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第23話 状況は変わらないが、ゆっくりと歩きだす

脱毛が始まってから、1年くらいが経ちました。
脱毛の症状はひどいままですが、それ以上に悪化することもなく、ある意味安定したような状態でした。前頭部、側頭部、後頭部には円形脱毛の大きな穴がところどころにあり、眉毛も片方が完全に抜けたままの状態です。
髪が一度抜けたところは、ずっと抜けたままでした。抜けたところで再度髪が生えることがあれば回復への期待も持てますが、全く生える様子がないので完治することはあきらめました。

その後も、サークルでの活動を楽しみながら、いろいろな活動を元に戻していきます。

大学の授業も、4月になり全く新しいラインナップになりました。相変わらず不真面目な学生ではありましたが、いくつかの面白い授業にはちゃんと参加するようにして、取りこぼしていた単位を取り直しました。

運転免許を取り、車を運転できるようになりました。
貧乏学生なので自分の車を持つことは夢のまた夢でしたが、ときどき実家の車を借りて友人とドライブに行くこともありました。
電車で2時間くらい遠出して、海沿いのきれいな砂浜にも行きました。
そういう普通の大学生らしい生活を、味わえるようになったのです。

半年間の閉じこもり生活を経て、やっと外を歩きだし、普通の大学生のような生活を取り戻しました。

両親や友人から見ると、一安心してもらえたのかなと思います。
最初の半年間は家に閉じこもっていましたし、ほとんど笑うこともありませんでした。仲の良い友人と馬鹿話をしている時は別ですが。基本的に、楽しいことなど何もなかったからです。
そういう自分に対して、陰では相当な心配をかけていただろうと思います。

でも、サークルという新しい場所を見つけ、逆説的自信という考え方で自分自身を「武装」し、私は表面的には悩みから立ち直ったように見えたはずです。多分。

とはいえ、実際はオモテから見えるほど順風満帆な生活ではありませんでした。
昼は楽しく過ごせていても、夜は暗く落ち込むのが日常でした。

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