見出し画像

荀子 巻第二十法行篇第三十 2

曾子曰わく、内の人をうとんじて外の人を親しむこと無かれ。身の不善にして人を怨むこと無かれ。刑のすでに至りて天を呼ぶこと無かれ。内の人を疏んじて外の人を親しむは、亦たもとらずや。身の不善にして人を怨むは、亦た遠からずや。刑の已至りて天を呼ぶは、亦たおそからずや。詩に曰わく、涓涓けんけんたる源水、ふさがずとどめず、こしきの已に破れくだけてより乃ち其のを大いにし、事の已に敗れてより乃ち重ねて大息するは、其れ益あらんや、と。

(金谷治訳注「荀子」岩波書店、1962年)

曾子→中国,周代,魯の思想家。名はしん,字は子輿しよ。孔子の弟子。《論語》の中では三省の教え,孝行で有名。
疏→うとんじる。うとんずる。うとむ。とおざける。おろそか。おろそかにする。
不善→よくないこと。また、そのさま。
天→神仏。また、神仏の住むところ。
呼→②よぶ。(ア)声をかけて招く。よび寄せる。
亦→「また~ずや」「また~ならずや」と読み、反語の意を表す。
反→⑨よこしま。道理にそむきもとること。
遠→🈔③たがう。
晩→おそい。時間や時期がおそい。
涓涓→水が細く流れるさま。 小川などの水がちょろちょろと流れるさま。
雝→ふさぐ。さえぎる。さまたげる。
塞→ふさぐ。せく。とざす。さえぎる。
轂→こしき。車輪の中央にあり、の集めるところ。
輻→や。車のや。車輪の中心から外に向かって放射状に組まれた棒。
大息→大きなため息をつくこと。嘆くこと。
益→ためになる。役に立つ。
拙訳です。
『曾子が言った。「身内の人をおろそかにしてよその人に親しんではいけない。自身が良くないのに人を怨んではいけない。刑罰が既に執行されてから神仏に頼んではいけない。身内の人をおろそかにしてよその人に親しむのは道理に背き悖る行為ではないか。自身が良くないのに人を怨むのは間違っているのではないか。刑罰が既に執行されてから神仏に頼むのは遅すぎるのではないか。詩経には次のようにある、「ちょろちょろと流れている水源で塞がず閉ざさず、車輪の中心が壊れてから車輪の棒を大きくし、事業に失敗してから重ねて嘆く、これらが何の役に立つだろうか。」と。」』

何事も大本を大切にし、大本で適切な対応をすることが肝要だと言っています。まずは身内の人を大切にし身の保全を図り、まずは自身を正しくすることで災いを避け、刑罰が執行される前に神頼みを含めてできる限りの対処をしておく、大本での対応の誤りは、後から取り戻すことができません。何事もおろそかにせず、後回しにせず、きちんと対応していかなければなりません。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?