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本を渡しに行った!(上)


限られている時間の中、全員に渡す数を作れなかった。誰に渡すか、最後まで躊躇していた。本に登場した私に深く影響を与え、今も親しい関係が続く人々。そして、ずっと守ってくれた大家さん、お腹が空いている時にご飯を作ってくれたなど身近にいる人に。

1冊目

微かな「C」はテリー・ライリーの代表作『In C』を表し、
横にすると『A Rainbow In Curved Air』の虹になる。
今年、彼は88歳になった。

月に一回のテリーさんによるラーガレッスンに一年以上通っていた。最後のラーガレッスンに本を渡しに行った。宮本さんは「彼女ならOK」と、裏にある休み所に連れていってくれた。

テリーさんの感想:「Oh wow! すご〜い。こういう表紙から自分で作った本は初めてもらった。大切にして、少しずつ味わっていく。この本の感触、持ってみて」そして、他の人にも触ってもらった。 

「ごめんなさい。この本にたくさんのミスがあります」

「ミスってなに??!木星からの誰かが世界を見て、おぉ、彼女がミスをしたよと言う?まさか。アッハッハ!」

「私たちはミス大好きだよ!!!」とラーガレッスンの部屋調律師が言った。

その日、3回目の送別挨拶をしたら、テリーさんがもう一回「本をありがとう。たまにメールをしてね」と言った。

「へえええ、いいですか?」最後に、ビッグハグをもらった。

2冊目

自然音を探求してきた鈴木さん。
楮で作られた表紙の上、水滴で生まれた模様。

鎌倉で開催される吉村弘さんの展覧会で鈴木さんの演奏を見に行けるため、8月5日以降の飛行機を予約した。演奏後、2冊目の本を届けに行った。

その時、起こったこと

7月は仕事を終えて、暇になるかと思って、6月に姉を「日本に来て〜」と誘った。そして、7月上旬に製本の大変さを感じて、「来ないで〜」と伝えた。

「このやろう!」

姉は3年前、街でストリートフードを売ることからはじめ、最も深刻な時世にレストランを立ち上げた。規制から心身ともにぼろぼろになった彼女にとって、3年目初めての休み。そして、夏の最中に1日8時間以上、熊野古道を登る。そういう最悪な妹だ。

「あなたのために日本に来たのに、あなたはどこにいる?私と3日間しか一緒にいない?」

その中で、製本を続けた。

「なんの本を作ってる?姉に一冊もらえないの?どういう意味?」
そして、私の話し方がずっとあちこち跳ねていると文句を言った。姉でさえ上手くコミュニケーションを取れず、そして理解してくれなかった。

熊野古道

「明日の朝は書道をやる〜」

「へ? 筆あるの?」

「うん」

「墨もあるの?」

「うん」

「リュックの中、他に何が入っている?」

「2冊の本」(カッター、定規、のりなど…)

「はぁぁ?」

3日間、7時に歩き始める。5時に起きて「音の物語」を書き続けたが、一つも使えなかった。筆がリュックの中でぼさぼさになった。

川と温泉の融合で借りた石。

姉が川湯に入って、私は90分ずっと「こんこんこん」と石を厳選した。

「やめて、うるさいよ」

本を届けに行く二日前。夜に、「ああああああ!!」鈴木さんの本に致命的なミスを見つけた。しかも、鈴木さんのページだ。その2枚のページを差し替えないと失礼だ!「明日の夜、家に帰らないと!」

姉が「NO!!!!!!」と泣きそうになりながら叫んでいた。
(強い自立している姉のこの姿を見て、私の心が傷んだ。)

始発6:45分。7時間の電車に揺られ、14時に家に戻った。15:30に鎌倉に向かわないと。前の糸を切った。長い糸が絡まっても、深呼吸をしながら、本を再度綴じていた。余った時間は「音の物語」の書道を書き続けたが、結局使えるものがなかった。一週間前に書いたものにしたが、そして、のり事件… 

パフォーマンス後、ほんの少しだけ話すことができて、無事に届けた。最後に鈴木さんから手を差し出され、真面目に「一番大事なのは、体を大切に」とゆっくり言って、そして「また、たよりのメールね」

(嬉しい!!!)

翌日、3冊目

もう、東京に家がない。友達(Long Email Lady)のソファに泊まって、朝早く起きて「音の物語」の書道を繰り返していた。

「ニュー・カラーに最後の日に届けに行きたい」

「今日は納得できるタイトルが見つからない。2日後に、本当にできると思う?」いつも料理したり叱ったりしてくれる友人から。

「うん」

白目をむいて、頭を振りながら、「5年後」と言った。

この程度の完成度、ニュー・カラーに渡せるか。ありえないほどのミス。それでもニュー・カラーによって生まれた本。出来上がった一冊を渡した。カバーは最初に想定したものに近い。

熊野古道シリーズの本。鈴木さんの石と同じところで借りた。わらびランドで作った和紙で包んだ。

「いいっすか? 貴重なもの」と加藤さんが言った。

石を指して「これは耳です」

ぽっこんー。石が落ちた。

日本を離れる、あと2日間。9冊増刊するかも?

「私も一冊もらえる?次のプロジェクトのため、参考本として読みたい」

ジャズ喫茶のドキュメントリーを作っている友達のニックに、レコードを預かってもらう時、約束通りに一つのエピソードを一緒に見る。彼は絶望的な時期に乗り越えて、9年後に夢はもうすぐ上映する。おめでとう!

「『映画館』はもう少し直したいところがあるから、ロックのエピソードを見よう」とニックが言った。

「いやだ!いやだ!映画館!映画館!!映画館!!!」

映画の10分に入って、わぁぁ。映画館を訪れたばかりで、リアルな体験が映画の映像と交錯していた。吉田さんのきらきらしている瞳といきいきしている精神。わぁぁ。暖かい涙に満ちて、そして、鼻水が止まらなかった。吉田さんは私のことを覚えていなくても、やっぱり、やっぱり、一冊を差し上げたい。今まで来たこと、はじまりを忘れてはいけない!!!日本を離れる前、紙を予約する思いは何度も浮かんできたが、他のことに流されていった。今回の思いは強烈だ。紙を予約しないと、きっと後悔する。

スパイスカレーを食べた前
「あなたはADHDじゃなければ、この本できなかったと思うよ」

(どういう意味だ?)

スパイスカレーを食べた後
自転車に乗る前、「吉田さんに一冊をあげたほうがいいよね」とニックに聞いた。

「Yoshida-san would be re-aally happy to receive your book」と真剣な顔で答えた。

夜にシェアハウスで
ハウスメイトに、明日、紙を買う話を伝えた。

「それは愚かなアイディア。新たなチャプター、新しい人生。本を忘れて!Just drop it!!」と叫んでいた。

「Cannot drop!!! お前は私の気持ちを分からないんだ!!!」

冷静になった彼は、「そうだ。私には分からない」

そして、もう部屋がない私は、ハウスメイトの床に寝ていた。
腰、痛いよ〜

本を渡しに行った!(下)



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