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第14話 常識的な内容なのに今も忘れられない言葉

高校を卒業した直後は当時の友人と頻繁に連絡を取っていましたが、色々な大学に散らばってそれぞれの生活を送る中で、だんだんと連絡も途絶えがちになります。

もちろん、仲が良かった数名の親友とは、ずっと連絡を取り続けていました。
大学での友人と同様に、自分のことを心配したり励ましたりしてくれました。

地方の医学部に進んだ友人がいました。彼が住むところに遊びにいき、城址やサルが集まる公園などを案内してもらったことがありました。
彼は、私が外に出ることを嫌がって自宅にこもりがちになっているのを見て、もっと強く生きなければいけないと熱く助言してくれました。
今だけ引きこもっているつもりかもしれないけど、これから一生同じ状態かもしれないんだぞ。だから、外見のことなど気にせずに、ちゃんと外へ出て活動しよう。
そういう風に語ってくれました。さすが医者のタマゴだなあと他人事のように感心しながら、自分自身は彼の言葉を受け入れられませんでした。
そんなの分かっちゃいる。でも、できないんだ。
自分の頭の中でも説明がつかないことを、彼に論理立てて説明することは不可能であり、その時の議論は平行線で終わりました。

でも、彼の言葉は、数十年間自分の中でこだまし続けました。
一生引きこもってなんていられない。外へ出よう、外へ出よう。
私がこの後、自分自身を取り戻す過程の中で、1つの原動力となった言葉です。
言葉自体は、常識的で、あまりにも当たり前のこと。
でも、普段は馬鹿話ばかりしていた友達が、ちゃんと真顔で私の目を直視して、そういうことを伝えてくれた。そのシーンとともに脳裏に刻まれたからこそ、言葉が力を持ったのだと思います。

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