実用性やいかに?!「日本デジタルノマド」期待と現実のはざま

先日、日本政府がデジタルノマドビザの発給を開始するとの報道がありました。
現在募集中のパブリックコメント(一般国民から施行予定の法令等に対する意見を募集するもの)を経て、3月末から公布・施行という流れになります。

日本のデジタルノマドビザについての主なポイントは以下のとおりです。

筆者自身も、外国人のクライアントからこのビザ制度に関する多くの質問を受けており、世界からこの制度に大きな期待が寄せられていることが分かります。

詳細は既に様々な場所で共有されているため他に譲るとして、この記事では「このビザが実際には役立たないのではないか」という疑惑についてみていきたいと思います。


1.申請方法

この制度では「デジタルノマドビザ 」という新規ビザを作成するのではなく「特定活動」という既存の在留資格に、デジタルノマドビザのカテゴリーが告示として新たに設けられることになるのですが、このタイプの特定活動の在留資格は、来日前に日本の入管に在留資格認定証明書公布申請を行い、認定証明書が公布された後に現地の日本大使館・領事館で査証申請を行い来日するという流れをふむ必要があります。
この一連の手続きはスムーズに進んだ場合であっても3~4か月程度はかかります。
「デジタルノマド」という自由な働き方を彷彿とさせる言葉のイメージから、比較的簡単な手続でビザを取得として来日できると考えている方が多いように思います。その場合、考えていたものとは違ったということになるかもしれません。

2.申請代理人の問題

さらに、在留資格認定証明書公布申請には、日本において本人に代わって申請書を提出する代理人の存在が必要になります。就労資格の場合は、所属機関の職員が代理をすることになっています。デジタルノマドビザの場合、ノマドビザというそもそもの性質から、日本側に雇用主は存在しません。また、日本側に申請人代理人となってくれるような親族や知人の存在も通常はないと考えるのが自然です。そうなった場合、在留資格認定証明書公布申請を自ら行うためだけにわざわざ短期滞在で一度来日する必要があったとしたら・・この制度意味不明です。

3.短期滞在ビザとの差別化

短期滞在ビザであっても、リモートワークを行うことは可能です、
短期滞在ビザで在留可能な上限日数は、1度あたりの訪問につき90日ですが、来日回数に制限はなく、1年を通じて180日まで来日することが可能です。査証免除国の国籍者は短期滞在ビザ取得にあたって事前の査証申請が不要であることを考えると、事前に3~4か月の期間を投じてデジタルノマドビザ取得の手続をするよりも、短期滞在で90日間滞在したあと、一度出国してまた90日間滞在するほうがよほどスムーズなのではないかと思ってしまいます。

4.更新の有無について

次に更新の有無について。パブリックコメントにあがっている改正の概要では以下のような記載があります。
「本邦に上陸する年の1月1日から12月31日までのいずれかの日にお いて開始し、又は終了する12月の期間の全てにおいて、本邦での滞在 期間が6か月を超えないこと 」
これは恐らく、6月の特定活動の在留資格が付与され、その後更新は認めない方針ということだと思うのですが、その場合、なおさら、短期滞在90日X2回 と何が違うのだろう・・という疑問がむくむくと湧き上がってきます。


以上、現時点で考えられる懸念点をを記載しましたが、これらの心配が杞憂に終わり、3月末には実用的な手当が行われた状態で制度がスタートすることを心から祈りたいと思います。








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