【MLBドラフトレビュー】3年後...2020ドラフトレビューSEA編

目ぼしい選手を5人ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
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1(6).エマーソン・ハンコック(Emerson Hancok):RHP:6-4/213:Georgia:-:$5.74M

90マイル中盤の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で98マイルをマーク。最大の武器は速球のコマンド。狙ったコースへとピンポイントで投げ分け、打者をきりきり舞いにさせる。スライダー、チェンジアップはクオリティも高く、いずれもストライクへと投げ込めるボール。体格も申し分なく、スターターとしての活躍が見込まれる。

成績

 21年のプロデビューはA+からスタートし、防御率2点台と好投。シーズン途中にAAに昇格しますが、故障でシーズンエンド。結局12試合の登板のみに終わりました。
 翌年もILスタートとなりましたが、1ヵ月で復帰しフューチャーズゲームにも選出されます。ただ、アマチュア時代のような相手を圧倒するような投球内容ではありませんでした。奪三振数は露骨に減っており、被本塁打も多くなっていました。
 AAAスタートとなった今年は防御率自体は悪化したものの、プロではキャリア初となる100奪三振をマーク。打者有利なリーグにおいて被本塁打も昨年から半分近く減らすことに成功しました。
 シーズン途中にはメジャーデビューも果たし、順調にステップアップしていました。しかし、メジャー先発3試合目の途中で肩を痛めると、そのままシーズンアウトとなりました。
 故障自体は今オフにも完治する見立てのようですが、あまり楽観的には見られません。球速はドラフト当時から数マイル遅くなっており、加えて今回の肩の故障とさらに遅くなる可能性があります。
 アマチュア時代のような剛速球を武器に相手をねじ伏せる投球を期待するのは難しいかもしれません。


2(43).ザック・デローシュ(Zach DeLoach):OF;右投左打:6-2/200:Texas A&M:-:$1.73M

ソフモアまで低打率にあえいでいたが、昨夏のケープコードで足を上げるのをやめたことでタイミングを外されにくくなり、安定してアベレージを残すことに成功。パワーツールは平均かそれ以上のものを有しており、シーズン2桁HRは固いだろう。スピードは平均以上。アームと守備は派手さはないがソリッド。

成績

 大ブレークを果たすはずだった20年に大学・マイナーのシーズンが中止となりましたが、大学での短いシーズンでその片鱗を見せ2巡目指名を勝ち取ります。
 プロではようやくその実力をフルシーズンで発揮することとなり、現時点では2巡目指名に見合う成績を残しています。
 デローシュの成績で特筆すべきはやはり四球の多さ。過去3シーズンで60四球を下回ったことがなく、出塁率も.369が最低と高水準で推移しています。
 アプローチ以外の部分でも打率が極端に低くなったシーズンがなく、毎年2桁HRをクリアするなど打撃に関してはメジャーに上げても通用するレベルにあると思われます。
 にもかかわらず、AAAスタートとなった今年は最後までMLBに昇格することなくシーズンを終えることとなりました。好成績を残しているのにメジャーデビューを果たせないのは守備に原因があるかもしれません。
 アマチュア時代からそれほど守備は上手い方ではなく、LFがメインポジションになりそうですがLFで使うほど打撃で大きなプラスを生み出せないと考えられているのかもしれません。
 ほぼ同年代のケイド・マーロウが先にメジャーデビューを果たしたり、トレードでドミニク・キャンゾーンが獲得されたりとデローシュの出番は後回しとなっています。
 ただ、目下のライバルであるキャンゾーンはデローシュと同じく守備が上手くなく、打撃でもデローシュよりも明確に上回っている部分はないため来年の夏頃は立場が入れ替わっていてもおかしくはないでしょう。

 

CBB(64).コナー・フィリップス(Connor Phillips):RHP:右投右打:6-2/185:McLennan CC:-:$1.05M

90マイル中盤の速球とカーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は高校時代から3~4マイル近くスピードアップしたが、その分コントロールも悪化。パワーカーブの評価が高く、アウトピッチとして優秀。チェンジアップも投げるが発展途上。フルエフォートかつファンキーなデリバリーは故障が危惧される。

成績

 プロデビュー以来毎年100奪三振以上を奪っており、特に過去2シーズンは150奪三振以上と驚異的な数字を残しています。
 プロデビューイヤーながらも100奪三振以上をマークしたことが目に留まったのか、21年シーズン後にはジェシー・ウィンカーとのトレードのPTBNLとしてCINに移籍しました。
 アマチュア時代も球速が上昇している途上にありましたが、プロでも速くなり続け現在では最速で99マイルをマークしており、コンスタントに90マイル後半のスピードを出す馬力も有しています。この速球は速いだけでなく容易に空振りを奪うこともでき、奪三振数を増やすことに大きく寄与しています。
 また、アマチュア時代はあまり使っていなかったチェンジアップの改善にも取り組み、現在では左打者から空振りを奪う有効な球種へと成長を遂げました。
 一方で、アマチュア時代から改善されていない課題もあります。コントロールの悪さは常につきまとっており、シーズンBB/9が5を下回ったことがありません。
 早い回に四球を連発して降板したり、好投していても球数がかさんで失点は少なくとも早めに降板したりと試合を作るという観点からは好ましいピッチングスタイルではないでしょう。
 今年はメジャーデビューも果たしましたが、四球を出すペースは変わっていません。しばらくはスターターとして試されることになると思いますが、最終的にはブルペンに回ることになりそうです。


3(78).ケイデン・ポルコビッチ(Kaden Palcovich):2B:右投左打:5-8/180:Oklahoma State:-:$793K

小柄ながらもしっかりと振り切るパワフルなスイングが魅力。かつては両打だったが、より真価を発揮できる左打席に集中。短大からNCAAディビジョンⅠに移った今年は、少ない試合数ながらも実力を見せた。小柄でストライクゾーンが狭いこともあって四球は多め。本職はIFだが、OFでもいい動きを見せており、どちらでもマイナスにはならないだろう。

成績

 プロデビューイヤーとなった21年のA+では58試合で10HR&OPS.920と好成績を残しますが、以降はAAで成績が伸び悩んでいます。プロ入り後は再び両打に戻したようです。
 アマチュア時代と変わらず四球を多く選ぶことに成功しており、過去3シーズンの通算のISOは1割以上をマークしています。ただ、AAでは打率を残すこができておらず、せっかく四球を多く選んでもそもそもの打率が低いため出塁率も伸び悩む結果となっています。
 パワーレスというわけではありませんが、それほど大量に長打を量産できるタイプでもなく打率が伸び悩むと打撃成績が大幅に落ちてしまうため現状ではメジャーまでの道のりは遠そうです。


5(137).テイラー・ダラード(taylor Dollard):RHP:右投右打:6-3/195:Cal Poly:-:$406K

90マイル前半の速球とスライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速でも93マイルと球威に欠けるが、コマンドに優れていて失投が少ない。アウトピッチはスライダーだが、変化球全般にそれほど高い評価を得られていない。ソフモアまでリリーフだったが、今年に先発転向。持ち前のコマンドを武器に難なくこなしていた。

成績

 プロ入り後2シーズン連続で100イニング以上をクリアし、ワークホースぶりを披露しました。特に22年はAAでフルシーズンをクリアして144イニングを投げ防御率2点台とイニングを消化するだけには終わりませんでした。
 ただ、今年は開幕早々肩の故障でAAAで3試合のみの登板に留まりました。
 スペックはほとんどアマチュア時代と変わっていませんが、平均球速はアマチュア時代より速くなっているようです。また、評価の高くないカーブやチェンジアップの割合を減らし、ブラッシュアップされたスライダーを多く使うことで好成績を収めています。
 既にAAAに到達しており、来年にはメジャーデビューを果たすことになりますが定着できるかは微妙なライン。
 速球の遅さが足を引っ張ることになりそうで、被長打数が増える可能性は高そうです。スライダーがハマりさえすればメジャーでもシーズンを通してローテーションを回すことができそうですが、昇格後はしばらくメジャーとマイナーを行ったり来たりすることになるのではないでしょうか。


総括

 1巡目のエマーソン・ハンコックは今年メジャーデビューを果たし、順調なキャリアを歩んでいるようにも見えますが、アマチュア時代から3マイル以上球速を落としているのは不安材料。それに加えて肩の故障もあり、さらに球速を落とすのではないかと心配になります。
 ただ、球速は落としてしまいましたが成績を落とすようなことはしておらず出力が足りないなら足りないなりのピッチングスタイルでそれなりの成績を残し続けていることも事実。若いながらもプロで生き残るピッチングスタイルを見つける柔軟さを武器に、息の長い選手になるのではないでしょうか。
 もう1人のメジャーデビュー組のコナー・フィリップスはコントロールの悪さを克服することなくメジャーへと上がり、やはりコントロールで苦しんでいます。CINにとってはPTBNLとしてはかなりの拾い物になりましたが、無理にスターターにこだわり続けるのは本人にとってもチームにとってもよくない気がします。
 ドラフト当時個人的に高く評価していたザック・デローシュは各媒体で厳しい評価を受けていますが、メジャーチームのLFは割って入る隙がまだまだある状況。FAで補強される可能性は高いと思いますが、来年こそはメジャー昇格を果たしてほしいものです。


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