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創業75年製造業の現役経営者が「業界の常識を変える」スタートアップを支援する理由とは

化学業界向けの受発注・生産管理システム「Sotas(ソータス)」を今年11月にリリースしたSotas株式会社。
製造業界の脱炭素問題解決に向け、製造工程から温室効果ガスの量を見える化することで、中小製造業を含めたサプライチェーン全体の環境負荷低減ができる仕組みづくりを目指しています。12月から九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所と産学連携による共同研究も始まります。
今回は、Sotas株式会社 代表取締役CEO吉元 裕樹氏と、12月1日からアドバイザーに就任した松山工業株式会社 代表取締役 鵜久森 洋生氏による対談をお届けします。

【プロフィール】
Sotas株式会社  代表取締役CEO 吉元 裕樹
DIC株式会社(DIC Corporation)にて事業責任者として年間10億の新規事業を創出、日産自動車ではカーシェアサービスの事業統括や他MaaS関連で多数のプロジェクトリーダー、同社のMaaS戦略策定に従事し、ACALLにて、CMOを経て副社長を務める。2022年にSotasを起業し現職。

松山工業株式会社 代表取締役 鵜久森 洋生 
1972年東京都出身、1990年テキサス州ストラットフォードハイスクール卒、1995年法政大学経済学部卒業後、岡村製作所(現・オカムラ)に入社。2000年松山工業株式会社に入社し、2010年より現職。
松山工業株式会社の3代目経営者として、ご縁を大切にしながら、現在は人的交流や企業間連携のハブ役として活動中。


左)Sotas株式会社  代表取締役CEO 吉元 裕樹氏 右)松山工業株式会社 代表取締役 鵜久森 洋生氏

アドバイザー就任の背景

鵜久森 仕事柄、さまざまなスタートアップの起業家にお会いしますが、吉元さんに初めて会った時は「明快なビジョンを持っている方だな」と感心しましたね。多くのスタートアップは荒削りな方が多い印象ですが、吉元さんは中小製造業におけるビジネスのあらゆる面を考えているので、未来を創っていくのはこういう方なんだろうな、と感じました。

吉元 そんなふうに仰っていただいて、なんだか恥ずかしいですね(笑)ありがとうございます。
今回、アドバイザーとして就任いただいた背景として、双方に「ご縁を大切にする」という考えが共通していた部分も大きかったかなと思います。

鵜久森 高校時代はアメリカで生活していて、文化的にも「利他」の精神が根付いていました。周りの人が笑顔になることが、昔から好きな性分でしたから、ボランティア活動なども盛んに行われていたアメリカでの生活は私にフィットしていました。
ビジネスにおいても、利他の精神で様々な活動を広げています。目の前の利益追求ではなく、「利他」の精神で活動をしていたら、周りにも「利他」の方々が集まってきて、お互いに助け合うという状況が自然と増えているように思いますね。

吉元 アドバイザーをお願いしたいと依頼した時、どんな風に感じられましたか?

鵜久森 一言で言うと、「驚き」ですね。自分が取り組んできた、ご縁を創る、コミュニティを創るという取り組みを評価いただけたということがとても嬉しかった。「Sotasと共にこんなことをしていきたい」という具体的なアイデアが浮かんできておりワクワクしています。

吉元 本業もお忙しい中、とてもありがたいです。Sotasのどんなところに魅力を感じていただいたのでしょうか?

鵜久森 一つは吉元さんの経営者としてのビジョンに共感したということ、もう一つは、業界の常識を変える取り組みをゼロからやろうとしている意気込みを吉元さんから感じ、「自分がお役に立てたら」と思ったのが大きいですね。

吉元 自分自身もそこはぶれずにやっていきたいなと。やり抜くことで、アドバイザーとなっていただいた方、研究協力してくださる方々への一つの恩返しになると思っています。

日本の製造業が国際競争力を高めるために必要なもの


吉元 鵜久森さんが感じている化学製造業界の課題はどのようなものでしょうか。

鵜久森  今の課題感としては、RoHS(ローズ)※1、REACH(リーチ)※2、など業界では環境負荷物質の調査が当たり前になっているものの、調査方法やデータの共有が行われていないことが国際競争力低下の要因になっているのではないかと感じています。

※RoHS(読み方:ローズ)指令とは、電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用を制限するEU(欧州連合)の規制。日本では適用されていないが、欧州に製品を販売しているため必然的に準拠することが求められている。
※2欧州が定めた化学物質規則。こちらも日本では適用されていないが、RoHSと同様輸出事業者は遵守する義務がある。

鵜久森 Sotasのビジネスでデータ抽出や共有が標準化されば、製造業における川上、川下共に業務負荷軽減につながると考えています。
コスト面でも実際大きな負担がかかっていますから、これが改善されれば、業界の常識を変えるのではないかなと思っています。
 
また、昨今SDGsが叫ばれていますが、実際は上辺だけの対応が多い。人権問題や、製造業全般の課題改善につながっていくムーブメントになれば、日本はまだまだ捨てたものじゃない。
簡単なことではないですが、以前から私たちの業界の抱えている課題を解決したいと思っていましたし、成長力のあるスタートアップと取り組むことで、現実的になるのではないかと期待しています。
 
吉元 本当にそうですね。また一方で、中小企業の製造業においては事業継承問題も大きな課題と感じます。鵜久森さんはどのようにとらえていますか?
 
鵜久森 うちもまさに、事業承継の課題は直面しています。
次の世代に引き継いでいくためには、まずはじめに引き継いでもらう側が会社を魅力的にする取り組みをしているか。引き継ぐ人たちが、継いでみたいと思えるかどうか、を俯瞰的に見つめ直すこと、そこがすごく大事じゃないかなと。
 
吉元 中小企業は人が少ないからこそ、ひとりが活躍したときの濃度が高いですよね。自分自身もスタートアップと大手と両方にいた経験がありますからよく分かります。大手だと、どんなに優秀な方がいても1人が会社に与えるインパクトが薄まってしまいがちです。だからこそ採用コストは、むしろ中小企業の方がかけるべきなのではないかと思います。中小企業に優秀な人材が集まる仕組みが必要だなと思いますね。
 
鵜久森 製造業界は、採用にコストをかけないと言う文化が根強いですが、魅力ある人材が社内にいた方がいいのは言わずもがなですから、将来的に、魅力ある人材が可視化できるということになれば、可能性は大きいですね。

短期的ではなく「持続できる業界の標準」を目指したい


吉元 スタートアップというと、良くも悪くも「キラキラしている」と見られがちですが、中小企業製造業の「長期的に堅実に成長していく」というやり方を、見習うべきところが多いと感じています。

鵜久森 残念ながら短期的な視野で事業を作っていくことを目指し、無くなってしまうスタートアップも多く見受けられます。経営者として私が肝に銘じていることは「事業を継続させること」。企業の大小問わず、大事にすべき軸なのではないかと思います。
パナソニック創業者である松下幸之助さんの経営理念のひとつに「共存共栄」という言葉があります。吉元さんからは「業界全体を共存・共栄させていきたい」という思いを感じました。
それと、やはり「ご縁」も同じで、短期的な視野ではうまくいきません。
「ご縁」て、その場でいきなり深くなるものではなくて、じわーっと、広がっていくものですから。起業家には、お互いの人生を豊かにするための関係性を作ることに目を向けて欲しいですね。
 
吉元 ご縁を紡いで、長期的な視点で業界改善の取り組みを共に進めていきたいですね。
 
鵜久森 はい、そのためにまずsotasがやろうとしているビジネスの可能性を追求していきたいですね。
私自身も業界の中にいる人間として、Sotasが考えているビジネスが標準化されたら、利便性が良く、コスト減にもつながると同時に、業界全体の共存共栄につながっていくと考えます。そのためには労を惜しまず、どんどんお手伝いしたいと思っています。
 


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