ショートショート「正しすぎる人」

善野正(ぜんのただし)の一日は正しさに塗れている

朝、目覚ましより早く起き
目覚ましに選んだ曲をキッチリと
イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ
と聴き終えてから間奏中に止め
ふわぁ〜っと分かりやすい欠伸をし
布団から出る

スリッパを右足から履き
8歩で洗面台に到着
洗顔、歯磨き、ヘアセット
10分、8分、5分
ヘアセットが5分では厳しくなって来た為
理容室を予約し
リマインダーに忘れないようセットする

朝ご飯
白米、トースト、白米、白米、白米
今日は水曜日
白米に味噌汁、焼き魚、納豆、焼き海苔
が、焼き海苔が切れている
ここで味海苔にしては
自分の決めた正しい朝ご飯に反する
善野は悩む
買いに出るか
だが、ご飯は熱いうちにと言う正しさに反する
そして、買いに出ては次の着替えの時間に波及する
正しくない
どうする
どうする

「本日の朝ご飯は！焼き海苔なしとする！
　これは正しい判断だ！」

ぐぐっと、拳を握り締め、味噌汁を啜る

善野正の日々は正しさに塗れている
その正しすぎる正しさは
正しさの渦と化し
世界を巻き込んだ
「善野正の乱」
が始まるのだった

お題提供:野村有志さん
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