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おばあちゃんとまむしさんと私 -テストよりも大切なこと-


おばあちゃんとおじいちゃんと暮らした大学時代

おばあちゃんはラジオが大好きで
いつも朝からTBS ラジオを聴いていたから
朝ごはんを食べながら一緒にラジオを聴くのが毎日の日課

当時おばあちゃんが大好きだった
大沢悠里のゆうゆうワイドっていう番組のなかに
毒蝮三太夫さんが銭湯から中継するコーナーがあって

面白いからいつも笑いながら聴いてたんだけど
ある時そのまむしさんががテレビに出てて

おばあちゃんが、
『桃ちゃん、この人がまむしさんだよ』
って教えてくれて、
こんな感じの人なんだね〜って
ラジオの人は声しかわからないから面白いね〜って話してた。

次の日、期末テストに遅れそうになって走って学校に向かってたら

道端からすごい聞き覚えのある
大きな声が聞こえてきて
もしや、とおもって振り向いたら
銭湯の前に昨日テレビで見たまむしさんがいて

あ、やっぱりまむしさんじゃん!!ってめちゃめちゃおどろいた


『まむしさん、おはようございます!おばあちゃんがめっちゃ好きです、この中継!』
って声かけたら
『おーそうなのか、じゃあ一緒に中に入るか!』
って誘ってくれたんだけど

当時大学3年生の私は、

テストに遅れちゃうから今日は遠慮しときます!
ってまた走り出しちゃった。


そしたらお付きのお姉さんが

お姉さん!お姉さん!って走って追いかけてきて、

『これ、まむしさんからおばあちゃんに、お土産だそうです』
ってオリジナルのステッカーを渡してくれた。

家に帰っておばあちゃんに渡したら

『今日も聞いてたのよ〜桃ちゃんすごいね〜』

って泣いて喜んでくれた。

私もおばあちゃんが喜んでくれて嬉しかったんだけど、
それから9年間、毎回おばあちゃんちに
大事そうに飾ってあるステッカーを見るたびに、

『なんで私あの時テストを選んじゃったんだ?』って、

一緒に銭湯に入らせてもらったら、絶対楽しいな!!
おばあちゃん喜ぶだろうな、って思ったのに。

テスト受けなきゃ、って迷いもせずに走り出したけど
今じゃなんのテストかすらも思い出せない。
ちょっと悔しい


昨日おばあちゃんとまたその時のことを話しながら、

もうこれからは絶対、

やらなくちゃとか、やるべきだとか

そんなことに惑わされないで
目の前に起きてる奇跡にちゃんと気づいて、その波に乗って生きていこうって自分と約束した。

おばあちゃんはまだ元気に笑っててくれて、『今度まむしさんに会ったらちゃんとお礼言わなきゃね』
なんて優しく笑わせてくれる。

周りの大切な人が
元気に笑ってるっていうのは
奇跡でしかないから

もっともっとその奇跡を大切に生きていけよ
って、マムシさんのくれたステッカーは今
私の背中を押してくれてる

そんな気がする。

#創作大賞2023 #オールカテゴリ部門

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