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今こそ日本人駐在員システムにトランスフォーメーションを /中村ジャック勝裕(Asia Identity Co., Ltd. CEO)

中村ジャック勝裕さんプロフィール

愛知県常滑市生まれ。上智大学外国語学部卒業。タイ在住。
2001年ネスレ日本株式会社に入社。
2005年株式会社リンクアンドモチベーションに転職し、人材育成、組織変革のプロジェクトを担当。
2010年、株式会社グロービスに転職し、シンガポールへ赴任。東南アジアでの人材開発プロジェクトを手掛ける。
2014年、東南アジア発の組織人事コンサルティング会社として、Asian Identity を設立し、同社代表に就任。現在はタイを拠点としながらアジア各国でのコンサルティングや講演活動を手がける。バンコクにおいてタイ人向けビジネス漫画「Su Su Pim! (がんばれピム!)」を執筆、販売。

チュラロンコン大学(タイ)、泰日工業大学 ゲスト講師
LEGO Serious Play 認定ファシリテーター
ORSCシステムコーチング 応用コース終了
Hofstede Insight Organizational Culture (組織文化)認定ファシリテーター

(四方)
こんにちは!スパイスアップ・シンガポールの四方健太郎です。

「人事」のHRと「トランスフォーメーション」のXを掛け合わせて「HR-X」と名付けた当番組は、「トランスフォーメーション人材で組織を変革する」をスローガンに、「人事」と「トランスフォーメーション」、つまり「変革」というキーワードで様々な取り組みをしているゲストをお迎えしてお話を伺っていきたいと思います。

今回のゲスト「Mr.X」には、前回も登場していただいたタイ・バンコクをベースにしながら、アジアの日系企業を中心に人材育成や組織開発コンサルティングサービスを提供する、「Asian Identity社の中村ジャック勝裕さんをお迎えしました!

改めまして、こんにちは!

(中村さん)
こんにちは、よろしくお願いします!

(四方)
この間の話が盛り上がってしまって、大事な話を一つプラスしてお伺いできればなと思っています。
ジャックさんはアジアはトータル何年になるんですか?

(中村さん)
僕はですね、9年になると思います。

(四方)
9年ですか!
私もシンガポールが丸6年になって、中国には2年半くらい居たのでジャックさんより少し短いですね。
現地の日本人の仲間が非常に多くできまして、経営者仲間もいれば、現地採用になったこともありますし、駐在のような形にもなったことがあるので駐在員という形で現地法人のマネジメントをされている方々にたくさんお会いしてきましたが、このコロナの状況でシンガポールもそうですしタイもそうだと思うのですが、例えばインドですと感染の状況が酷いようで、たくさんの日本人が帰国していると聞いています。
私自身もシンガポールのマンションやコンドミニアムの中で日本人のご家族がいたり、ビジネスパーソンの方々がいるんですけど、もう家の中から出られないという中でシンガポールの家の中から現地法人をオンラインでマネジメントしているなんていう不思議な状況が起こっていて、それなら日本で良いじゃん!となるのですが、個々の事情があるのかすぐさま帰国はされない、でも早い会社はさっさと帰国していたりもするという状況で冷静になって考えてみると、この新しい時代の中で、駐在員は必要なのか?という議論が巻き起こってきているのですが、ジャックさんはどのようにお考えでしょうか?


ウィズコロナ時代、日本人駐在員は本当に必要なのか?


(中村さん)
そうですね、ここ数ヶ月色々な議論を戦わされて、もう一気に減らせるよね!と言っている人もいれば、なかなか難しいのでは?と言っている人もいて、駐在員の数は東南アジアでタイが一番多いと思うんですけど、8月9月10月くらいで遅れていた人たちはバァーと来たんですよね。
現状としてはコロナだから駐在員の数を削減させました!というよりはちょっとスタンバイしてもらっていた人たちを結局は呼びました、というのが実態にはなっていて、すぐさま減っていくわけではないと思います。
以前noteにも書いたのですが、長期的には減っていくべきじゃないかというトレンドに拍車がかかっているのかなと思っています。
少しずつ減っていく、ただ単に減っていくのではなく駐在員がやっていたことの代わりを誰かがやらなければいけないわけで、出口が必要になるので出口を設計しながらにはなりますけど、駐在員を減っていく、減らしていくべきだという風に私は思っています。

(四方)
昔から現地関連法人のマネジメントの現地化なんて言われて久しいわけですけど、なかなかそうならないというのはどんな課題、問題があるからなのでしょうか?

(中村さん)
大きくは3つあって、1つ目は一番大事なのですが現地人の活躍を奪ってしまうということですね。
日系企業では偉くなれないということがあり、以前の東南アジアに工場建てて、安い労働力でボタンを押させておけという頃までは良かったのですけど、今はご存知の通り、タイ人でもすごい優秀な人もいますけど、そういう人が日系企業で働くなんて、、、と見られているのは、人材戦略上のマイナス以外何物でもないというところですね。
2つ目は、東南アジアはモノを作る場所だったのが、売る場所に変わってますので、そうすると以前はワーカーを雇えば良かったのが、今はマーケティングや営業の人をそれなりのポジションとして持ってこないといけないとなると求める人材像が全然変わってきますので、そうすると現地のネットワークを持っていないとできない営業のトップは日本人にはできませんから現地人にやってもらうというわけですね。
3つ目はやっぱりコストが高いということですね。
駐在員は色々なコストが掛かりますので、減らしたいよねというところがより待ったなしになっているのだと思います。
この3つの中で特に1つ目ですね、優秀な人が入って来てくれない状況になっていますので、それが問題だと思います。

(四方)
そうですよね、シンガポールとかタイにいると日本のことが好きな人って結構多くて、それこそラーメンが好きとか、寿司が好き、アニメが好きだとかこういう人は街中で物凄い見かけるのですが、日本の会社で働きますか?と聞くと渋い感じのリアクションをするなという印象なのですが、ここは本当に時代が変わったんだなと思います。

(中村さん)
僕が東南アジアにいるたかだか9年でも大分変わったと思います。
四方さんも感じているかもしれませんが、ちょっと危機感がありますね。

(四方)
中国はこれからもっと変わっていくでしょうし、今までのやり方が通用しないんじゃないかっていうのが、コロナによって炙り出されて明るみに出て加速するんじゃないかって話ですが、現実その方向に行かねばならぬとなった場合、日系企業としては得意じゃない、うまくできないなんて言っている中で、具体的にどういう風にしたら解決に向かうんでしょうか?


どうしたら解決できるのか


(中村さん)
駐在員の任期を長くするというアクションが良いのではないかと思っています。
優秀な駐在員が来れば結構良いんですよ。
あ、この人さすがだな、日本本社から来て日本人て優秀だなと思ってもらえる人が来れば、現地の優秀な人もこの人の下で働きたいってなるし、優秀な日本人であれば外国人を上手に活かして現地の経営を伸ばしますから問題はないのですけど、「とりあえず行ってこい」の赴任がまだまだ多いんですよね。
特にタイは駐在員の人数が多いので、色々なローテーションの中でとりあえず行きますみたいな人がいて、海外に行ったこともなければ興味もありませんみたいな人まで来ちゃうというのは本人にとっても不幸ですし、その人の部下の現地人も不幸なわけですよ。
通常任期は3年とか5年が多いですけど、それを2倍の任期にすると人数は半分になりますし、かなり厳選しますよね。
なので当然ながら質は上がるし、かなり気を付けて赴任をさせると思います。
そして現地でコミットして、より現地に合うリーダーシップやマネジメントを発揮していくことも増えると思うので、それはいい傾向なんではないかなと思っています。

(四方)
任期を長くして、人を絞るので人選が非常に重要だということですね。

(中村さん)
任期が長い会社ほど上手くいっている傾向にあると思います。
それはシンプルな考え方ではありますけど有効なんじゃないかなと思いますね。
そうはいってもリモートでマネジメントしていくことが増えると思うんですね。
東南アジアのことを分かった人がリモートでマネジメントした方がいいと思っていて、避けた方がいいのは現地のことを全然分からないのに、はい私がタイの担当になりましたと言って日本からリモートでマネジメントすると悲劇が目に見えていますよね。
仮に英語ができたとしても、やっぱり遠隔からマネジメントされるだけでも嫌じゃないですか。
なので現地のことを分かっていますよ、現地の文化も分かっていますよとリスペクトの姿勢があればいいので、例えば赴任経験者をリモートでアサインするとか、一旦赴任をさせて関係をしっかり作ってから残りの任期は日本からリモートする形であればうまくいきそうな気がするのでリモートマネジメントでも問題ないと思うんですけど、ある程度やらせ方ややる方の意識やスキルをキチッと整えてからやれば打率が上がってくると思うというのが2つ目です。

(四方)
僕も考えている中でゼロか100じゃないのかなとも思っていて、仮にタイ法人のマネジメント担当者が日本にいたとして、ある程度の出張をして人間関係を作って日本に戻ってくる形であれば、例えば家族を連れていく必要がなくなるかもしれませんし、この辺のフレキシビリティがあれば優秀なタレント人材は日本の中でもいるので、こういうやり方もアリなんじゃないかなと思います。

(中村さん)
そうですね、そうだと思います。

(四方)
3つ目はいかがでしょうか?

(中村さん)
最後の3つ目はちょっと切り口違うのですが、現地採用日本人の活用だと思っています。
現地採用日本人って海外で仕事をしたことがない方はイメージ湧かないかもしれないのですが、駐在ではなくご自身の意思で海外に渡って現地で勤めている方って結構たくさんいらっしゃっいます。
そういう方々って優秀な方もたくさんいて、現地のこともよく分かっていますし、現地の言葉を覚えていたりしますし、何よりも現地にコミットする姿勢がありますので、活躍する素地を備えているので、ブリッジパーソンというか駐在員とローカルスタッフの間に入って上手に橋渡ししたりとか、駐在員と全然変わらないようなリーダーシップを発揮していたりする方が多いのですけど、処遇が低いんですよね。

(四方)
現地採用になってしまうからですよね。

(中村さん)
それがキャリア形成に繋がりづらく、どこかのタイミングでライフプランを考えるときにやっぱり日本に帰ろうとか、駐在員の方はすごくいいお給料をもらっているので、そのギャップに色々な想いが湧いてきてしまうという昔からある格差問題があって、これはやっぱり出しているバリューに応じた処遇にしなければいけないのですが、処遇制度を作っているのは現地法人側で、現地法人側に人事制度を作るノウハウや権限がなかったりするとそのままになったりしているケースがあって、そんなところをサポートしたりもするのですけど、現地採用日本人の処遇を改善していけばいいんじゃないかと思っています。
優秀な方がそこにいるんだからアサインの仕方、処遇を見直していくいうことが3つ目になります。

(四方)
それはすごく分かります。
中国に居たときは、駐在のステータスをやった後に現地採用に切り替えたので、給料がドカーンと下がるんですよね。
そんな中でやっている仕事はほとんど変わらないのに、今度また日本から新しい駐在員が来て、残念ながらそんなに高いパフォーマンスを出しているようには見えないのだけど、給料は自分の2倍とか貰っていたり、すごい良い家に住んでいると、おかしいなこれと思ってモチベーションに影響がありました。
比較対象が見えなければ全然問題ないのですが、見えてしまっているのでなんか納得いかないようになってしまうのですが、その1つの方法がこういう人は今まであまりいなかったので、日本の人事制度外ですし、現地からしても今まではいなかった異分子なので、ひょっとしたら現地側の制度に新しい給与テーブルが必要になるでしょうね。

(中村さん)
駐在員として赴任して、あ、俺シンガポール好きだ!タイ好きだ!こっちの方が実力を出せる!と感じる方って少なからずいらっしゃるんですよね。
そういう方がこのまま現地で勤めたいと思っても報酬の面で諦めてしまうことが多いと思うんです。
そこがもう少しあれば、海外でリーダーシップを発揮できる日本人って実はもっといると思うんですよね。
日本のビジネスってまだまだ捨てたもんじゃないぞ!と海外に思わせる上ですごく重要な部分だと思っていて、ここはなんとかしたいなって思いがあります。

(四方)
これ見出したいですね。
僕たちも業界上、人材のエージェントさんとお付き合いがありますけど、やっぱり日本人の横移動って言うんですかね、A社に勤めているんだけど辞令が出て帰国しないといけないときに、自分としてはここに残りたいけど、横移動して現地で別の仕事を探そうとすると、ものすごい待遇が悪くなるので、さすがにこれでは、、、となりますので同じ条件は無理だとしてももうちょっと上げてスイートスポットが見つかったら転職しなくてもよくなるかもしれないし。

(中村さん)
そうなんです。
僕自身もそれで自分の市場価値を聞いたら、現地採用だとガクンと下がってしまったので仕方なく起業したのですけど、キチッとしたポジションが与えられる環境というのが、企業が駐在員を送り込むコストが高まっている今こそトランスフォーメーションのチャンスだと思うんですよね。

(四方)
そうですよね。
日本国内でも正社員をずっと採り続けることが良いのか、はたまたリモートの世の中になってきているので、プロジェクト単位で色々な働き方があって、この指止まれ!で集まって、ミッションを達成したら解散する形は組織としてもこのようなリソースも考えなければいけないし、個人としても何かの組織に従属するのではなくて、自分で何かスキルを持ってあっちで仕事したり、こっちで仕事したりとジョブ型の究極かもしれないですよね。
会社を渡り歩いて良いんじゃないかとか50%ずつ使っても良いんじゃないかとか、こういう風になってくるような気がします。
もっと制度そのものにフレキシビリティがあれば、駐在員の制度だけではなくて色々な可能性が出てくるじゃないかと思いますね。

(中村さん)
私もそう思います。

(四方)
この話でも良い時間になってしまいました。
今回もまたまた為になるお話をありがとうございました。
コロナが収束したら、バンコクへ飛んで行ってお会いして直接お話をしたいなと思います。

(中村さん)
シンガポールにも行きます!

(四方)
さて、HR-Xではこれからも「人事」と「トランスフォーメーション」というキーワードで、様々なゲストをお呼びしてお届けしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

それでは今回はこの辺でーーー!どうもありがとうございました。

四方健太郎(株式会社スパイスアップ・ジャパン取締役/
Spice Up Singapore PTE LTD Managing Director)
立教大学を卒業後、アクセンチュア株式会社の東京事務所にて、主に通信・ハイテク産業の業務改革・ITシステム構築に従事。2006年より中国(大連・上海)に業務拠点を移し、台湾・香港を含む大中華圏の日系企業に対するコンサルティング業務にあたる。2009年にフリーランスのコンサルタントとして独立。独立後、1年かけてサッカーワールドカップ2010年大会に出場する32カ国を巡る「世界一蹴の旅」を遂行し、経済界社より『世界はジャパンをどう見たか?』を上梓。
現在、東南アジアやインドでグローバル人材育成のための海外研修事業に従事。株式会社スパイスアップ・ジャパン取締役。シンガポール在住。

株式会社スパイスアップ・ジャパン
 公式ウェブサイト https://spiceup.jp/
 公式フェイスブック https://www.facebook.com/SpiceUpJP/

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