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デジタルハリウッド大学 教授 橋本大也さん

今回のソウミラゲストは、デジタルハリウッド大学 教授 橋本大也さんにお越しいただきました。最新データから未来がわかる「ソウミラ総研 教えて菊池所長!」のコーナーでは、データアナリスト菊池健司さんから、先週に続きまして「inc.5000」について、データを読み解きます。

それでは、今回も情報たっぷりのソウミラ、ぜひお聴きください!番組はYoutube、podcast、radikoなどで視聴が可能です。

今話題の生成AIとは

生成AI(Generative AI)は、まさに今、テクノロジーの最前線を走っている分野です。従来の人工知能がデータを分析し、結果を導き出すことに重点を置いていたのに対し、生成AIは一歩進んで、新しいコンテンツやアイデアを創造することに特化しています。画像、文章、音声、プログラムコード、構造化データと、その応用範囲は想像を超えるほど広いです。これらはすべて、大量のデータに基づいて学習したモデルにより、新しい情報やコンテンツを生成する能力によって可能になっています。

この技術の可能性は、ビジネスからエンターテインメント、医療、研究に至るまで、あらゆる分野に及んでいます。製薬業界では、新薬の開発を加速するための新しいタンパク質配列の生成に利用され、金融業界では融資の承認プロセスの高速化や不正行為の迅速な検出に貢献しています。これらの応用は、ディープラーニングや機械学習といった技術を駆使し、人間のクリエイティブな作業をサポートし、新しいアイデアやコンテンツの創出を促進しています。

しかし、生成AIの急速な発展と普及には、注意すべき点もあります。特に著作権侵害や情報漏洩のリスク、さらには「ディープフェイク」といった悪用の可能性も指摘されています。これらの課題に対して、技術開発者や利用者は、適切な利用と倫理的な考慮を常に心がける必要があります。

AIの種類について

生成AIの進化は技術革新の新たな波を形成し、画像、動画、テキスト、音声、音楽生成といった様々な分野でその能力を発揮しています。これらのAIは、それぞれが特化した分野において独自の貢献を提供し、ビジネスやクリエイティブな作業の質と効率を大幅に向上させています。

画像生成AI

「Stable Diffusion」や「Midjourney」などのサービスは、テキスト指示に基づきリアルで創造的な画像を生成します。この技術によりデザイナーやアーティストは、従来にないアイデアやビジュアルコンセプトを迅速に形にすることが可能です。具体的な指示に基づいた画像生成により、ビジュアルコンテンツの制作過程に大きな変化が生じています。

  • Stable Diffusion: 英国のスタートアップ企業「Stability AI」によって開発されたオープンソースの画像生成AIです。ユーザーがテキスト指示を入力することで、それに基づいた画像を生成します

  • Midjourney: Discordを介して利用される画像生成AIで、テキスト指示に基づいて様々なスタイルの画像を生成します。特にアート風の画像生成に強みを持ち、高い完成度の画像を提供します

https://www.midjourney.com/home

動画生成AI

テキスト指示に基づいて簡単な3Dや動画を生成するこのAIは、映像制作における未来的な革新を約束します。プロモーションビデオ、教育用コンテンツ、エンターテインメント分野への応用が見込まれています。

  • Synthesia: テキストから動画を生成するAIツールで、特定のアバターが指定されたテキストを読み上げる動画を作成します。教育やマーケティング分野での利用が見込まれています

  • Runway ML: 様々なAIモデルを活用して動画や画像の編集、生成を行うプラットフォームです。動画生成においても、テキスト指示に基づいた動画コンテンツの生成が可能です。

テキスト生成AI

「ChatGPT」などのテキスト生成AIは、質問や指示に対して高度な回答やテキストコンテンツを生成します。カスタマーサポート、コンテンツ制作、教育などの分野で効率化を促進します。

音声生成AI

テキストを特定の人物の声で読み上げるこのAI技術は、オーディオブック、ナレーション、バーチャルアシスタントなどの分野に貢献し、自然で個性的な音声コンテンツの生成を可能にします。

  • Descript Overdub: テキストを特定の声で読み上げる音声生成AIで、ユーザー自身の声を学習させることで、その声でテキストを読み上げるオーディオを生成します

  • Murf.ai: プロフェッショナルな声質の音声を生成するAIツールで、ビジネスプレゼンテーションや教育コンテンツなどに利用されます。多言語に対応しており、高品質な音声生成が可能です

音楽生成AI

異なる楽曲の要素を組み合わせて新しいメロディを作成するAIは、音楽産業における作曲やプロデュースのプロセスを支援し、完全に新しい音楽作品の生み出しを実現します。

  • AIVA: 人工知能による作曲を行うAIで、クラシック音楽からポップスまで、様々なジャンルの音楽を生成します。映画やゲームのサウンドトラック制作に利用されています。

  • Amper Music: ユーザーが指定したスタイルやムードに基づいて音楽を生成するAIツールです。短いビデオやポッドキャストのバックグラウンドミュージック作成に適しています。

https://ampermusic.zendesk.com/hc/en-us

生成AIのこれらの種類は、人間の創造性と技術の融合を象徴し、私たちの働き方、創造する内容、そして娯楽の消費方法に革命をもたらしています。技術の発展により、これらのAIの能力はさらに向上し、私たちの生活に深く根付くでしょう。それぞれの可能性を最大限に活用し、新しい価値を創造することが、これからの大きな課題です。

AIのトレンド

最近の生成AIのトレンドは、技術の精度向上、適用範囲の拡大、マルチモーダル処理技術の進歩といった幅広い分野に及んでいます。これらの進展は、リアルで魅力的なコンテンツの生成を可能にし、ビジネスやクリエイティブな作業に革新をもたらしています。

①精度の向上と適用範囲の拡大

生成AIの精度が大幅に向上し、画像やテキスト生成において特に顕著です。これは、ディープラーニング技術の進化と、大量のデータに基づく学習によって実現しています。これにより、よりリアルで細かいディテールを持ったコンテンツの生成が可能になっています。

②マルチモーダル処理技術の進歩

複数のモーダル(画像、テキスト、音声など)からの情報を統合的に処理する技術が進化しています。これは、異なる種類のデータを組み合わせることで、より複雑で豊かなコンテンツ生成を可能にする基盤を提供します。

③新しい検索機能の開発

Googleの「SGE(Search Generative Experience)」のような新しい検索機能が開発されており、検索意図に応じた回答を自動生成する機能が試験的に導入されています。これにより、情報検索の効率と精度が向上しています。

④画像生成AIのブーム

Midjourneyなどの画像生成AIが注目を集め、その利便性が広く知られるようになりました。これらの技術は、クリエイティブな分野での新たな表現方法やビジュアルコンテンツの創出に貢献しています。

⑤開発者向けイベントでの最先端技術の披露

エヌビディアなどの企業が開発者向けイベントで最新の生成AI技術を披露しています。これは、技術の進化とその応用範囲を広げる重要な機会となっています。

⑥リアル動画生成AIの進化

リアルな動画を生成するAIの技術が進化しており、映像制作におけるコストと時間の削減、独創的な視覚表現の創出が可能になっています。

⑦ChatGPTの普及

テキスト生成AIであるChatGPTが、高い精度で多くのソリューションに統合されています。これは、テキストベースのコミュニケーションやコンテンツ生成に大きな影響を与えています。

⑧生成AIモデル別プロダクト事例集の公開

企業が独自の生成AIモデルを構築し、業務効率化を図るための資料が公開されています。これは、生成AI技術の適用範囲をさらに広げる助けとなっています。

これらのトレンドは、生成AI技術が急速に進化し、その応用範囲が
拡大していることを示しています。精度の向上、マルチモーダル処理技術の進歩、新しい検索機能の開発などが、この分野の発展を牽引しています。今後もこの進化は続き、ビジネスやクリエイティブな分野での活用がさらに拡大することが期待されます。

ビジネスとしてのAI市場

生成AI市場は、AIが新しいデータやコンテンツを生成する技術を指し、文章、音声、画像などのデータ生成が可能です。この市場は、現在から2030年にかけて急速な成長が予測されており、多岐にわたる産業での活用が期待されています。

世界市場の成長予測

  • 2023年の世界需要は106億ドルで、2030年には2110億ドルに達すると予測されています。これは約20倍の成長を意味し、製造業での開発支援や金融・通信分野での業務効率化などが市場成長を牽引すると見られています。

  • 日本市場においても、2023年の1188億円から2030年には1兆7774億円へと成長し、約15倍に増加すると予測されています。

産業別の成長見込み

  • 製造分野が特に伸長が著しく、2030年には507億ドルへと拡大する見通しです。製造現場における業務支援や製品開発支援など、多岐にわたるユースケースが成長を支えるとされています。

日本の市場状況

  • 日本のAIシステム市場規模は、2022年に3,883億6,700万円であり、2027年には1兆1,034億7,700万円まで拡大すると予測されています。

企業の動向

  • 大手テクノロジー企業を中心に、生成AIツールやサービスの開発が進んでおり、Google LLC、IBM Corporation、Adobe、AWS, Inc.、Synthesis AI、Nvidia Corporationなどが市場で活動しています。

技術者の人材育成の重要性

  • 技術者などの人材育成の強化が、生成AI市場の成長を取り込むためには欠かせないと指摘されています。特に、ものづくりの分野での技術伝承などで生成AIが活躍すると見込まれています。

ハードウェア市場への影響

  • 生成AIの需要拡大は、ハードウェア市場にも好影響を及ぼすとされており、PCやスマートフォン、ヘッドマウントディスプレイ、サーバ、記憶装置などの需要が予測されています。

社会実装に向けた課題

  • 生成AIの社会実装に向けては、環境整備が不可欠であり、国際的な枠組みやルール形成などが必要とされています。

生成AI市場は、デジタルトランスフォーメーションの進展とともに、企業の業務効率化、新製品やサービスの開発、顧客体験の向上など、ビジネスの様々な側面で革新をもたらす可能性を秘めています。そのため、今後の市場の成長とともに、関連する技術やサービスの開発、人材育成、法的・倫理的な枠組みの整備が重要な課題となります。

番組収録後の感想:

今回の番組収録を経て、生成AIに関する議論がこれほど深く、また多角的にわたるものだと改めて実感しました。特に、市場規模の予測や最新のトレンドを深堀りすることで、この技術が今後の社会やビジネスにどれだけ大きな影響を及ぼす可能性があるのかが鮮明になりました。生成AIの進化が、単に新しいツールやサービスの開発に留まらず、産業構造や働き方、さらには創造性の本質にまで影響を与えていくことに、強い興奮と同時に一抹の不安も感じる瞬間がありました。特に印象深かったのは、生成AIの市場規模が2030年には日本で1兆7774億円、世界では2110億ドルにまで成長するという予測です。これらの数字からは、生成AIが経済に与えるインパクトの大きさがうかがえます。また、製造業を中心に、医療、金融、エンターテインメントといった多岐にわたる分野での応用が進むことで、私たちの生活や社会全体がどのように変化していくのかを想像すると、期待以上に未来が楽しみになります。

一方で、生成AIの急速な発展には、ディープフェイクや個人情報の漏洩、著作権侵害といった課題も伴います。これらの技術的、倫理的な問題をどのように克服していくかが、持続可能な発展には欠かせない課題となるでしょう。
ゲストとの議論を通じて、生成AIが人類にとって大きな恩恵をもたらす可能性を再確認するとともに、それを安全かつ公正に利用していくための社会全体の取り組みの重要性を感じました。


ソウミラとは

ラジオNIKKEI第一 毎週木曜日12:00-12:30
ソウミラとは、相対的未来の略称。既存ビジネス、新規ビジネスに必要なものは何か?成功者はどんなことをしているのか?それらを経験豊富なパーソナリティで深掘りしている実践的ビジネス情報番組。毎週異なったテーマでゲストと共に、トークを展開。最新ニュースや海外情報、データなどここでしか得られない情報が満載。
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出演:大野泰敬

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