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音楽評論家のスージー鈴木氏が【生田絵梨花】を取り上げてくれました。

1.【筆者のコメント】
音楽評論家のスージー鈴木氏のコメントに妙にツボってしまって。上手いこと言うな~~と感心したので、載せました。

「何というか「生真面目な藤井風」という感じの歌・演奏にも好感が持てます。」

スージー鈴木氏は以前にも生田絵梨花を取り上げてくれたのを思い出しました。
音楽に関しては筆者など素人には足元にも及ばない深い知識と洞察と、音楽が好きなんでしょうね。
この論評に一言も反論も、追加もありません。





2.生田絵梨花の新曲を聴くと藤井風や岡村靖幸、ジョニ・ミッチェルの話をしたくなる理由【月刊レコード大賞】

スージー鈴木 音楽評論家、ラジオDJ、小説家
4/30(火)


東京スポーツ紙の連載「スージー鈴木のオジサンに贈るヒット曲講座」と連動して毎月お届けする本企画。4月度は生田絵梨花の新曲『Laundry』を取り上げます。

 4月16日放送のNHK『うたコン』(映像)を見て驚きました。

 というのは、この番組で生田絵梨花は、自ら作詞・作曲を手掛けたこの曲を生歌・生ピアノ・さらに生ピアノソロ付きで披露したのです(もちろん生中継)。

 昨今の口パク・カラオケ全盛の歌番組界の中では、なかなか珍しい。さらにシンガーが弾く生ピアノソロなんて、めちゃくちゃ珍しい! とうれしくなりました。

 もちろん私はその場にいなかったので、実際に「生ピアノ」だったのかどうかの厳密な検証は出来ないのですが、映像では、グランドピアノの「屋根」(上の天板を正式にはこう呼ぶそうです)を取り払って、上からのアングルで、彼女の叩く鍵盤が、ピアノ内部のハンマーを通じて弦を叩くさまを、くっきりと見せていました。これは、「生ピアノ」であることを強くアピールする演出だと確信したのです。

 そして、さらに驚いたのは、生田絵梨花が鍵盤をほとんど見ず、前のカメラの方を見つめて歌っていたこと。

 また、細かい話になりますが、ピアノの弾き方も独特で、椅子が遠いのか、低いのか、普通のピアニストよりも、ピアノと距離を取って、手を突き出して弾いているような感じがしました。

 この、鍵盤を見ない感じ、独特のポジションで弾く感じは、つまりピアノをめっちゃ弾き慣れている、いや、子供の頃から、ずっとピアノと一緒に過ごしてきたことを示していると思ったのです。

 そういえば、前回の記事では、藤井風のキーボードについて「鍵盤が両手にまとわり付いている感じがする」「幼い頃から鍵盤が好きで好きで、弾いて弾いて弾きまくった人だけが出せる味」と評しましたが、生田絵梨花のピアノにも、同様の味を感じました。

 あと、こんな映像も。何というか「生真面目な藤井風」という感じの歌・演奏にも好感が持てます。

 昨日アップされた双葉社THE CHANGEのインタビュー記事(4月29日)で、「これだけいろいろできるということは、十分に器用だと思いますが」と聞かれて、彼女はこう答えています。これぞ「生真面目さ」の源でしょうか。

全然、器用じゃないですよ。たとえば音楽で弾き語りするにしても、めちゃめちゃ練習に時間がかかりますし、できるようになるまで要領がすごく悪かったり。

『Laundry』は、作詞・作曲も生田絵梨花(作詞はいしわたり淳治との連名)。


 メロディは、音楽用語でいう「ブルーノート」がバリバリに入っている曲。譜面はまだ見ていませんが、キーもC#(嬰ハ長調)ですし、ブルーノートも含めて、さぞかしシャープやらフラットやらナチュラルやらの臨時記号が忙しいことでしょう。

 また、ブルーノートが入りまくっている感じは、(同日の『うたコン』に「岡村和義」名義で出演=映像=した)岡村靖幸の歌うメロディに近いものを感じました。


 加えて作詞も面白く、洗濯機(ドラム式)の「回転」がモチーフとなっています(上のMVも)。「回るように流れて」「繰り返しては呆れる日々のループ」「round and round and round」「同じとこ回っているような毎日」などなど。

 長く音楽を聴き続けてきたので、「回転ソング」には、いくつか記憶があります。

 まずは山口百恵『しなやかに歌って』(79年)1番の「足につけたローラー」「夜は33の回転扉」「レコードが廻るだけ」。

 さらにはタイトルからして回転を匂わせて、歌詞も、季節や回転木馬や側転や自動車のホイールが回りに回る「回転ソング」の最高傑作、ジョニ・ミッチェル『サークル・ゲーム』(70年)。

 藤井風、岡村靖幸はともかく、山口百恵やジョニ・ミッチェルを持ち出して生田絵梨花の音楽を語る論も珍しいかもですが、『Laundry』という曲には、そういうことをしたくさせる魅力があります。
 音楽が好きで好きでしょうがない人が作った音楽だからでしょう。そんな初期衝動を感じにくい音楽ばかりが溢れる中、『Laundry』のような曲を聴くことは、とても幸せなことだと思います。

 『うたコン』にはバックバンドがいましたが、もし今年の紅白歌合戦に出場したならば、グランドピアノ1台の弾き語りで披露していただきたい。
いや、さすがにそれが重荷ならグランドピアノ2台での連弾で。もちろん2台目を弾くのは藤井風しかいないでしょう。

『Laundry』/作詞:Erika Ikuta・Junji Ishiwatari、作曲:Erika Ikuta
『しなやかに歌って』/作詞:阿木燿子、作曲:宇崎竜童
『サークル・ゲーム』/作詞・作曲:JONI MITCHELL




終わり

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