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目からビーム!95 ケンカのマイ・ウェイ(私のやり方)

 音楽界の悪童といえば、ミック・ジャガーやシド・ビシャスの名がまず思い浮かぶが、彼らのはるか大先輩であるフランク・シナトラもかなりワルとして知られていた。
 しつこい女性記者にキレたシナトラが、「売春婦!」と暴言を吐いたことがある。これが大問題になるや、さすがのシナトラ御大も新聞に謝罪広告を載せざるをえなくなった。謝罪の相手は女性記者ではない、全米の売春婦様である。「あなたたちは性を生業にする自立した誇り高き労働者である。あのようなジャーナリズムの吸血虫(女性記者のこと)と一緒にして名誉を傷つけたことを心よりお詫びいたします フランシス・A.・シナトラ」。
 そして、“お詫びの印”に地元NYの売春婦たちを自身のコンサートに無料招待したという。
 逸話の多い人だけに、いささか尾ヒレのついた話かもしれないが、これを聞いたときは、「なるほどケンカというのはこういうふうにやるんだ」と素直に感心したものである。

マフィアからJFKまで顔が広かった。若いころはよく記者をぶん殴って逮捕された。

 さる番組で、八代英輝弁護士が「日本共産党は未だ暴力革命を党の綱領としている」と発言、共産党の激しい抗議を受け、後日同番組内で発言を撤回謝罪し「私の認識は閣議決定された政府見解に基づくものでした」と党綱領云々は勘違いであったことを認めた。収まりのつかない共産党志位委員長は、「謝罪になっていない」「共産党差別だ」と自身のツイッターに投稿し、さらなる謝罪を求めているという。
 とはいえ、志位委員長が騒いだおかげで、「共産党は暴力革命方針」が政府見解であるということが広く知れ渡る結果になったし、ネット上では、共産党が起こした過去のテロや騒乱事件を暴く投稿があふれ炎上している。とんだ藪ヘビといったところだ。
 八代弁護士の一連の発言が計算づくのものだったとしたら、この人、なかなかのワル、もとい、ケンカ上手。一方、志位委員長のケンカ下手ばかりが目立ったものだ。
 藤山寛美の楽屋には黒い鞄をもった借金取りがつめかけるのが常だったという。だが、最後は決まって借金取りを笑って帰したというのだからすごい。寛美師もまた、彼流のやり方でケンカというものを知っていたのだ。
闘わずして勝つ、まさにこれこそが平和的解決法ではありませんか、志位委員長。

初出・八重山日報

全盛期はソフト帽がトレードマーク。
この人もちょっと雰囲気が似ている。チョイ悪の美学。


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