中尾佳貴 よしきんぐ

千葉県出身、島根県在住 タネを蒔く旅人、木を植える木工家、原生林ガイド、パーマカルチャ…

中尾佳貴 よしきんぐ

千葉県出身、島根県在住 タネを蒔く旅人、木を植える木工家、原生林ガイド、パーマカルチャーデザイナー 「自分自身とつながる」「自然とつながる」「社会とつながる」 の3つをテーマにした講座を全国で開催 現代農業 2022年から定期的に「自然農」について寄稿 漫画「ザッケン!」監修

最近の記事

ある思想とお互い様の世界

<ある思想とお互い様の世界> 「ない」ということが「ある」ということ 「ある」思想は「ない」を無視するわけでも悪いこととするわけでもない。 たとえば、トマトは湿気が苦手だ。 日本の梅雨のように雨がたくさん降る環境ではよく病気になったり、弱った時に虫がついてしまう。 このとき、「ない」思想だとトマトのこの湿気が苦手な特徴は欠点だ。 だから、ビニールマルチを使うし、ビニールで屋根もつける。 さらには病気が発生するようなら、仕方ない仕方ないといって農薬も使う。 極め付けは大き

    • コンパニオンプランツの精神

      <コンパニオンプランツの精神> 各植物の才能を活かせる環境を整えてあげると共に、短所を補い長所を生かす組み合わせを考える。自分自身は演奏しないコンダクターであり、自身はプレイしない監督のようにタクトを振るう。 自給のための農は栄養面や食卓のバラエティ、年間を通しての食のニーズを満たすために多様な作物を栽培する。それは不作や病害虫の発生に対しての保険(重要機能のバックアップ)となる。世界中の小作農が高収量の優良品種と同時に、低収量または劣等品種の栽培を続ける理由がここにある

      • 草刈りは技術だ!ひ・ふ・み使い

        <草刈りは技術だ!ひ・ふ・み使い> 自然農がなかなかうまくいかない人たちに共通して勘違いしていることが「不除草」である。畑を見て「これ、草刈りしたら問題なく育つよ」とアドバイスすることも多い。 「不除草」ほど自然農で誤解されていることはないだろう。言葉のイメージが一人歩きしている。実際、自然農の職人たちはこまめに草刈りをするが、ただ草刈りするわけではなく季節や天気、野菜に応じて草刈りを使い分けている。草刈り一つで野菜が成長を早めたり、病気がおさまるところを何度も見てきた。

        • 雑草コンポストの事始め

          <雑草コンポストの事始め> 農業について勉強を始めると必ず最初にチッソ・リン・カリという必須・三大栄養素を学ぶことになる。さらに他にも野菜が育つ上で必要な栄養素はカルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、ホウ素、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデン、ニッケル・・・「ああ!もう嫌だ!」って頭が痛くなるくらいたくさん出てくる。 理系科目が好きだった人や農業大学校を出た人ならまだしも、多くの人が頭を抱えて本を閉じたくなる。(実は農家も)だから、JAやホームセンターには精確に計算された

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          厄介な雑草の増やし方

          <厄介な雑草の増やし方> これは決して、あなたの嫌いな人の敷地内を雑草だらけにするために教えるわけではない。むしろ、あなたの敷地内に厄介な雑草を増やさないようにするために知ってもらいたい。なぜならあなたの敷地内に厄介な雑草がいる原因はあなた自身にあるからだ。 さぁ、雑草について学ぼう。 ①草を根っこごと抜く いきなり、ビックリする人が多いのではないだろうか? 雑草は根っこごと取り除くのが基本で、そうしなければ文字通り根絶できないと。 しかし、これは雑草のことを全く理解でき

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          野菜、雑草、野草、薬草の進化史と世界観

          <野菜、雑草、野草、薬草の進化史と世界観> ある農家の元で研修を受けているとき、ちょうど春先だったこともあって家のおばあさんとともに雑草摘みにでかけた。おばあさんは次から次へと私に植物を指差し、名前とどう食べたら美味しいのかを教えてくれた。ときどき、おばあさんが無視をする植物があることに気がついた私は「これは何ていう雑草ですか?」と聞くと「それは・・・草だ、草。」とそっけなく答えてくれた。 「雑草という名の植物はない」と日本の植物学の父と謳われる牧野富富太郎は言うのを思い

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          雑草は最高のボランティアだ!

          <雑草は最高のボランティアだ!> 自然農の先駆者・川口由一さんは「草を敵としない」と後輩たちを諭した。とはいえ、日本では雑草は敵として考える人が多く 自然農をしている人でも「雑草=厄介なもの」という印象が強いのも確かである。アメリカ雑草協会の雑草の定義はズバリ「雑草とは人類の活動と幸福・繁栄に対してこれに逆らったりこれを妨害したりするすべての植物」だという。 では、雑草はいったい何をしにこの世の生まれてきたのだろうか? 「きみはこの地球に何をしにやってきたの?」 自然農と

          雑草は最高のボランティアだ!

          夏の気候 五月雨と夕立と彩り

          <夏の気候 五月雨と夕立と彩り> 春の終わりと夏の始まりを告げる鐘がなる。 それが春の嵐、またの名をメイストリームと呼ぶ。これは日本だけがそう呼んでいる。 ちょうどゴールデンウィークが始まる4月の終わりから5月の上旬ごろに、強い風と強い雨が日本列島を襲う。 山間部や北日本では時に雪や霜が降りることもあるくらい冷え込むことがあるため、寒がりの人は炬燵をしまわなくて良かったと思うことだろう。農家はこの八十八夜の忘れ霜にヒヤヒヤしている。 ちょうど立春から八十八夜を迎え、立夏を目

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          ゆっくり急げ 日本人はどうして勤勉なのか

          <ゆっくり急げ 日本人はどうして勤勉なのか> 農家にとって、春は一年で一番忙しい季節だろう。 田舎でのんびり農をして暮らそうと移住してきた人は誰もが春の忙しさに驚いているはずだ。春の長閑な風景は初春のみである。 畑作業の多さもその一因だが、この季節ならではの山菜の収穫も欠かせない。山菜はタイミングを逃すと味も食感も落ちる。 すぐに調理をする必要もあるし、アク抜きなどの作業も多いし、多くを保存食に回せることもあり、やることは山ほどある。 タイミングは宇宙の賜物だ。だから、

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          畑ノートには畑の神様が宿る

          <畑の哲学>畑ノートには畑の神様が宿る 失敗を糧にする畑ノート 初心者向けのワークショップというのは基本的に成功体験をしてもらう会で、失敗を徹底的に避けてしまう。だからどうしてもイモ掘り体験会のようなスタイルになってしまう。 しかし、誰かにお膳立てされた成功体験を繰り返し続けても初心者は決して中級者にはなれない。失敗から学ぶことができて初めて中級者の道が開く。 失敗から学ぶことができれば、中級者の道に進める。そのためには失敗を指摘してくれ、本質を伝えてくれる人に出会うの

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          あなたの暮らしの中心には何がありますか?

          <あなたの暮らしの中心には何がありますか?> 「5月は田植えがあるから納品は8月ね」 昔、木工の鑿を注文するときに、そう言われたことがある。 そのとき、なんだか分からないけど『かっこいい』と思った。 パーマカルチャーとは「永続可能な農的暮らしと文化」と日本では紹介されている。 だけど、この訳はなんだかしっくり来ないw さて、畑を教える立場になってみて パーマカルチャーをやるにしても自然農をやるにしても大切なことであり、 人類にとって地球にとっても重要なことが分かってきた。

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          端午の節句と生命の力

          <季節行事の農的暮らしと文化 5月 端午の節句と生命の力> 端午の節句といえば、全国で見られる鯉のぼりだろう。 それも地域の河川にロープを張り、何十匹ものカラフルな鯉が青空のもとはためく姿が力強い。 鯉のぼりを掲げる歴史は意外と浅く、はじまりは江戸時代の武士の間で立身出世を願ったものだった。河川に掲げるようになったのは1979年の熊本県杖立温泉がはじめだったようだ。青空だけではなく湯けむりつきでる。 もともと、鯉が黄河にある急流を登ると龍になるという「登竜門」伝説にちなんだ

          端午の節句と生命の力

          味をしめた舌と記憶

          <観察の極意と感性> 味をしめた舌と記憶 今年も雑草を堪能しながら畑仕事をしている。 仕事の合間のひと休憩のたびに足元に生えている雑草を口に運ぶ。 自然農の畑には食べられる雑草がたくさんある。 だからこの時期は、毎日のように食卓には雑草料理が並ぶし、空いている時間を利用して野草で作るお茶や医薬品など作ることが多い。 あなたは雑草の味が変わっていくことに気がついているだろうか? 雑草は季節が進むにつれて味を変えていく。 それもそのはずで雑草からすれば人間にも虫にも食べ尽くさ

          <季節を知らせる花と日本人~夏~>

          <季節を知らせる花と日本人~夏~> フジの花が咲く頃、旧暦では夏を迎える。 フジはマメ科のツル性植物で樹木の幹に絡みついて、 高いところに鮮やかな青紫色の花を咲かせる。 このツルはさまざまな民具に加工されてきた。 昔からクズと同様にカゴなどに身近なモノとして 農家の女性は冬の間に編んで、利用してきた。 木や竹で組み立てたパーゴラにフジを絡ませた ちょっとした休憩所は全国でも見られる。 夏の日差しがはじまるこの季節の畑作業の休憩時に この日陰はとてもありがたい。 平安時代

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          <5月の生き物 ツバメ>

          <5月の生き物 ツバメ> ゴールデンウィークの日本の風景といえば、 田舎出身の都会人が家族揃って、生まれ故郷へ帰るために 荷物をたくさん抱えて、列をなして新幹線や車に乗りこむ姿だろうか。 JRバス(国鉄バス)のシンボルマークはツバメだ・ そして、一時的に人口が増えた里山では これまた一家総出で田植えが行われるのが日本の風景でもある。 賑やかになった古民家の軒下には必ずツバメが巣を作り、 親ツバメが子ツバメにエサを運ぶたびに、 子ツバメがギャーギャーと騒ぎ立てる様子を飽きる

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          <畑の哲学>諦めても、自然は終わらない

          <畑の哲学>諦めても、自然は終わらない 「諦めたら、そこで試合終了ですよ」というのはおそらく誰もが知っている名言だろう。 もちろんスラムダンクは好きだし、ファンの一人であることは先に断言しておいきたい。 でも実際のところは諦めても試合は終わらない。 実際に試合中に「諦めました!」と審判に伝えても、審判は試合終了のホイッスルを吹いてくれない。 どんなに点差が開いていても、制限時間に達するかルールー上打ち切りになるまで試合は無情にも続く。 同じように自然界ではあなたが諦めた

          <畑の哲学>諦めても、自然は終わらない