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第27話 面接での不思議な経験

脱毛症を患った大学1年生の時から年月が過ぎ、大学生活も最後の年になりました。
片方だけ残っていた眉毛もだんだん抜けてきて、両方の眉毛がほとんどなくなりました。
でも、そのほうがまだバランスが良いのかもしれません。
頭髪も、虫食い状の脱毛が散在したままです。前髪がほとんどなくなり、とても広いおでこになりました。脱毛してしまったたところは回復しないけれども、それ以上にひどくなることもないという状況でした。

就職活動にも、ちょっと苦労しました。
自分自身の見た目に自信がないので、面接を突破できる気がしなかったのです。
自分が第一志望だった会社は、最初にかなり短い時間の面接を受けただけで、すぐに門前払いになってしまいました。まだほとんど何も話していないのに、もう打ち切られてしまったのかと愕然としました。
背伸びをして外資系企業へも応募してみましたが、やはり最初の面接で門前払い。
まあ、これは自分の外見のせいではなく、面接での受け答えの内容が幼稚な水準に留まってしまったので、すっぱりとあきらめがついたのですが。

そんな中で、最初の面接官がとても話しやすい人だった企業がありました。
私はそれまで、自分の脱毛症のことを他人に説明するということをほとんどやってきませんでした。どちらかというと、私は何も悩んでいないんだ、外見を気にしてなどいないんだというスタンスで、普通の人と同じように過ごすように虚勢を張っていたのです。
ただ、その面接官の人が、自分の学生時代の過ごし方を興味深く聞いてくれるので、自分の中でも期せずして、自分が考えてきたことをちゃんと説明したいという思いが高まったのです。そして、自分が脱毛症に悩んでいたこと、そして逆説的自信を持つように努めながら今に至っていることを、かなり本音で話をしました。
企業の面接を受けているというより、先輩に人生相談をしているかのような不思議な光景だったと思います。

不思議なことですが、そういう本音をしゃべれたことでその企業にも良い印象を持ってもらったのかもしれません。それまでの面接では、私は通り一遍のことしか話せず、何の印象も残すことができなかったのでしょう。後から気づいたことではあるのですが、小さなことでもつまらないことでもいいから、自分が感じたことを本音で率直に話すほうが、よっぽど人に良い印象を与えられるのですね。
いくつかの後続面接を経て、その企業から内定をもらうことができました。

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