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卒業

 この文章は、生徒たち(高校)に向けて、昨日3/4に配信したものを加筆訂正したものです。本日3/5、3年生は卒業です。

(以下引用)

2022/03/04 06:14・編集済み
3/4【 Early Bird's Nest 】&【 Project KGSDGs Vol.335 】2065文字

 Goooood morning !
 今日は卒業式予行、明日は卒業式なので自習室は開きませんが、うっかり来てしまった人は申し出てください。来週はもちろん開きます。来週待っています!
 期末テストが終わってもルーティンを実行しましょう。

 ここいらで、長いトンネルの真ん中で迷子になってあえいでいる3年生のみなさんにぜひ、空気がなま暖かくなる頃、ですから卒業した後にでも、感染予防に万全を期した上で行ってほしい所があります。
 誤解しないでください。別にロ〜マンチックなことやメルルルルァンコリックなことやポエジイなことなんかを言いたいわけではありません。

 みなさん、「凪(なぎ)」って知っていますか? 知っていますよね?
 天候が安定している日に海に行くと、昼間は海から陸へと風が吹いています。そして夜になると陸から海へと風が吹きます。
 で、昼から夜に変わる夕方、海から吹いていた風が止みます。無風状態、つまり凪を経て今度は陸から海へと吹き始めます。これを「夕凪」と言います。
 逆に夜から朝になる時、陸から海へと吹いていた風が止んで無風状態になり、今度は海から陸へと風が吹き始めます。これを「朝凪」と言います。

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 私的経験によれば、凪(無風状態)は10分程度の時もあれば、1時間ぐらいの時もあります。天候や季節、場所によって凪の長さはさまざまです。でも、何せそれまで吹いていた風が止むので凪になった時ははっきりそれとわかります。地球も生き物のように呼吸をしていて、息を吐くから吸う、吸うから吐く、のあわいが凪なんです。まるでその刹那だけ地球が息をひそめたみたいに辺りが静かになって、時間が止まったみたいな気分になります。
 海辺にいて凪を経験すると、ああ、地球も呼吸しているんだなあ、とか、この数ヶ月、この数年の間に何度も自分が喜んだり、悲しんだり、あくせくしたり、嘘をついたり、裏切られたり、出し抜かれたり、愛したり恋したり、憎んだりムカついたり慈しんだりしていた間も、あいかわらずこの浜辺の波は何の関係もなくこんな感じで寄せては返していたんだなあ、とか、人間とは違う時間軸の存在とか、自分が生きてこなかった人生のもう半分の存在とか、思い至ります。
 すると大体、自分にまとわりついているいろんなことが薄っぺらなどうでもいいことに思えて、多分そういうのを「人生の垢」とか、「しがらみ」とか、「病み」とか、「闇」などと比喩的に呼ぶのだと思いますけど、そんなものが剥がれていくのを感じます。そんな時に、人生の愛おしさと馬鹿馬鹿しさに笑ってしまうのですが、大体の場合、そういう時には涙がこぼれているものです。

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 つまり泣き笑いの状態になるんですけど、その状態は自己陶酔ではなく精神分析学的で言うところのカタルシスであり、マインドリセットです。
 圧倒的なカタルシスです。神を感じるわけでもなく、神秘を体感するわけでもなく、インスピレーションを得るわけでもないんですけど、とても黙示録的です。
 私は凪が大好きなんですけど、それはたぶん私のごく個人的な好みや雑感なんかではなく、むしろみなさんの方がもっと豊かに感受できると思います。ちなみに湘南あたりよりも神奈川近代美術館からの一色海岸がおすすめです。もちろんひとりでね。
 そこのきみやきみやきみ、大丈夫。応援してるぜ。

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(引用ここまで)

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