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第98話・2019年 『熊本に22年ぶりのスポットライト』

伝来100年を1年1話で振り返る企画も残り10話を切りました。記憶に新しい身近な話題が続きます。引き続きご愛読ください。取材と執筆は本誌編集部。(文中敬称略。国名、機関・組織名、チーム名、会場名などは当時)

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11月30日から12月15日にかけて、第24回世界女子選手権が開催された。1997年の世界男子選手権(第76話参照)に続き、熊本が開催地に。

2016年からウルリク・キルケリー体制となった日本女子代表・おりひめジャパンにとって、東京オリンピックと並ぶ大きな目標がこの大会。地元大会で「東京」へと弾みがつく結果が求められた。

参加24チームが6チームずつ4組に分かれて戦う1次ラウンドから、各組上位3チームがメインラウンドに進む方式。メインラウンドは1次ラウンド同組の2チームとともに別組の1~3位と6チームずつの2組に分かれる。同組の2チームとの対戦成績は持ち越され、メインラウンド上位2チームずつの4チームが準決勝へと進む。

日本は1次ラウンドでロシア、スウェーデン、アルゼンチン、中国、コンゴ民主共和国と同じ組に入ると、初戦で曲者のアルゼンチンをしっかりと下して、コンゴ民主共和国、中国からも白星を手にして3位でメインラウンドへ。

一方でロシア、スウェーデンとの対戦では力の差がクッキリと現れる結果で敗戦し、このあとに不安を残した。

メインラウンドではC組のスペイン、モンテネグロ、ルーマニア、D組1・2位のロシア、スウェーデンとともにグループⅡに入ると、初戦のモンテネグロ戦、次戦のスペイン戦は、キルケリージャパンの代名詞とも言えるアグレッシブなDFで接戦を繰り広げる。

しかし、細かいところでのミス、勝負所での決定力の差などが積み重なり、モンテネグロ戦26-30、スペイン戦31-33と力及ばず。4敗(1次ラウンドのロシア戦、スウェーデン戦の結果を持ち上がるため)で最終戦のルーマニア戦を迎えた。

ここまで全敗同士の一戦は、ルーマニアがややメンバーを落としていたこともあって、終始日本優位で進み、37-20と大差での決着に。

待望のメインラウンドでの白星を手にして、全体10位で大会を終えた。

決勝に勝ち上がったのはオランダとスペイン。どちらが勝っても初優勝、29-29と同点で迎えた後半終了間際に珍しいプレーが起こる。

スペインのOFが失敗したあと、残り6秒でオランダGKのテス・ヴェスターが速攻のために前方へとスローしたボールを、スペインのアイノア・ヘルナンデスがジャンプしてブロック。このボールをスペインのアレクサンドリーナ・カブラルが拾って千載一遇のチャンスが到来したかと思われた。

しかし、エルナンデスがブロックした際に、彼女の腕がオランダのゴールエリア内に入っていたことから、「GKが投げたボールは、ゴールラインエリアを完全に通過するまで触ってはならない」、「試合残り時間が30秒を切って、相手の得点を妨害するようなプレーをした選手にはレッドカード、さらに相手チームに7mTが与えられる」というルールが適用されて、逆にオランダに7mTが与えられることに。

この7mTを、今大会得点王となったロイス・アビンがスペインゴールに見事ねじ込み、30-29としてオランダが悲願の初優勝を果たした。

大会事務局が大会後に発表した今大会全96試合の観客数は31万5748人。目標としていた30万人は超え、大会関係者は胸をなで下ろした。

大会前、東京・国立代々木競技場(代々木第一体育館)を会場として「東京オリンピック2020」組織委員会によるプレイベント(女子4ヵ国対抗)が開かれた。

年末になって、中国を発端とする新型コロナウイルスの感染が徐々に話題となり、国際スポーツ界にも少しずつ影を落とす予兆がのぞき始めた。

第99回は10月31日公開です。


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