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雑草コンポストの事始め


<雑草コンポストの事始め>

農業について勉強を始めると必ず最初にチッソ・リン・カリという必須・三大栄養素を学ぶことになる。さらに他にも野菜が育つ上で必要な栄養素はカルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、ホウ素、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデン、ニッケル・・・「ああ!もう嫌だ!」って頭が痛くなるくらいたくさん出てくる。

理系科目が好きだった人や農業大学校を出た人ならまだしも、多くの人が頭を抱えて本を閉じたくなる。(実は農家も)だから、JAやホームセンターには精確に計算された優良な肥料が売られている。そんな面倒臭いこと計算するのも嫌だし、わざわざ肥料を買うのも嫌だって方は多いだろう。

「野菜に必要でかつ完璧な栄養素はホームセンターにはない」
ではいったいどこにあるのか。その答えは簡単だろう。植物にある。
たとえ野菜が人間が育種したものであろうと、植物に他ならない。なら植物の中に野菜に必要な栄養素は全て揃っている。これは成分分析なんかしなくても、間違い無い。

自然遷移の法則で話してきたように、雑草は繁栄し枯れることで森林の下地を作る。自然農では生えてくる雑草を刈り取っては畝の上に敷くのは彼らの命を大地に還し、それを野菜の養分にするためだ。本来なら1年草が枯れて倒れるとことを、人間が刈り取ってあげて、少しばかり早く大地に還ってもらう。

つまり、その畑に生えてくる雑草には野菜を育てる栄養素が全て詰まっている。だから定期的に雑草を刈り取って積み重ねて、その都度畑の土を被せる。これを夏の間ずっとしていくと、春には最高の雑草堆肥が完成する。これを私は育苗用土に利用する。これで作った土を育苗用土にすると定植時の活着がとても早い。なぜなら土着菌が豊富に含まれていて、育苗用土と畑の土がほとんど一緒だからだ。野菜にとって地上の環境は変われど、大切な根の環境はほとんど変わらないから、活着がとても早くなる。根は意外と臆病だし、繊細だから幼い時からのユジンがいると心強い。自家製育苗用土の最大のメリットがここにある。

その土地・気候に適した土着菌は土中内にもいるし、植物の茎葉にも付着しているから、何か新しい微生物資材を投入する必要はない。米ぬかや油粕、籾殻薫炭などを混ぜ込むことで完成までの時間を短縮することもできる。また定期的な切り返すも同様の効果があるが、私はしたことがない。秋の終わりには何かしらの屋根をつけてあげて、冷たい雨や雪が入らないようにすることも分解を早める。

雑草コンポストは畑の端っこに置いておくと、そこに益虫が住み着き、越冬場所としても利用するので、ビオトープとして畑の生物多様性にも貢献してくれる。

また土と草の間にサンドイッチのように生ゴミを入れて、生ゴミコンポストとしても利用できる。その場合は生ゴミに空気が触れないようにしっかりと草と土を被せる。そうすれば、ハエがたかることも腐敗臭が漂うこともない。ミミズがどこからともなくやってきて、分解を進めてくれるだろう。生ゴミを入れる場合は獣があさりに来る可能性が高いので、木枠やフェンス、バケツ型容器を利用したい。

一般的に育苗用土向きの植物というものも紹介されているがあまり気にする必要はなく、近くに耕作放棄地や草刈りが大変な法面などがあれば、積極的に草を刈って利用しよう。地域の草刈りがあれば、そのときにもらってくるのもアリだ。地元の人にやっかいな雑草が無料の資源であることが分かってもらえる良い機会になる。江戸時代の農書には茅場や入会地の草刈りの争奪戦やいざこざが絶えなかった様子が描かれている。まるで現代人がお金や石油を巡って争っているように。昔から野草地はコモンズだった。

春になれば、雑草コンポストの中身を篩にかけると団粒構造かした土を得ることができる。毎年美味しそうだなぁと思うくらい良い匂いと感触だ。まだ分解しきれていない資材はまた雑草コンポスト内に入れることで、秘伝のタレのように土着菌が受け継がれていく。

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