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牛すじの煮込み

 最近料理に全く興味がなかった私が料理に目覚め、これを作りたいなあれを作りたいな、こうしたら美味しくなりそうだな、余っている材料であれが作れそうだなと考えるのが楽しくなりました。かつてはジャーキー並みに硬い豚の角煮を作って普段は優しい父の顔をしかめさせたものです。

 ところでみなさんは牛すじの煮込みという料理を知っていますか?実は今日まで牛すじの煮込みのことを"牛すじ肉をデミグラスっぽい味のもので煮込んだもの"だと思っていました。

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 我が家では牛すじの煮込みは今までで1回しか登板したことがない超レアキャラで(私は覚えてすらいない)お惣菜としても食卓に上がったことはなく、外で食べた記憶もありませんでした。まさに牛すじの煮込みスルーの人生だったのです。

 つい最近母親に「牛すじの煮込みを作りたいんだけどなにで味付けるの?」と聞かれ、「ビーフシチューの素でいいんじゃない?」と即答しました。母はピンときていないようでしたが、「なるほど」と言いました。その会話を聞いていた父に「それはビーフシチューじゃないの?」と言われ(たしかに)と思いました。

 父の「それはビーフシチューじゃないの?」という一言からいったんビーフシチューの素の線は消えかかり、議論は振り出しに戻りました。私は改めて牛すじの煮込みとはなんなのかを考えましたが、口のなかにデミグラス系の味が広がる姿しか浮かびませんでした。

 そこで"牛すじの煮込みの味付けが分からない"とツイートしたところ、優しいフォロワーさんから味付けのリプライをいただきました。そこには、出汁、醤油、砂糖、酒、味噌とあり、(えっ…牛すじの煮込みって和食なの…???)と思いました。デミグラスとは真逆の優しい味わいで脳が軽く混乱しました。

 噂の東京マガジンで見る、やってTRYのお題で「牛すじの煮込みを作ってください」と言われたら迷わずにビーフシチューの素を入れ、「それはビーフシチューだよ」とナレーションに言われたことと思います。想像するだけで恐ろしいです。

 ビーフシチューの素を買ってきたけどこれはこれでまた今度使おうかなと思いながら下茹で中の牛すじの様子を見に行くと、すでに母が素を入れているところでした。私の一言で誤った方向に進ませてしまったことを申し訳なく思いましたが、瞬く間に美味しそうな香りが家中に広がり、まるで私をフォローしてくれているかのようでした。

 思えばビーフシチュー自体も手作りのものは食卓に並んだ記憶がありません。肉、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもと来れば出来上がるのはカレーか白い方のシチューです。ルーで作りましたが正直こんなに美味しいとは思いませんでした。これは一軍登録です。

 兎にも角にも、牛すじの煮込みとは何なのかを嫁入り前に知れて良かったです。母が突然「牛すじの煮込みを作りたい」と言わなければこのまま誤った解釈をしていました。洋食と和食を間違える…これは人間性を疑います。

 それとビーフシチューをご飯にかけると美味しいということも発見しました。パンには合うと思っていましたが、まさかご飯にも合うとは思いませんでした。でも、それってハヤシライスでは…??

 ハヤシライスとはなんなのか………眠れなくなりそうなので今回は考えるのをやめときます。

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