は

Spilling the beans 

こういうものですね。

検索ではこういうのも出て来て、「秘密をばらす」ではなく、(トマトソースの中の)煮豆は嫌いなので、文字通りに「豆をぶちまいてください」なんてミームもあります。こういうのが見つかるのがわたしには面白い。

An Elephant in the room

他には、最近検索した言葉では、これが面白かったですね。

巨大な象が狭い部屋の中にいる。でも誰もそのことに言及しようとしない。

つまり大きな問題があるにもかかわらず、誰もそのことを言い立てない、言いたくない。The Elephant in the roomとは誰も口にしない公然の秘密ですね。

火の車の経営の会社の借金のこととか。世界一のお金持ちの国の国積とか。

映画を見てこれに出会ったことはないですね。見つけてみたいものです。

アンデルセンの童話「裸の王様」と同じ。でも童話は子供が秘密をばらしてしまう。そして日本語の「裸の王様」は、秘密にされている対象を非難する言葉。英語にはこういう表現はないですね。

英語慣用句の覚え方

というわけで、新しい英語慣用句に出会ったならば(出会わないならば、English Idiomとか検索してみましょう)画像検索。

インターネット上にはミームMemeと呼ばれる画像がやまほどあり、いろんな方が楽しい引用や慣用句などの画像を作ってくれています。そういうのを眺めているのはとても楽しく、絵付きで言葉を覚えると、まず忘れません。非常に役立つ語学学習法です。英語以外でも有効ですよ。

慣用句というのは、文化に根差したものなので、出会ってどのように使われているのかがわからないと、どんなにその言語を使いこなす能力があっても理解不能です。ですので地道にひとつひとつ覚えてゆくしかないですね。

日本に堪能な外国人に「泣いて馬謖を斬る」という表現を使っても、「馬謖」とはなんであるのか分からないと全く意味をなさないのと同じです。日本人でも理解されない人がいますよね。

豆関連で、「七歩の才」という言葉があります。

横山光輝「三国志」より

こういう慣用句をたくさん文章に中に使えると、我々の書く文章も一ランク上のものになるのです。わたしも英語でたくさんの慣用句を使えるようになりたいなと日々模索しているところです。

「七歩の才」は英語に訳しようがないですね。これも文化の問題。古代中国の魏の曹植に匹敵する才を持った英語詩人と言えば誰でしょうか?

英語の詩を書くのは大変です。英語の正しいリズムに即した詩をいつの詩か書いてみたいものです。

ほんの小さなサポートでも、とても嬉しいです。わたしにとって遠い異国からの励ましほどに嬉しいものはないのですから。