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濃縮ワインでメニューを攻める 〈後編〉

文・撮影/長尾謙一 

濃縮ワインでメニューを攻める〈前編〉はこちら 

〈マンズワイン 「濃縮ワイン」シリーズ〉
・煮切りタイプワイン(赤)
・煮切りタイプワイン(白)
・超濃縮ワインタイプ(赤)
・超濃縮ワインタイプ(白)
(素材のちから第38号より)

ワイン風味がおいしさをレベルアップし、調理時間を短縮する。

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〝濃縮ワイン〟が広げる料理の可能性①
ホテル [Hotel]

同じおいしさを、ブレなく提供できることがお客様との約束。
「煮切りタイプワイン」の風味にブレがないことは、大量調理にとって助け舟だ。

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料理長 小川 勝哉 さん

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赤坂 エクセルホテル東急 東京都千代田区永田町
東京メトロ赤坂見附駅より徒歩1分。永田町駅より徒歩2分という抜群のロケーション。外資系企業も多くビジネスマンが行き交う街としての顔と、夜には大人の街赤坂の顔を持つ多様性が求められる立地にある。多様性に応える料理、サービスとは。新たな時代の予感に料理人としての感覚を研ぎ澄ます。

「濃縮ワイン」シリーズは、思わぬレシピを生み出すかもしれない

「煮切りタイプワイン(赤)」で〝牛バラ肉の赤ワイン煮〟をつくってみました。まず牛バラ肉とジュドブッフを真空包装し長時間低温加熱します。これを切り、ジュドブッフをブールマニエでつなぎ「煮切りタイプワイン(赤)」を加えたものに浸してさらにヴァプールしてやわらかくします。肉を取り出した後のジュドブッフは漉して、「煮切りタイプワイン(赤)」をもう一度回し入れて味を決め、盛り付けのソースに仕上げます。

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牛バラ肉の赤ワイン煮
使用商品▶「煮切りタイプワイン(赤)」
「煮切りタイプワイン(赤)」の品質が均一で安定しているからこそ、大量につくる牛バラ肉の赤ワイン煮はおいしい。

「煮切りタイプワイン(赤)」は香りもあるしコクもあって、とてもフレッシュな感じがします。安価なワインを詰めると雑味がいろいろ出てきますが、それがまったくありません。熱のダメージをワインに与えないという〝減圧濃縮〟の安定感は凄いですね。私たちがキッチンで大量に赤ワインを煮切ろうと思ったら、もっと濃かったり苦かったり酸っぱかったりえぐかったりしてなかなか安定しません。大量の料理を提供する時に味がブレないのは大きなメリットです。

〝フレッシュ野菜の白ワイン漬け〟は、「煮切りタイプワイン(白)」がワインビネガーに比べて酸がとてもやわらかくフルーティーなので、野菜を漬けたらいったいどうなるのだろうとおもしろ半分でつくってみました。するとどうでしょう、ピクルスでもなくグレック(ギリシャ風ピクルス)でもない、何か新しいマリネの可能性を見つけた気がします。

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フレッシュ野菜の白ワイン漬け
使用商品▶「煮切りタイプワイン(白)」
ビネガーの酸と違う白ワインのやわらかな酸が、野菜の新しい楽しみ方を見せてくれる。時間が経っても艶やかな色とみずみずしさは変わらない。

ピクルスの場合、水、白ワインビネガー、砂糖、塩が基本のマリネ液に漬けますが、水と白ワインビネガーの代わりに「煮切りタイプワイン(白)」を使ってみました。普通はここに黒粒胡椒とかコリアンダーとかタイムなどを入れますが、〝そんなことしたらもったいない〟みたいなとても素直な味わいでみずみずしく仕上がりました。

もっと素敵なのは、酸が強いと野菜の色が変わってきたりするのですが、逆に野菜の色がいきいきとして鮮やかな色が出る感じなのです。とても驚きました。

これならサーモンをマリネしても、フルーツのマリネやコンポート、グラニテなど、今までになかった思わぬレシピができるかもしれませんね。

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〝濃縮ワイン〟が広げる料理の可能性②
イタリアン [Italian]

煮切りの作業がなくなることで、作業が大幅に効率化。
限られた時間、限られたスタッフ、限られたスペースで何を優先するか。

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シェフ 山本 雄造 さん

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『ピッツェリア ピッキ』 東京都江東区冬木
450℃にも達する燃える薪の火で焼き上げるナポリピッツァは、ピザ生地の持つ水分と火力でふっくらと焼き上がる。調理する火の原点として薪の火にこだわり、料理にも高温でパリッと焼けた絶妙な焼き上がりのニュアンスを表現する。パスタをはじめテリーヌなど手の込んだ料理も提供する下町のトラットリア。

風味のレベルアップとキッチンの効率化を「濃縮ワイン」シリーズが両立させる

一度にたくさんのワインを煮切ると相当時間がかかりますし、火口を長時間独占することになり他の加熱作業ができません。それがなくなるのですから作業は大幅に効率化されます。

今、調理用ワインは1.8ℓの瓶のものを使っていますが、煮詰めた状態を比べると「超濃縮ワインタイプ」は赤も白もえぐみが少なく果実感が強いですね。酸味もあってとてもまるい感じです。1ℓの紙パックなので保管場所にも困りませんし、購入頻度も減って発注作業の軽減になります。

それでは、いつもの〝ボローニャ風ミートソース〟のパスタを「超濃縮ワインタイプ(赤)」とトマトは「デルモンテ パッサータ・ハイブリックス」でつくってみました。

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ボローニャ風ミートソース
使用商品▶「超濃縮ワインタイプ(赤)」
「超濃縮ワインタイプ(赤)」の濃縮感のあるぶどうの果実感がトマトベースのソースに深いコクを与える。

水分を飛ばす時間が短くてすみ、とても能率的ですし、ぶどうの果実感もあってソースにコクが出ます。使用量も少なくてすみますからコストメリットがありますね。手づくり感のある「デルモンテ パッサータ・ハイブリックス」のシンプルな味わいとも相まってフレッシュなソースに仕上がりました。

次に、「煮切りタイプワイン(赤)」を使ってサングリアに挑戦してみました。レシピも簡単で、オレンジジュースと「煮切りタイプワイン(赤)」を1対1で合わせ白桃を入れ、半日漬け込むだけです。

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季節フルーツのノンアルコールサングリア
使用商品▶「煮切りタイプワイン(赤)」
「煮切りタイプワイン(赤)」の純粋なフレッシュ感がつくり出すノンアルコールメニュー。

甘みが足りなければガムシロップを加えます。お酒がそんなに強くない方にもサングリアをお楽しみいただけます。おいしいですよね。夏は白のサングリアもいいと思います。

「超濃縮ワインタイプ(白)」は〝真鯛のアクアパッツァ〟に使ってみました。

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真鯛のアクアパッツァ
使用商品▶「超濃縮ワインタイプ(白)」
濃厚な真鯛の出汁に「超濃縮ワインタイプ(白)」を加えると、白ワインのフレッシュな酸味によって旨みの輪郭がくっきりと現われ、濃厚感はさらに増す。

魚をまるごと使わず、こうした切り身を煮る場合、あっという間に火が入ってしまいますが、そのスピード感に通常のワインは蒸発がついていきません。ですから一旦切り身を取り出して煮詰めてからまた戻します。

「超濃縮ワインタイプ(白)」ならそんな必要はありません。じっくり熱を入れると身から旨みが全部流れ出てしまいますから、強火でガッと熱を入れてふっくらさせるのが僕の好きな火入れなんです。

今回使わせていただいた「濃縮ワイン」シリーズは最少人数のスタッフで切り盛りする私どものようなレストランには本当に助かる商品です。

〝濃縮ワイン〟が広げる料理の可能性③
居酒屋 [Izakaya]

調理にワインを頻度高く使うからこそ、そのありがたさが分かる。
パスタ、カレー、煮込み、パイ包み焼きのソースなどワインの風味はたくさん使う。

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料理長  佐伯 英佑 さん

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富士屋本店 日本橋浜町 東京都中央区日本橋浜町
朝から仕込みをしているが店は夕方5時からしか開けない。その時期にしか手に入らない食材を積極的に選び手間をかけて料理をつくるスタッフの姿を地元のお客様は知っている。店内には名前を見ただけで注文したくなるおいしそうなメニューが並ぶ。どれもリーズナブルだ。5時開店、店はすぐに満席になる。

加熱してもぶどう果実の酸味が残る

鴨のひき肉でつくったハンバーグにオーブンで焼いた鴨のむね肉をのせ、さらにその上にソテーしたフォアグラをのせた、〝鴨のつくねハンバーグとフォアグラ〟をつくってみました。照り焼きソースはみりん、醤油、砂糖、「超濃縮ワインタイプ(赤)」を合わせたものにコーンスターチでとろみをつけました。

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鴨のつくねハンバーグとフォアグラ
使用商品▶「超濃縮ワインタイプ(赤)」
フォアグラの脂、鴨のむね肉から流れ出る脂、鴨の持つ脂を、照り焼きソースに加えた「超濃縮ワインタイプ(赤)」のフレッシュな酸味がさっぱりと切ってくれる。

フォアグラと鴨の脂を楽しむ料理で、こうしたメニューはあまりこってりとした印象にしたくないのでソースには少し酸味が欲しいのですが、ワインは詰めると酸味は飛んでしまいます。ですから最後にちょっとビネガーを足したりすることもあります。「超濃縮ワインタイプ(赤)」は、加熱してもぶどう果実のフレッシュな酸味はちゃんと残りますから、醤油やみりんなど発酵した素材が混ざり合って思い通りの軽い照り焼きソースに仕上がります。

ワインをソースに使えるようにするまでには、だいたい1時間くらいは詰めます。つくるメニューによっては2時間くらい詰めることもあります。ですから、スタートが「超濃縮ワインタイプ(赤)」からだとすると、すでに4倍濃縮されているので時間的に大きなメリットがあります。

「超濃縮ワインタイプ(白)」の第一印象は、〝この濃厚な白ワインの風味は魚介の出汁の味をいかす〟でした。このコクのあるフレッシュな甘みがとても気に入りました。そこで、今までにない新しいメニューをと思い白いカレーをつくりました。

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ハマグリのホワイトカレー
使用商品▶「超濃縮ワインタイプ(白)」
ハマグリの旨みをたっぷりと抱いた白いカレー。魚介と相性のいいスパイスとともに、「超濃縮ワインタイプ(白)」がその旨みを際立たせる。(テイクアウト仕様)

カレーのスパイスはクミン、コリアンダー、カルダモン、ホワイトペッパー、それと魚貝に合うフェンネルシードを入れています。カレーの甘みは炒めた玉ねぎと「超濃縮ワインタイプ(白)」だけの甘さですが、甘さに奥行きがあります。この深い甘さがハマグリの旨みをグッと持ち上げてくれる感じです。

カレーというとカレー味に支配されてしまいがちですが、このメニューはちゃんとハマグリ風味が主役になっています。このカレー自体がソースになるので、焼いた魚や海老に添えたり、タイ風のカレーにもできるし、いろいろメニュー展開できそうです。

パスタやカレーにも使いますし結構ワインを使う頻度は高いので、こうしたアルコールを飛ばした濃縮タイプのワインはとても便利です。

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〝濃縮ワイン〟が広げる料理の可能性④
洋食 [Yoshoku]

これほど手軽にワインの魅力を風味づけできるとは驚きだ。
赤ワインのフルーティーな香りと酸味、甘みと渋みがしっかりとメニューに。

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本店料理長 六川 健 さん

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日比谷 松本楼 東京都千代田区日比谷公園
日比谷 松本楼は、明治36年日比谷公園が日本で初めての西洋式公園として開園されると同時にオープン。100年以上に渡り日本の歴史とともに歩んできた。訪れる客層は年配の方から小さなお子様をつれた家族連れ、昼はサラリーマンと多種多様だ。公園の中にある誰でも気軽に入れるレストランがコンセプト。

フレッシュなワインのおいしさを手軽に風味づけできる

松本楼のデミグラスソースは歴代の料理長から引き継がれ、長年継ぎ足してつくられています。そしてこれをハヤシライスやビーフシチュー、ハンバーグのソースや宴会で出す牛ヒレ肉のソースなどに派生させます。

今回は、これをベースにビーフシチューをつくりました。いつもはポルト酒やマデラ酒でさらに風味を少し強化するイメージですが、「超濃縮ワインタイプ(赤)」を使い、赤ワインの風味を香りづけしてみました。

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国産牛のビーフシチュー
使用商品▶「超濃縮ワインタイプ(赤)」
引き継がれてきたデミグラスソースに「超濃縮ワインタイプ(赤)」をそのまま加えるだけで、赤ワインの風味がしっかりと重なる。そして、華やかな香りとともにビーフシチューの味わいを深める。

ソースの中に赤ワインのフルーティーな香りと酸味、渋みをしっかりと感じてとてもおいしく仕上がりました。「超濃縮ワインタイプ(赤)」はこうして最後の香りづけにちょっとふるにはとても使い勝手がいいですね。通常の場合はワインを凄く詰めて使いますから仕込む時間がかなり短縮されます。

「超濃縮ワインタイプ(赤)」はさらに詰めても酸味が飛びません。〝減圧濃縮〟というのは凄いですね。赤ワインの持っているぶどうの果実感をこんなに守っている。こうしたものは初めて見ました。これを液面に自分が映り込むくらいのミロワール(鏡)状まで詰めて使えば、コックオーヴァンなどはとてもおいしくできるでしょう。

おいしいワインの風味を手軽に風味づけができるということが「超濃縮ワインタイプ(赤)」最大の特長ですね。

〝手作りクリーミーカニコロッケ〟には「超濃縮ワインタイプ(白)」を香りとコクづけに使ってみました。このメニューで白ワインは脇役ですが、「超濃縮ワインタイプ(白)」の凝縮されたワイン風味がカニの旨みをグッと引き立たせています。

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手作りクリーミーカニコロッケ
使用商品▶「超濃縮ワインタイプ(白)」
濃厚なワインの風味はカニの旨みをグッと引き立てる。「超濃縮ワインタイプ(白)」を加えたベシャメルソースはカニの旨みが違う。

通常は白ワインを濃度がつくくらいまでとことん詰めて使いますから、時間がかかります。その点「超濃縮ワインタイプ(白)」はとても便利です。

「超濃縮ワインタイプ(白)」のフルーティーな酸味は、ドレッシングにとてもいいと思います。果物のコンポートにも使えそうです。今までになかった「濃縮ワイン」のおかげで、新しいメニューがたくさんつくれそうです。

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協力/お問い合わせ:キッコーマン食品株式会社

(2020年8月31日発行「素材のちから」第38号掲載記事)

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