1/28 合併号【Project KGSDGs Vol.104 】& 【童夢 Arts沼 #29 】 コロナ × 部活動 バンド × 文藝部#12

〈1〉コロナ禍 × 文化部部活動#1〜3
〈2〉日本の強みはやっぱりこれ#1〜9
〈3〉新しい仕事のスタイルと社会構造について
  ①パートナーシップ型・プロジェクト解決型が意味するものは?
  ②ボリュームゾーンの崩壊
  ③未来の学校はたぶんこうなるから今から準備しておかないとたぶん生き残れない要件
〈4〉未来人たちについて(たぶんこんな社会になるのかな)

〈2〉日本の強みはやっぱりこれ#9

 このように、70年代の大量消費の時代も終わり、80年代の拝金主義や物質至上主義も終わり、経済的に貧しくなったこの国は、あらゆるものを「かわいい」と呼んだり、ヲタ芸を舞ったり、コスプレや二次創作のように同化と異化を繰り返したりしながら、あらゆるものを「愛で」ました。それは、決して国威を国内外に示すためにやったわけでもなく、国際競争に負けないための方策でもなく、文化的成熟度や高さを示そうとするものでもありませんでした。
 ところが、これらの一連の若者やヲタクによる営みは、情報産業を除いたさまざまな分野のこの国の産業が次々に縮小衰退している中で、唯一と言ってもいいぐらいに、安定的に海外人気の高い輸出コンテンツであり、インバウンドの実質的な原動力になっています。アニメ漫画の聖地だけで国内にざっと5000箇所を数えます。コロナで沈みかかっている旅行会社もコスプレツアー、聖地巡礼ツアーに力を入れれば復活するのではないか、何のリソースもない地方もうまくコスプレロケ地としてアピールし、アニメ聖地化すれば地方創生につながるのではないかと思えるほどに、アニメ漫画は不況知らずです。それは特定のアニメや漫画が大ブレイクしなかったとしても、ヲタクが自分の好きな作品やキャラに恒常的にお金を落としていて、市場の下支えをしているからです。今やヲタクは21世紀の酔狂な風流人と言えるのかもしれません。
 かつて村上龍が著した『半島を出よ』という小説は、北朝鮮軍が日本領土を占拠したのに政府や自衛隊、警察といった組織が法律や慣例、組織同士の思惑などで全く動けず絶体絶命になったとき、日本を救うのが数人のヲタクだという設定でした。予見とまではいかないまでも、国や企業のような、組織では対応しきれないことを、目的達成のために一回性のものとして集まった個人の集合体がなし得るという素描は、SNSをツールとして離合集散する現代の若者の在りようと重なります。そして、まさに「目的達成のために一回性のものとして集まった、自律した個人の集合体」こそが、チームの本質、定義です。
 仲良しでつながったり、志を同じくする者で形成したり、集団に馴染めない子をうまく取り入れたりするのがチームではありません。それは学生サークルか、ムラです。1つのミッションを達成するために必要なスキルを持ったメンバーで結成されるのがチームです。
 企業や政府、正規軍のような恒常的持続的な集合体では通用しないことが起き始めていて、一方で、どこにも属さない個人のつながりで編成された本物の「チーム」が活躍し始めている時代だということです。
 そして、内側を向いて行っているはずのことが、外側どころか世界に発信され、多大な文化的・経済的インパクトを与えている時代だということです。
 SNSは、アメリカンドリームをグローバルドリームにしてしまったのかもしれません。

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