無学の教育者 八重子おばさんの想い出 #5
母の部屋に入って、大きなベッドと窓の隙間に盗んだお金を投げ入れた。そこからは人生で初とも言える大芝居だった。
僕は離れた部屋にいる八重子おばさんに叫んだ。
「あったよおっ。お金があったがよおっ。見っけたあっ」
すると八重子おばさんが走ってきた。「あらあら」と言いながら、さも大変そうに走ってきて
「どこにね」
と聞いた。
僕は八重子おばさんを見ないまま
「ほらっ、ここに」
とベッドの隙間に顔を入れて叫んだ。八重子おばさんは僕の背中越しに覗き込んで
「ああっ、ほんとだ。あったあ」
と感慨深げに言った。僕が退くのを待って手を差し入れてお金を拾った。
しかし僕が本当に後悔したのは、その後の八重子おばさんの行動だった。
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